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「Light and Darkness 05」


「・・・ちっ」

ほとんど、死に掛けといってもいい状態。
けれど、そんな様子の竜崎を気にかけるどころか、
足下に崩れ落ちたモノにひどく愉しげな表情を浮かべると、
そのまま月はソファを立った。
竜崎はぴくりとも動かなかった。月の視線があってもなくても、
全てを支配されているのと同じこと。大人しく、男が戻ってくるのを待ち続けるだけ。
しばらくして、月は手に皿を持ってやってきた。
乗せられているのは、竜崎が欲するもの。
自然と、涎が溢れてきた。散々痛めつけられた肉体は、自身の欲望に忠実だ。

「ご飯の時間だよ、竜崎」
「・・・っ、あ・・・」

砂糖菓子やフルーツ、チョコレートや焼き菓子。
そういえば、朝に食べさせてもらって以降、今の今まで何も口にしていなかったことを思い出す。
意識してしまえば、もう竜崎の身体は空腹に耐え切れなかった。
ただでさえ最近は月が居座っていて、
彼の許可なしには何も口に出来ないでいたのだ。
竜崎は男を見上げた。
拒否することなんて、出来ない。
飢餓の苦しみに比べれば、プライドを手放すなどいとも容易いことなのだと、
つい最近知った。

「・・・キ、ラ、様・・・」

だが、竜崎自ら望んで口にした懇願に、
月は唇を歪めただけだった。
手にしていた皿を竜崎の目の前の床に置きながら、
食べることを許さない。
竜崎は真っ赤に腫らした瞳で男を見上げた。
月は、口角をただ持ち上げるばかり。

「じゃあさ、竜崎」
「・・・?」

腕が伸ばされ、月はテーブルの上のものを手に取った。
反射的に、竜崎は首を向ける。そうして、一瞬にして強張る表情。
月はますます愉しげに肩を震わせた。
手に取ったそれを、竜崎の鼻先に突きつける。
それは、デスノート。
殺人鬼キラの、最悪の凶器。

「僕への忠誠の証に、お前が名前を書いてみてよ」
「・・・っな・・・!?」

―――まさか。
まさか、そんなこと、できるわけがない。
竜崎の瞳が、恐怖に揺れた。
傍で行われている殺人すら止められず、殺人幇助とも取れる行いをしている自分に
嫌悪すら抱いているというのに、
今度はさらに、自らの手で罪を犯させようというのか、この男は。
無理矢理ペンを握らされる右手が震えて仕方なかった。
書ける、わけがない。
自ら、殺人を犯すなど。

「・・・・・・っ、く・・・」
「お前の手で、犯罪者に裁きを下してみろ。お前だって、殺したい犯罪者の1人や2人、いるだろ」
「・・・っい、嫌、です・・・・・・っ」

抵抗が無駄なことくらい、解っているのに。
それでも、竜崎は首を振った。それくらい、耐えられなかった。
罪を犯すことが、ではない。キラと同じ方法で、キラに命じられて、キラとして裁きを下す。
己が、一番憎い存在と同じ行為を犯してしまうことが、
苦痛でならなかった。
だが当然、それを月が許すはずもないことぐらい、わかっている。

「ふーん。そういう態度取るんだ?」
「・・・っかはっ・・・!!」

肩を強く蹴り飛ばされ、力の入らない身体は固い床の上を転がされる。
更に鳩尾の辺りに衝撃を受け、竜崎は咳き込んだ。
溢れ出る、赤い色。
口の端から止め処なく流れ出すそれが、床すら汚していく。

「じゃ、これもいらない、ってことかな」
「・・・・・・っ、あ・・・」

皿の上に乗せていた、ひどく甘い香りのする生菓子を、
誘惑するように竜崎に見せ付ける。
欲求と嫌悪の板ばさみに揺れる竜崎をそのままに、
月はそれを己の口に放り込んだ。

「美味しい。」
「っ・・・・・・」

床に置いていた皿を、再び手に取って。
竜崎の目の前で、月は愉しげにそれを食べ続ける。
朝からの絶食で耐え難い程の空腹に襲われていた竜崎にとって、
それはひどく酷なもの。
苦しかった。
思考力の落ちた頭では、デスノートに名前を書くこと以上に苦しいことのように思えた。

