女性向二次創作サイト
星蒼圏 - 保管庫モバイル


「First、Birthday。」


「・・・君の誕生日は、いつ頃だろうね?」
「は?」

考えたこともなかった言葉を唐突に振られ、
竜崎は驚いたように顔を上げた。
柔らかな日差しの射す午後。
犯罪者を裁き続けるキラも、最近は大人しい。
そうなると、本来なら捜査の手が緩むことはあってはならないのだが、
一番捜査の中心にいなければならないはずの竜崎にやる気が見られないこともあり、
どうしても捜査が手薄になってしまう。
キラ事件捜査本部とは思えない程のゆったりとした空気に、
けれど今では誰もが受け入れていた。

「誕生日・・・ですか。・・・どうでしょうね。考えたこともありません」
「ワタリさんも、知らないのか?」

一番近い者として彼を挙げたのだろうが、
自分すらわからないのだ。孤児だった自分を拾ってくれたのがワタリだとて、
そんなことまでは知るはずもない。
それ以前に、必要性を覚えることもなかった。
誕生日だけではない。名前、居場所、年齢。"己"を特定するすべての要素について、
竜崎は興味がなかった。

「・・・私について詮索すると、よりキラへの疑いが深まりますが」
「詮索じゃないよ。ただの興味さ」

胡散臭げに男を見上げる。竜崎の視線を笑ってかわし、
月は手にしていた雑誌をぺらりと捲る。
今の若者が好んで読むような雑誌だ。その光景に何ら問題はないのだが、

「・・・1月・・・は、違うな・・・2・・・3月・・・も、違う・・・」
「何を見ているんですか・・・」

独り言を呟く月を不審げに思い、彼の手元を覗き込むと、
およそ月のような生真面目な学生が熱心に見るとは到底思えない、
可愛いどころか全くセンスのないイラストがごちゃごちゃと描かれているページ。
ましてや男のくせに、こんなものを見ているとは―――と、
夜神月の品性を疑うように彼を見やれば、

「性格診断だよ。」
「・・・・・・性格診断?」

竜崎は呆れたような声を上げた。
世間に出回っているそういう類のものは、例外なくお遊び程度のもので、
心理学的観点から見れば全く根拠のないものばかりだ。
そんなものに興味を持ち、結果に一喜一憂する人間など、若い女性くらいだと思っていた。

「まぁ、僕もあまり見ないんだけどね。今回は面白かったから」

ほら、と指を差され、仕方なくそれを見てみると、
なにやら、誕生月、誕生日から性格のタイプ分けをしているようだ。
AからLまで、12のタイプがそこには書かれていたが、
竜崎は又も呆れてしまう。
そもそも、世界には65億人もいる人間をたった12のタイプに分けてどうなるというのか。
そんなもので、性格が計れるほど人間は単純ではないというのに。

「・・・これのどこが面白いんですか」
「面白いよ、なかなか。・・・竜崎だったら・・・、Gタイプかな」
「はぁ・・・」

誕生日もわからないというのに、どういう根拠でGタイプと言い切れるのかわからない。
何を考えているのか、と男を見やると、
月は少し唸った後、ページの上の表を指で叩いて、言った。

「―――わかった。竜崎は、10月31日生まれだな。」
「・・・はあっ?!」

どこがどうしてそうなったのか、全くわからないでいる竜崎に、
月は再び彼に本を示した。

「Gタイプ。―――頭脳明晰、常に新しい発想を提供するニューリーダー。野生的な勘の持ち主で、的確に人を導くが、その反面、考え方があまりに奇抜なため、しばしばついて来れないものも多数。そのため、気の合う友人はあまり現れず、いつの間にかそれに慣れてしまいがち。コミュニケーション能力の低下に注意。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ぴったりじゃないか」
「・・・何か、月くんに言われるのは、ムカつきます」

予想外に当たっていることを認めたくなくて、再度示された部分を覗き込むが、
結果は同じ。まるで自分の事を言っているかのような的確な内容が、
そこにはぴっちりと書かれている。
・・・ショックだ。

「・・・で、ここ。―――10月生まれの特徴は、『奇人、変人が生まれやすい月。突拍子もない事を言っては周りの者を引かせたりする一方、その魅力に惹かれる者もあり。発想力の問われる職に就くと吉。』だってさ」
「・・・・・・奇人・・・変人・・・・・・」

・・・認めたくない。

「完璧だな。10月生まれ、Gタイプ。・・・となれば、竜崎は10月31日生まれ、ってことになる。」
「・・・・・・Gタイプなら、7日だって19日だってGでしょう」

月の言葉を認めたくなくて、
竜崎は反論する。
だがその時、ふわりと身体が浮く感覚を覚え、息を詰めた。

「っちょ・・・!」

そうして、すぐに感じる、背を包み込むような熱。
背後から抱き締められ、男の腕の中に収まってしまった竜崎は、
逃れようとしてじたばたと暴れだすが、
もう、今更。
どれほど意地を張ってみても、彼の腕が心地いいと思う自分が、確かに存在している。

