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「優しさの熱。」


ウンデルバルトで、覇王の真実を知ったあの日。
最後通牒を突き付けられた気分だった。自分が何者かわからぬ不安。
直視できぬ真実を目の前に晒されたような。
それはひどく絶望的で、そして残酷だった。
人間ではなくーーーいやおそらく、生き物ですらないのだから。

(・・・痛い)

それは、幾度となく覇王によってえぐられてきた心の傷。
掻き乱され、何度心許ない悪夢に惑わされたことか。だが、もうそれも終わり。
一種の諦めと共に、受け入れた真実は、
誰にも告げられずラッシュの心の底に沈んでいた。

「・・・ようやく、思い出したようだな。」

気配を感じて振り返ると、そこ立っていたのはあの赤衣の男ーーー覇王。
何故ここにいるのか、という問いなど意味がない。
元々、自分達は管理者として対の存在。
本当は、離れたところですら通じ合うことができる間柄なのだ。
だがラッシュは、それには応えず俯いた。
沈黙。
勝ち誇った気配の男にたいし、自分の情けなさといったらない。

「・・・別に、思い出したわけじゃない」
「自らのあるべき姿を認識したのなら、わかるはずだ。さっさと茶番はやめて、成すべきことを成せ。」

覇王の言葉は、嫌が応にも耳に響く。
1000年前のことなど忘れた。今だって、信じたくもない。
ただ、魂に刻み込まれた使命を無視しつづけるのは難しい。

「・・・俺は・・・なんでこんな所にいるんだ・・・」
「レムナントを、人間たちの手から解放するためだ」
「ものごころついたときから、俺は母さんと過ごしてきた。かけがえのない、幸せな時間だった」
「まやかしだ。お前の力を根こそぎ奪い、記憶を奪ったあの女は、敵だ。」
「違う!」

覇王の言葉に、悲鳴すらあげて反論する。
家族と共に過ごした時間がすべてまやかし、など。
馬鹿げている。
今の自分の存在が間違っているというのなら、
この、ダヴィッド達と紡いできた時間は?
彼を愛して、愛されてきた時間も、すべてが意味のないものだったというのか。

「そんなにあの小僧ごときが大事か?・・・いい加減目を覚ませ。人間でもないお前が、いつまでも同じように振舞っていられるのか?」

覇王は酷薄そうに目を細めて、
ラッシュに背を向けた。

「猶予は夜明けまでだ。それまでに、別れを告げてくることだな」

そう言い残して消えた男に、
ラッシュは唇を噛んだ。
別れなど、告げられるわけがない。今まで、何年皆と過ごしてきたというのか。
過去の記憶など皆無に等しい自分にとって、
母と父、そしてイリーナと過ごしてきた18年間がすべてなのだ。
ごく普通の人間として、家族に愛され、成長し、そして親友と呼べる者も愛すべき相手も出来た今、
どうして今更、彼らを裏切れる?!
―――無理、だ。

「俺・・・俺は、なんで・・・・・・」

気づかぬうちに、涙が零れていた。
悲しいからではない、混乱で、頭が一杯なのだ。
このまま、人間のように振舞って、そうしていざ覇王と対峙したときに指摘されたら?
覇王を倒すことで、レムナントを管理する者がいなくなれば、今ある世界中のレムナントは暴走するだろう。
だが、覇王の意思のままに、レムナントを解放することなどできない。
どちらにしろ、結果は同じなのだから。

「ただ・・・俺は、今の俺でいたいだけなんだ。どうして・・・っ!」
「ラッシュ?」

はっとして振り向いたラッシュの視線の先に、
ダヴィッドがいた。
ダヴィッド・ナッサウ。ヴァレリアハート、更にはゲイ・ボルグという巨大レムナントと契約し、
代々アスラムを護ってきた男。
初めて出会って、彼の優しさに触れて、そして共に独立の道を歩んだ。
彼の傍にいられて、どれほど嬉しかったか。
この幸せを、どうやって失えというのか!?