「・・・ライ、・・・!」
「キラ様、だよ。まったく・・・。そんなんじゃ、今夜の餌はオアズケ、かな」
「・・・・・・っや・・・!」

震える手を必死に伸ばし、月の足首に縋ろうとするものの、
月の脚は容赦なくその手を踏みつける。
苦痛の声も、上げられなかった。

「・・・エサが欲しかったら、名前を書くことだな。そうだ、さっき報道してた強姦強盗殺人犯―――アイツがいい」
「っ・・・く・・・」

ビリ、と紙が破かれる音。
目の前にデスノートの1ページとペンを転がされ、
竜崎は息を呑んだ。
再びそれを握らされれば、竜崎は脅えるしかない。

「書いたら、許してやるよ。それまで、コッチからは、オアズケ。」
「・・・っう・・・」

月の指先が、うっとりと竜崎の唇を撫でた。
そうして、背後へと回る。
ぐったりとうつ伏せに倒れ込んだ男の腰を高く上げさせられれば、
何をされるのかは歴然だった。
だが、

「・・・あああ―――っ!」

感じたことのない質量のモノが体内に押し込まれ、
竜崎は絶叫した。
それは、快楽などではない、純粋な苦痛。
息もまともに出来ない程の苦しさに、それでも無理矢理首を背後に向けてみれば、
己の後孔から見えるだけで20cmもありそうな程の物体。
生身ではない、苦痛を伴う硬質さと異常な太さは、
竜崎を恐怖のどん底へと突き落とした。
これ以上、奥へと押し込まれたら―――。
己の内臓はおそらく、裂けてしまうだろう。

「っ痛・・・!」
「面白いだろ。これ、一応飴だよ。全長30cm以上もあるけど―――」
「や・・・やめっ・・・ライ・・・っ!」
「美味しい?」
「・・・!!!」

これほど辛いと、痛いと訴えているにも関わらず、
月は耳に入らないとばかりにその凶器じみたモノの抽挿を繰り返す。
内部に押し込まれるたびに深く、深くを抉るように刺激され、
竜崎は内部から襲う激痛に耐え切れず腹を押さえた。
だが無論、
竜崎がどれほど苦痛を訴えようと、
男は許してなどくれないのだ。
この、目の前に在るデスノートに己の手で犯罪者の名前を書く、それ以外には。

「・・・っ、く・・・」
「さぁ、竜崎。お前の手で、犯罪者を裁くんだ」
「・・・・・・」

朦朧とした意識の中、竜崎はデスノートを睨み付けた。
数々の人間を裁いてきただろうそれは、
竜崎にとって憎むべきもの。
しかも今、キラによって、それを使わせられようとしている。
激痛と飢餓はもう限界。男に与えられる屈辱も、また。
―――耐えられない。
ほとんど理性の残っていない竜崎の頭は、
無意識に手を伸ばしていた。
力の入らない指で、ペンを握って。
そうして、一文字一文字、名前を書いていく。
だが、それは先ほど報道された殺人犯の名前などではなかった。

「っ・・・、は、はは・・・っ」

掠れた声音が、壊れた笑い声をあげた。
竜崎がデスノートに書いたのは、他でもない、己の名前。
ノートに書かれたことは、取り消すことなどできない。
後は、訪れる死を待つのみ。
あと、40秒。
下肢を襲う苦痛は増すばかり。
けれど、それももう、あと少しで終わる。

「竜崎・・・」
「・・・・・・キ、ラ・・・」

言葉は、紡げなかった。
その代わりに、竜崎は再び崩れ落ち、床に頬を押し付けたままで、
口の端を歪めた。お前の支配など受けてたまるか、と。
今まで、何度も死を意識し、自らも何度も死のうとして、実際舌を噛んだこともある。
だが、今度こそ最後。
もう、キラに苦汁を舐めさせられる日々も、終わる。

「―――っぐ、・・・」
「ふっ・・・竜崎、お前は本当に、馬鹿だ」

下肢に深々と押し込んだまま、月は竜崎を抱き締めた。
そうして、唇を重ねる。
気まぐれな優しさも、絶望に身を浸した竜崎には、ひどく心地のよいもの。
あと、15秒。
苦痛も、快楽も、すべてがあと数秒で、終わる。
漸く安らぎが訪れた、とでも言うように、
竜崎は瞳を閉じた。
ふっと、意識が遠のいた。





ぐったりとした竜崎の身体を、夜神月は抱え上げた。
部屋の隅の、ベッドに連れて行く。静かに息をする彼をひとしきり見つめて、
そうして、再び竜崎の倒れていた場所へ。
床には、震える文字で書かれた、竜崎の本当の名前。
月は唇を歪めた。
それは、竜崎という男に出会ってからというもの、
一番欲していた真実。

「本名を有難う。」

ベッドサイドに腰を掛け、口付ける。
お前の"本当"に免じて、許してやるよ、と囁く月に、
けれど竜崎は、
こんこんと眠り続けていた。



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