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「Light and Darkness 03」
「・・・っ、ぁ、はぁっ・・・」
淫らな姿。理性を保てないでいる竜崎に、
月はただ笑う。
軽蔑でも、憐憫でもない、それはただただ純粋な、悦び。
此処にいる限り、何も考える必要はないのだ。
自分が誰で、どういう立場であるかとか、
相手がどういう存在なのかとか、そういったくだらない体裁など。
それは、"竜崎"を愛している彼にとって、
非常に喜ばしいことだった。
少しの我侭くらい、許してやるよ、竜崎。
お前が、ここから逃げ出そうとしない限りはね。
自身を握り込んだまま、鏡に寄り添い泣き崩れる2人に、
月は腰かけていたソファーを立った。
「・・・っ・・・!」
「全然出来てないけど、可愛かったから許してやるよ。・・・力、抜いて」
耳に吹き込まれる声音に、竜崎は瞳を閉じた。
崩れ落ちかけていた身体を抱え、そうして片足を膝裏から持ち上げられる。
月の目の前に晒される、中途半端に高められた熱。
強烈な羞恥が竜崎の全身を襲うが、
だが無論、逃げ出す術は、ない。
竜崎は、羞恥を誘う己自身の身体から目を逸らした。
男の手が、伸びる。長い指先が、ねっとりと絡みつけば、
ぞくりと震える肌。どうしようもなく高鳴る鼓動。
「可愛いだろう?・・・ほら」
「んっ・・・」
耳元で囁かれる声音と共に、ぐい、と顎を掴まれ顔を銃に向けさせられる。
見ろ、という意思表示だ。仕方なく竜崎は瞳を開ける。
淫らな存在が目に入った。泣き腫らした瞳で、それと同じように真っ赤に腫れ上がった己の雄。
残酷な現実に枯れてしまった涙とは裏腹に、
快感を求めて蜜を零す愚かな自身。
羞恥を感じる前に、情けないと思った。これほどまでに、己の身体は自分の意志に従わないものなのか。
だが、それを考えるたびに、竜崎は己を捕らえる男のことを思うのだった。
これが、もし"彼"ではなくて、全く知らない男だったら?
それでも自分は、真実のない虚構の快楽に浸ってしまうのだろうか。
―――きっと答えは、否―――、だ。
「あっ・・・あ、はぁっ・・・」
強く締め付けられるような刺激に、声が漏れた。
痛い―――そのはずなのに、じわりと襲い来る快楽が確かに下肢に存在している。
そうして、それは月の手が動くたびに増幅していくようだった。
過去、何度も味わった感覚。目の奥が熱くなり、思考すら奪われるような強烈な快感。
それは、感じてしまえばしまうほど己を絶望へと突き落とすくせに、
そんな絶望すら幸福だと思わされてしまうのだから手に負えない。
竜崎の心から、抵抗の意志が失われていく。
強請るような瞳の色に、
月は満足げに口の端を持ち上げた。
重ねられた唇は、己を満足させてくれた飼い犬へのささやかなご褒美。
抱きかかえた身体を、そのまま鏡に押し付ける。
既に先ほどの竜崎の行為で曇っていたそれが、更に淫らさを増していった。
挟まれるように押し付けられた自身が、悲鳴をあげる。
汗ばんだ胸元は、無機質な冷たさに肌を粟立たせている。
これに熱い吐息まで加わっているのだ、欲情しないほうがおかしい。
竜崎の不安定な体を己の身体で支えたまま、
月はベルトに手をかけた。
ジッパーの下ろされる音に、竜崎はごくりと喉を鳴らす。
ぬめりを帯びた熱固まりが、拓かされた奥に宛がわれれば、
あとはもう、取り込んだ熱に狂わされるほかないのだ。
竜崎は鏡に爪を立てた。目の前に映る存在と、指を絡ませようとでもするかのように。
「っ・・・あ、・・・」
「・・・自分で、やるんだ」
しかし、一向に動く気配のない男に、竜崎が不安そうに瞳を向ければ、
月は涼しげな顔でそう告げる。
欲しいのなら、自分で動け、と。
―――冗談じゃない。
こうして犯されること自体、強制されたものなのだ。
抵抗しこそすれ、自分から欲するなんて出来るはずがない―――
そう思うのは、しかし竜崎の心の中だけで、
月の傀儡でしかない肉体は、既に彼自身を飲み込もうと収縮を繰り返している。
静止した月の腕に支えられたまま、
自らの―――否、勝手な意思で卑猥に揺れる己のそこに、
竜崎は耐え難い苦痛を覚えた。
どうして、こうなるのか。
腰を突き出すと、ゆっくりと肛内に入り込んでくる灼熱のそれ。
手を使わず、下肢の収縮だけで己を呑み込もうとする竜崎の、その部分を見下ろして、
月は笑った。やりやすいように、腰に手を添えてやる。
すると、力も込めていないのに濡れた音が響き、
それに合わせるようにして彼の中に消えていく己の雄。
それは、月をひどく悦ばせた。
抱えていた膝を、下ろす。そうして、両手で竜崎の双丘をぐっと掴めば、
現れる結合部。未だ中途半端に己を埋め込んだままで、
けれど一番大きく口を開け、必死に男の雄を受け入れようとしている健気な彼の秘孔。
たまらなくなって、月は円を描くように腰を揺らした。
「うあっ・・・ぁ、ああ・・・!」
熱を持った内襞が、外部からの刺激に反応し、ひくついている。
絡みつくような内部に月は満足げに吐息を洩らしたが、
けれど、奥まではまだまだだ。苦しげに眉を寄せる竜崎は、
ラクになりたい一心で、無意識のうちに腰を寄せていく。
今すぐにでも、奥を激しく貪ってやりたい衝動に月は駆られたが、
あえて唇を噛み締めて、じわり、じわりと奥に取り込まれていく感触を追った。
イイ身体だ、と思う。
こんな上物をみすみす殺させるわけがない―――。
初めて抱いた時から、己のモノにすることだけを月は考えていた。
そうして、今。
彼を知る誰もが彼の死を疑わなくなった今こそ、
月の望みが本当に叶ったといえるのではないだろうか。
「っ・・・く、ぁ、はっ・・・」
「よくできた」
仰け反らせた白い喉に、口づける。
鮮やかに色づいた所有印を撫で上げて、月は背後から男の身体を抱き締める。
繋がった箇所がより深みの度合いを増したことに、
竜崎の口元からはか細い、けれどひどく艶やかな声が洩れた。
しばらく触れられることのなかった竜崎の中心部は、
にもかかわらず、奥深く貫かれた刺激に感じ、蜜を零している。
先走りが鏡や床を汚していることに気付き、
竜崎は目を逸らした。
もう、何も考えたくない。
つまらないプライドにしがみついていたって、何の役にも立たないのだ。
男の望む通り、快楽に流されてさえいれば、何不自由ない生活が送れるというのに、
どうしてそれを否定する理由があるだろう?