「ラッシュ・・・泣いて、いるのか?」

月も出ていない暗い夜。かろうじて城の明かりがバルコニーに届く程度。
だから、泣いているのか、と聞いたのはダヴィッドが目で確認したからではない。
だが、なぜか、そんな気がしたのだ。
1人、部屋にもいられず、夜風の吹くこのバルコニーで、
彼は何を考えていたのだろう。

「ダヴィッド・・・」

泣き腫らした瞳のまま、男をみやる。
暗い中でよかった、と思った。もしこんな自分を完全に見られていたなら。
きっと、隠し通せない。自分ですら直視したくない、
この絶望的な真実を。

「どうした・・・こんな所で。風邪を引く。中に入ろう」
「・・・・・・ん」

躊躇いなく肩に回された腕に、熱を感じた。
ダヴィッドは、これほどまでに自分を大切に思い、愛してくれているのに。
なぜ、人間ではないのか。なぜ、彼と共に道を歩けないのか!
愛されたいのに。これからも、こうしてずっと―――

「ダヴィッド・・・俺・・・俺・・・!」

彼に抱きしめられて、熱を感じて、ラッシュは自分を抑えられなかった。
崩れ落ちるように、ダヴィッドの肩にしがみつく。
男は驚き、目を見開いたが、
ラッシュを受け止めるように、その背に両手を回してやる。
耳元で彼の名を囁いた。
もう、限界だった。

「っ抱いてくれよ・・・!俺は、あんたがっ!」

欲しい、と告げる前に、
乱暴に頭を掴まれ、唇が重ねられた。
深く、吐息を奪うような。ラッシュもまた、それに応えるようにしがみ付く腕の力を強めた。
躊躇いなく歯列を割る舌は、ひどく熱い。
濡れたそれが絡み合い、ひどく淫猥な音を立てる。
呼吸をするために少しだけ離れた唇は、そのまま角度を変えて再び重ねられる。
含みきれない体液が口の端から漏れたが、それでもラッシュは与えられる熱を貪る。
ダヴィッドは目を細めた。

いつもなら、嫌がらないまでも羞恥からか抵抗を示すラッシュが、
これほど強く自分を求めてきたのは初めてで、
少しだけ不安になる。
何か、態度がおかしいのは感じていた。
あの、神央宮の地下で真実を知ってからのラッシュは、
明るく振る舞ってはいたが、無口で、上の空なことが多くて。
けれど、何も聞けなかった。
彼が何を脅えているのかなどわからないはずなのに、
自分もまた、不安だった。
聞いてしまったら、今までの彼との思い出が全て失われてしまうようで。

「ぁ・・・は、はぁっ・・・」

漸く唇が解放され、ラッシュは力が抜けたまま床にへたり込んだ。
もう、何も考えられなかった。
こんな場所で、何をしているんだ、とも思うが、
既に余裕などほとんどない。
自分にも、男にも。

「ラッシュ・・・覚悟しろよ?」

耳元で囁いて、少年を抱え上げる。
抵抗は全くなかった。部屋に戻り、ベッドに投げ出すように横たえて、
すぐさま自分も彼の上に乗り上げる。
服を脱ぐのも忘れて、再び真っ赤に腫れ上がった唇に触れた。
痕の残る口の端を辿り、首筋に歯を立てる。ラッシュの口元から甘い声音が漏れた。
いつまでも聞いていたい程に、それはひどく男の欲を煽る。

「んっ・・・ぁ、早く・・・」

何が欲しいのか、何を求めているのか、
自分でもよくわからなかった。けれど、唇から出たのはそんな誘うような言葉で。
性急だな、と笑われた。
けれど、今日だけは、彼の好むように焦らされたくなかった。
飢えているのだと、そう思った。
こんな淫乱な自分を見せたくなかったけれど。

「ラッシュ・・・?」

乗り上げるダヴィッドの服を、震える手で脱がせ始める。
既に熱に浮かされた状態で、ただでさえ脱がせにくいかれのボタンを外そうとして、
何度も失敗した。その間にも、ラッシュ自身は素肌を晒されている。

「あんたが・・・、欲しいんだ・・・」
「・・・俺は、いつだってお前のものだよ」

何がしたい?そう囁かれて、胸が高鳴った。
中途半端にシャツを掴んでいた手の平を捕えられ、
指先にキスをされる。まるで、忠誠でも誓うかのように。
ダヴィッドは、彼の目の前で、すべての衣服を脱ぎ棄てて見せた。
ラッシュは、そんな彼から目が離せないまま、息を詰めてそれを身守る。
ひどく、魅力的だった。
こんな男が、自分に心を許し、そして自分を受け入れてくれたのだと思うと、
どうしようもなく泣きたくなる。
これほど全てを賭けて愛してくれているというのに。
どうして、今を捨てることができるだろう?
自分も、何かを返したかった。
いままで与えられたものの代わりに、何か、少しだけでも。

