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星蒼圏 - 保管庫モバイル


「甘い罠。」


「・・・っラッシュ!!!」

どこか遠くで、ダヴィッドの叫び声が聞こえた気がした。
大丈夫だ、と伝えたいのに、上手く言葉にならない。
それどころか、眩暈のする身体を支えていられず、頭を押さえ、膝をつく。
一気にこみ上げる吐き気と悪寒に、
ついにはラッシュはふらりと倒れ込んだ。
誰かがすぐに駆け寄り、回復術法をかけてくれた気もするが、
一向に治る気配はない。
そのまま、ラッシュはとうとう意識を手放した。











「うぅ・・・」
「しっかりしろ、ラッシュ」

その日、ダヴィッド達はダークフォレストに来ていた。
採集も兼ねた鍛練の場としてそこを選んだのだが、その日湧いていたのはエキドナシャクガ。
全体攻撃を多用する嫌な敵であるが、
運悪く、背後から大軍に襲われ兵たちはパニック状態。
目の前の敵を倒すのに精一杯だった彼らは、サイドアタックされていたことにも気がつかなかった。
そうして。
ラッシュがダヴィッドを見やったその時、
シャクガは今まさにダヴィッドに向けて毒を放とうとしていて。
とっさに、身体が動いた。
ダヴィッドを庇おうと、彼とモンスターの間に立ち塞がった彼目掛けて、
高濃度の毒気が吐き出される。
無論、すぐに回復術を施したが、彼の体調は回復せず、
今はこうして、ダヴィッドにおぶってもらい城に引き返しているのだった。

「・・・もう、いいよ、ダヴィッド・・・一人で歩ける」
「何を馬鹿なこと言ってるんだ。そんな具合で歩けるわけがないだろう」

自分でダヴィッドの首に腕を回すのも精一杯の状態で。
いますぐにも力が抜けそうな彼に、ダヴィッドは心配そうに声をかけた。
そもそも、ラッシュがこんな原因になったのは自分の不注意からで、
まさか自分が放っておくわけにもいかない。
だからこそ、兵の申し出にも耳を貸さず、自分で彼を背負っているのだった。

「・・・毒くらいで、こんなになるかよ、フツー・・・」
「あれほど至近距離で浴びれば仕方がない。早く戻って休むしかないな」

すぐに回復術法を施したおかげで、症状は軽くなったものの、
今だに襲う眩暈や吐き気はどうしようもない。
更に、身体中が熱く、視界が朦朧とする。これでは、確かに歩けるような状態ではなかった。
とっさの判断とはいえ、今ではラッシュは後悔していた。
よくよく考えると、ダヴィッドは毒耐性のあるバックラーを装備していた。
まともに直撃しても、自分のようにここまで酷くはならなかっただろう。
実際、症状の軽かった皆が、術法で難なく回復していたから、
これでは自分だけ無駄に被害を受けてしまったではないか!!
・・・恥ずかしい。

「それに、今の時期、毒が強く出ることが多いですからね。ラッシュ殿、もう少しの辛抱です」
「ったく・・・」

パグズの言葉に、けれどラッシュは顔を歪め、ダヴィッドの肩に顔を埋めた。
幸い、城はもう目の前。
漸くゆっくり休める、とラッシュは安堵する。
瞳を閉じれば、ダヴィッドの背の暖かさがひどく心地良くて。
そのまま、ラッシュは眠ってしまった。

「パグズ。先に城に戻り、医者を呼んできてくれ」
「は・・・ですが、ダヴィッド様。おそらく、ラッシュ殿の毒は、もう抜けていると思われます。今は、休養が先決かと」
「抜けている?どういうことだ?」

パグズの言葉に、ダヴィッドは怪訝そうに眉を寄せた。
これほど熱を出し、具合が悪そうだというのに毒は抜けている、とはどういうことなのだろう。
しかし、パグズは言い難そうに渋った後、

「・・・とにかく、今はラッシュ殿を、ダヴィッド様の部屋へお連れ下さい」
「私の部屋?何故・・・」

不可解なパグズの言葉に、けれどそこで会話は途切れてしまった。
連絡を受け、心配したトルガルたちが合流したからである。
ラッシュ以外はたいした被害もなかったため、とりあえずは解散とし、
ダヴィッドは首を傾げながらもパグズのいうとおり自室へラッシュを運んだのだった。