「あ・・・、はっ・・・い、・・・!」
深く呑み込んだ男の楔が、えぐるように内部を犯していることに、
竜崎は悦びの声を上げた。鏡に頬を寄せ、切なそうに眉を寄せる。理性などとうに失った存在。
今にも崩れ落ちそうな竜崎の身体を支え、
月は思うが侭に彼の存在を貪った。
自分だけのモノ―――それを己の手で壊すのは、
下肢を襲う直接的な刺激以上に、強烈な精神的快楽を伴う。
気高く、誰にも染まらない魅力を放っていたはずの竜埼。
世界の頂点に立っていたと言っても過言ではない彼が、一瞬にして堕ちてしまったその先は、
人間としての生すら許されない狭い檻の中。
無理矢理押し込んだ手負いの獣は、
けれど今では男に向ける牙さえ失い、単調な色の瞳を、己を支配する男に向けるのみ。
それは、さながら精巧に作られた人形だ。
だが、月はそれで十分だった。
彼の地位が妬ましかったわけでもなければ、
世界の頂点に立つ彼が欲しかったわけでもない。
欲しかったのは、この男の存在、それだけだ。たとえ心を閉ざしてしまおうと、
かつての竜崎の面影を失うほどに壊れてしまおうと、
構わなかった。
「・・・ね、竜崎」
「・・・っあ、・・・く、っう―――・・・」
「もっと・・・、壊れてみせてよ。僕の腕の中で―――」
「・・・あ、ああっ・・・、やめっ・・・!」
耳殻を歯を立てて甘噛みされれば、さらなる快楽が竜崎の全身に襲いかかる。
その上、同時に手のひらで雄を弄ばれるものだから耐え切れない。
竜崎の膝ががくがくと揺れた。
もうほとんど自力では立っていられない男の胸を押し付け、
下から突き上げるように激しく貫いてやれば、
もはや力を失った竜崎の身体は揺らされるままに淫らな様相を晒す。
頬を染め、淫蕩な表情を向ける男に、
月は唇を落としてやった。
ますます締まりをきつくする内部に、眉を寄せる。さすがにそろそろ、彼自身も限界を訴えていた。
息も絶え絶えの様子の竜崎を、更に追い詰めるように下肢を抉ってやれば、
脳天まで貫かれるような衝撃と、そうして次の瞬間真っ白な世界が意識を染める。
現実と解離したような空気の中で、
けれど竜崎は己に注がれる確かな熱を感じていた。
「っあ、はっ・・・ぁ・・・」
身体が、重い。
ずるりと音を立てて、己の内部から楔を抜かれ、
支えを失った竜崎の身体は今度こそ床に崩れ落ちる。
腕1本、指1本動かすことが出来なかった。
唇が震え、言葉を紡ぐことすらままならなかった。全身が雷に打たれたように痺れている。
辛うじて動く瞼を薄っすらと持ち上げると、
見下ろしていた男の顔が、近づく。
慈しむような優しい手がすっと頬に触れてきて、
竜崎は目を閉じた。
優しさ?―――否、だ。
これは、玩具としての役割を果たした自分に対する、ただの気紛れだ。
こんなものに惑わされたくなかった。けれど、今更抵抗する力も、気力もない。
ただ、この行為が終わったのだと、それだけを考えた。
これで、やっと解放される。快楽と絶望を共に与えられるこの情交は、
自分にとっては苦痛以外の何ものでもないはずだ。
けれど―――
「―――今夜は泊まっていってやるよ。明日は久しふりに休日だからね」
「・・・―――」
暗澹たる気持ちになる。
恋人にかけるような甘い言葉。
傍から見れば少々度の過きた恋人同士に見えるかもしれないが、
実際は全く違う。
どんな1日がこの先やってくるのか―――竜崎は脅えるように瞳を揺らした。
だが、残酷なことに、それを悦ぶ自分が、
確かに己の中に存在しているのだ。
相反する心。裏腹な肉体。果たして、自分の真の望みは何なのだろう?
わからなかった。
今だ自由にならない身体を、竜崎は抱き締めた。
鏡に映った自分は、
どこまでもちっぽけで、哀れだった。
end.
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