「ダヴィッド・・・俺・・・」
「どうした。今日はお前がしてくれるんだろう?」

からかうように口の端を持ち上げて、腕を引かれ、
体勢が引っ繰り返った。
いつも見上げていた彼を、自分が見下ろすような格好になる。
均整のとれた胸元や、完璧な造形を。

「・・・ラッシュ」

緊張し、戸惑いを覚える彼の背を抱きしめて、
ダヴィッドは耳元で囁いた。
お前の好きにしていい―――それは、誘惑。
誘われるままに、いつも自分がされているように胸元に唇を這わせる。
髪に差し入れられた掌が、頭を優しく撫でていく。
けれど、こんなものでは足りない。
拙いやり方で小麦色の肌に愛撫を施していたラッシュは、
恥ずかしくて意識的に視線を外していた箇所に近づいてきて焦った。
まさか、いつも自分がされているように・・・など。
無理だ。恥ずかしすぎる!

「・・・〜〜〜っ」

その瞬間、必死に笑いを抑えていたダヴィッドがついに声をあげた。
ラッシュは顔を真っ赤に染めた。
どうやら、ラッシュが何を考えているのか、
気配でわかったらしい。
肩を震わせて、更には口元に手を当てて必死に堪えている。

「笑うな!」
「いや、すまん。・・・お前が、あんまり可愛くてな」

あれほど自分が欲しいと言いながら、
いざとなると何もできなくなる。要するに、まだまだ初心なのだ。
欲望に忠実なくせに、それを素直に態度で表せない。
だからダヴィッドは、助け舟を出してやることにした。
それに、さすがに自分も焦れている。

「口で」
「っえ・・・」
「口で、してくれないか」

少年の手を掴んで、そうして自身に絡ませる。
思わせぶりに指先で先端に触れさせると、ひくりと反応するそれに慌ててラッシュは手を引っ込めた。
まったく、どうしてこうも、恥ずかしがり屋なのだろう?
どうやら、ベッドの上で彼を思い通りに扱うには、相当忍耐が必要らしい。

「・・・欲しいんだろう?」
「・・・・・・う」

恐る恐る視線を落としたそれは、
もう既に天を向いていて、このまま放って置かれては、確かに辛い状態で。
ラッシュは意を決して、再度彼の砲身に指を絡めた。

(・・・大きい・・・)

これが、自分の奥に入るのかと思うと、知らないうちに息が荒くなる。
けれど、ラッシュはそれ以上考えるのをやめた。
目を瞑り、唇を近づける。
息を止めるようにして一気に口内に含むと、
その熱さにひどく興奮した。
舌を絡めて、快感を引き出すように舐めあげれば、
内部の男が張りを増していく。

「ラッシュ・・・」

頭上から降ってくる声音に少しだけ顔をあげる。
掌が髪を掻きあげ、そして抱きしめた。上気したような頬。
それを目にして、ラッシュは更に行為を強めた。
感じてくれている。
自分の拙い行為で、彼が。

「ん・・・ふ、・・・ぁ、っぐ・・・」

彼に促されれば、もはやラッシュを止めるものはなにもない。
恥ずかしさよりも欲望が先行していた。
喉の奥まで男を受け入れ、そうして頭を上下させて更に男の熱を煽る。
まともに息もできず、苦しさに顔をしかめた。
けれど、それでも、
ダヴィッドに悦んで欲しくて。
夢中で彼の雄にしゃぶりつく。もはや、羞恥など頭にない。

「いいよ・・・ラッシュ。このまま出してもいいかな?」

(・・・・・・)

こんな状態で、応えられるはずもないだろうに。
更に、頭を捉える男の手の力から、解放してくれるつもりなどないことがわかる。
あれほど優しい言葉を吐く癖に、こういう時の強引さといったら。
けれど、望んだのは自分で、
彼に愛されて幸せだと思うのもまた自分なのだ。
ラッシュは更にボルテージを上げ、口内に入りきらない程のそれを貪った。