「いいんだよ。今日が31日なんだから」
「なんですか、それは・・・」

うんざりと額に手を当てる竜崎は、
けれど、耳元で囁かれる甘い声音に、不覚にも胸を高鳴らせてしまう。
それを月に知られたくなくて、必死に平常を装うが、
ますます強められる腕の力から逃れられそうになかった。

「誕生日おめでとう、竜崎。」
「・・・っ」

どくり。と心臓の音。
月の息が耳にかかり、そうして濡れた感触が耳殻を襲った。
ぞくり、と背筋を這う感覚。
―――引き込まれる。

「っわ、私は、誕生日など・・・」
「興味が無い、なんて言わせないよ。誰だって、誕生日は祝うのは普通なんだから。・・・ね、竜崎。何が欲しい?」
「・・・欲しい、もの・・・?」

気づけば、室内は、甘い空気に包まれていた。
背後から竜崎の身体を抱き締めている月の腕が、淫らな動きを見せ始める。
Tシャツの裾から入り込み、素肌に触れ始める手のひらに、
竜崎は息を呑んだ。

「そう。誕生日には、1つだけ欲しいものが手に入るんだ。何がいい?」
「・・・っあ、・・・」

耳元に口付けて、そうして首筋を伝う唇。
不意に膝が震えて、慌てて竜崎は月の腕にしがみ付いた。
―――まずい。このままでは、溺れてしまう。

「・・・・・・では・・・、この間話していた、ディア・フランの新作を・・・」
「また菓子なのか?まったく、つまらない人生だな」
「余計なお世話です。そもそも、勝手に誕生日を決めて、祝い始めたのは貴方じゃないですか」

まったく、と責めるように見上げて。
牽制するように身を離そうとすると、再び強く抱き締められ、戸惑う。
まさか、本気だとでも言うのか。
こんな、太陽も昇った、明るい日差しの差す午後。
それでなくとも、他の皆は捜査を続けているというのに。

「・・・じゃあ、勝手に僕のあげたいものをあげていいかい?」
「・・・・・・要りません」
「素直になれって。」

熱を煽るような動きを見せる手のひら。
今度こそ、手放す気はないのだと訴えてくる指先は、
片手で胸元の飾りを嬲り、
そうしてもう片方は下肢の周囲を纏わり始めている。
漏れる吐息が、抑えられなかった。
どうして、これほどまでに感じてしまうのか。

「おめでとう、竜崎。お前が生まれてきてくれて、本当に嬉しいよ」

お前を産んでくれたご両親にも感謝しないとな、と囁かれ、
竜崎はふと考える。
そう、あれは酷く昔すぎて、もう、よく覚えていないけれど、
孤児だった自分にも、両親と呼べる者がいた頃。
2人は、奇しくも同じ日、同じ時間に息絶えてしまったが、
それでも、断片的にだが記憶はある。

あれは、何かの祝いだった。

よくわからないまま、テーブルに座らされ、そうして目の前には一杯の豪華な食事と、
そうして、大きくて丸いケーキ。
カラフルなろうそくが何本か立っていて、わからぬまま、吹き消させていた。
父や、母の顔すらほとんど思い出せないくせに、
それだけは、覚えている。
なんだったのだろう、あれは。
空気が、寒い時期だった。
まさか、10月?
―――馬鹿なことだ。あんなちゃちな性格診断、当たるものか。

「後で、ケーキを食べよう。ろうそくは、きちんと年齢に合わせて立ててね。」
「・・・・・・穴だらけになるじゃないですか・・・」
「いいんだよ。誕生日ケーキなんだから。」

年齢も正確にわかってないくせに、誕生日を祝う?
なんだか、馬鹿げている。
それでも、何故か高鳴る胸の内。
月が、祝ってくれるから?
自分の誕生日を祝いたいと、わざわざ考えてくれたから?

「・・・欲しいもの、もう、いいです・・・」
「どうして?後でちゃんと買って来てあげるよ?」

ディア・フランの新作スイーツ。
さすがに今日はきっと売り切れているだろうが、
明日にでも朝早く並べば、きっと手に入るはずなのに。
けれど、竜崎は首を振る。
月は腕の中の存在を、覗き込んだ。

「竜崎?」
「・・・・・・もう、たくさん、もらってますから・・・」

ぼそぼそとそう口にする竜崎に、
月は驚き、そうして笑みを深めて抱き締めた。





end.





















番外。

2月28日生まれさんの性格。

「2月28日生まれさんは、努力家です。
 何事も全力で取り組み、常に1番でないと気が済まない負けず嫌いの典型です。
 野心家でもあり、自分の理想、求めるもののためには何を失っても構いません。
 そんな真っ直ぐな貴方に惹かれ、集まる人も多いでしょう。
 ただし、自分の意見に合わない者には容赦ないので、
 いざこざには注意。敵も多くなります。」

「・・・・・・月君こそ、ぴったりじゃないですか・・・」
「そう?(・・・やばい、むしろキラじゃん)」
「そうですよ。というか、むしろキラそのままですね」
「・・・・・・・・・」
「というわけで、夜神月くん。貴方をキラ容疑で逮捕します」
「っなんでそうなるんだよっ!!!」





end.

・・・・・・10月31日生まれさん、2月28日生まれさん、ごめんなさい・・・
物凄く捏造ですからね、この診断内容。信用しないように!!!


[BACK]