「っ・・・ラッシュ・・・!」

強く髪を掴まれて、名を呼ばれれば、
次の瞬間、喉の奥に叩きつけられるのは男の欲の証。
ラッシュは眉を寄せたが、なんとかそれを嚥下した。零してはいけないと思った。
彼が自分を受け止めてくれたように、
自分も彼を受け止めたくて。

「・・・、ありがとう」

彼の手に促されて、顔をあげた。
ダヴィッドはラッシュを引き寄せ、濡れたままの唇に触れる。
汚れる口の端を舐め取り、舌を絡ませる。
そのまま、掌は下肢を探る。
素裸のダヴィッドに対し、未だ中途半端に下肢の衣服を乱したままのラッシュの、
その衣服の上から、
ダヴィッドはラッシュの雄に触れた。

「・・・ぁ、んっ・・・!」
「ラッシュ・・・今度はお前の番だな?」

ラッシュの切なそうな表情に、唇を落として。
彼の衣服を脱がせ、そうしてダヴィッドは長い指を少年のそれに絡ませた。
大して触れられてもいないのに、
ダヴィッドに奉仕しているだけで興奮は頂点に達していたのか、
ラッシュのそれももはや限界。
ダヴィッドの掌が軽く扱いてやるだけで、
ラッシュはイきたそうに顔を歪めた。

「ぁあ・・・、ダヴィ・・・。俺、もっ・・・」
「先にイくか?」

雄を弄びながら、耳元で囁かれる。
もちろん、彼自身は限界だった。けれど、もっと欲しい場所が、疼いてたまらなくて。
ラッシュはやっとのことで首を振った。
そうして、指先を、己の下肢の奥へ這わせていく。
ダヴィッドは驚き、そしてひどく嬉しそうに口の端を持ち上げた。

「んんっ・・・」
「ラッシュ・・・嬉しいよ。」

彼を受け入れるべく自分で用意しようとするも、
なかなかうまくいかず、ダヴィッドは苦笑した。
ラッシュの頭を肩に預けさせ、両手を回して背後を探る。
先走りで既に濡れた蕾は、ダヴィッドの指を拒もうとはしなかった。

「欲しそうだな?」
「ん・・・欲しっ・・・!」

一本では足りない、とばかりに絡みついてくる内部は、
ひどく熱い。
指先の付け根まで奥に挿し入れたダヴィッドは、
自身を受け入れるここを想像して獣のように唇を舐めた。
早く欲しいのは、自分も同じ。
先ほど吐きだしたはずの欲が、より大きな波となって体内に押し寄せる。

「・・・まだ、キツいかもしれないが・・・」
「大、丈夫、だから・・・」

きゅ、と肩にしがみ付かれ、
触れ合ったままのこの体勢を崩したくなかった。
ダヴィッドはラッシュの腰を持ち上げると、自身を軽く扱き、そうして彼の奥に宛がう。
それだけで、ラッシュはひどく感じたように身体を震わせる。
彼の奥の、呑み込もうとする動きに誘われるように、
ダヴィッドは彼の内部に侵入した。

「っあ、ああ・・・っ!」
「ラッシュ・・・」

まだ緩み切ってはいないそこは、彼にどれほどの苦痛をもたらすのだろう。
けれど、必死にそれに耐え、健気にも自分にしがみ付いてくる彼が、
ひどく愛しく思えて。
ダヴィッドは少年を強く抱きしめた。
繋がる下肢もまた、ラッシュの強い締め付けにひどく快感を覚える。

「っつ・・・」
「大丈夫か・・・?」

奥の奥まで男の侵入を許し、ラッシュは息も絶え絶えの状態だった。
だが、苦しさ以上に、確実に感じる充足感。
そのまま唇を重ねられると、
下肢の痛みも吹き飛ぶような気がした。
息を整えて、ラッシュはダヴィッドの胸に手を付き、腰を上げた。

「っん・・・は、あっ、ああっ・・・」

初めは小さく、段々と大きくなる腰の動きに、ダヴィッドは驚きの連続だ。
まさか、ラッシュが自分から動いてくれるなんて。
夢ではないのかとすら思う。
崩れ落ちそうな彼の腰を支えてやる。
ひどく卑猥な水音が、周囲に響く。

「や、ダメっ・・・そっ・・・」
「一緒に、達こう」

ラッシュの動きに合わせ、ダヴィッドの掌が彼の雄を弄る。
前からと後ろからの刺激に、ラッシュは唇を震わせた。
体内を回る重く熱い奔流と、そして脳髄まで痺れるような強い快感。
それが同時にラッシュを襲い、
なんとか保っていた理性ももはや限界。
早く、あの頭が真っ白くなるほどの衝撃が欲しい。
何も考えられなくなって、ただ目の前の男を感じて。
それで幸せだと思える快楽が、欲しくて。

「ダヴィッド・・・おれ、も、だめっ・・・!」
「ああ・・・俺も、お前の中で達きたい」

ラッシュの両手を首に回させ、ダヴィッドは自身の両手で激しく少年を揺らす。
更に深くまで抉り擦られるような刺激。全身に力が入らない。
必死で、ダヴィッドの頭を抱えた。

「―――っああ・・・!!」
「っく・・・」

達する瞬間、ダヴィッドの顔がひどく男らしく歪んだ。
それを目にしたラッシュの腰が、信じられない程熱くなる。
箍が外れた気がした。
快楽という波に流され、ラッシュは瞳を閉じた。

キスをして、セックスをして、熱を感じて。
例えこんな行為を続けたって、人間になんか戻れないことくらいわかっている。
それでも、少しでも。
彼の傍にいたくて、彼から離れたくなくて、
何度だって身体を繋ぐ。
きっと、一生。
彼と共にいる限り、自分は彼を求め続けるだろう。









「・・・少しは、落ち着いたか?」
「ん・・・・・・」

布団にくるまったままのラッシュに、ダヴィッドは温かなカップを手渡した。
アスラムの気候は、それほど住みにくい環境ではないが、
さすがに深夜となれば話は別だ。
更に、今はもう朝方。
太陽が昇るのも、時間の問題だった。

「これ・・・」
「フェアリーハーブだ。心が安らぐ」
「ありがと」

良い香りのするハーブティだった。こんな夜中に、
自分で淹れてきてくれたのだろうか。
ラッシュは素肌に毛布を纏わせたまま、ティーカップに口を付ける。
控え目な甘さが、彼の優しさのように感じた。

「・・・美味しい」
「それはよかった」

ローブ1枚を纏ったまま、ベッドに腰掛け、ラッシュの頭を撫でる。
本当は、大して歳の差はないのだが、
この保護されっぷりはどうなのだろう。
まぁ、居心地はいいのだが。

「・・・・・・ダヴィッド」
「ん。」
「聞かないのか・・・さっきのこと」

ラッシュは顔を俯かせて、そう問うた。
ダヴィッドには、バルコニーで泣いていたことも、あれほど強く自分を求めたことも、
違和感にしか映っていないだろう。
本当は、聞かれたくなかった。
けれど、このまま、隠し事をされていると思われるのも辛くて。

「言いたいのか?」
「・・・・・・」

ダヴィッドの変わらぬ声の調子に、ラッシュは沈黙した。
言いたいわけがない。あんなこと。今までのすべてを壊してしまうような真実を、
ラッシュが告げられるはずがなかった。

彼と身体を重ねて、確信したのだ。
離れたくない、と。
どんな理由があったとしても、たとえ1000年前の記憶が戻ったとしても。
きっと、自分は、ダヴィッドの為に生きるだろう。
それほど、大切なものをもらった。
かけがえのないものを。

「なら、構わない。お前が言いたくなった時に聞くよ。」
「ダヴィッド」
「大丈夫。俺はな、以外と待つのは得意なんだ」

それに、お前の心は俺にある、って確信できたからな。
そう囁かれて、ひどく心が安いだ気がした。
そして、彼の優しさに、感謝した。

「ありがとう、ダヴィッド」

失えるわけがない、この想い。
命を賭けてでも、守る。
それが、レムナントである自分の最後の使命だと思った。

窓をみやれば、もう、太陽が登り始めている。
覇王に言われた期限が過ぎていくのを、
ラッシュは決意と共に見守った。





end.
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