「ラッシュの毒が抜けた、とはどういう事だ?」

改めて問い掛けるダヴィッドに、パグズは本棚の前の脚立に乗り手を延ばした。
ラッシュの容態は、とりあえずは安定しているようだ。
震える身体を暖めるように毛布をかけてやり、
熱を冷ますべく額に濡れタオルを置いてきた。今はラッシュは眠っている。
本当は、ずっと側についていてやりたかった。
だが、先程途切れてしまったパグズの話も気になる。

「毒自体はもうほとんど消えているでしょう。今現在、術法で直せない毒はなかったと記憶しております」
「では、なぜラッシュはあれほど苦しんでいる?しかも、熱が出るなど、シャクガの毒の症状として聞いたことがない」
「おそらく、後遺症です。・・・こちらを、御覧ください」

パグズがもってきたのは、アゲハ事典。
アゲハ種のモンスターの生態や棲息地の細かな記述が載っている分厚い本だ。そのエキドナシャクガの項を指し示して、パグズは口を開いた。

「今の時期、シャクガは繁殖期にあります。先程の奴らはおそらく雌。気が立っていたのでしょうな」
「確かに、普段よりも攻撃が激しかったな。」
「そして、雌はこの時期、毒に特殊なホルモンを分泌するそうです。毒の分泌は、彼らの繁殖行動の一つと考えれば致し方ない事でしょうが」
「それで、ミトラへの影響は?」

回りくどいパグズの言い方に焦れて、ダヴィッドは単刀直入に問い質した。
シャクガの毒を浴び、回復の術を施しても体調が心配だった。


「それが・・・あまり詳しくは解明されてはいないのですが、ミトラで言えばフェロモンのようなもので、どうやら遅効性の媚薬のような効果をもたらすそうで」
「媚薬だと!?馬鹿な、我々も同じように浴びたが症状は現れないぞ」
「もともと一部のミトラにしか現れないと言われていますし、浴びた量が量でしたからね」
「・・・」

確かに、言われてみれば、そんな症状だったかもしれない、と
ダヴィッドはラッシュを思い返しながら考えた。
キュアをかけ、しばらくすると彼の体調は軽くなっていたし、
毒本来の症状である手足の痺れや吐き気、腹痛といったものはそれ以降訴えることはなかった。
そして、次に彼が苦しみだしたのは、
朦朧とする視界や、熱であったり、うまく力が入らなかったりと、
あげてみればみるほど媚薬の効果ではないか!

「そうか・・・それで医者も呼べず、ラッシュの部屋にも運べなかったのだな」

ダヴィッドは、漸く合点がいったようにうなづいた。
確かに、ラッシュの性格なら、あんな状態を誰彼に見られるなど死ぬほど嫌だろう。
医者の診察などを下手に受けて欲情している姿など見られたら
もう生きていけないかもしれない。
そこまで考えて、ダヴィッドは、ん?と首を傾げた。
ラッシュの部屋に連れていけないからといって、なぜ自分の部屋なんだ?

「とにかく、これは、時間が経てば回復するものなんだな?」
「はい、それは確実かと。ただ、ラッシュ殿はかなり辛い思いをするでしょうな」

パグズの言葉に、ダヴィッドは顔を歪めた。
一般的に、媚薬の効果など1日中続くわけではないが、
正直、自分の部屋でそんな誘惑するような苦しみ方をされてはたまらない。
1人にしておきたくはないが、目の前で見ている側としては
理性が続かないではないか!

「・・・・・・手っ取り早く効果を消す方法はないのだろうか」
「ひとつだけ、ございます」

パグズは頷くと、何やらごそごそとクローゼットから取り出す。
ただの、白い箱だった。腕にすっぽり収まるくらいの、小箱である。

「こちらです」
「なんだ?」

中身を告げず、手渡すパグズを不審に思いながらも、
ダヴィッドは箱をテーブルに置き、そっとフタを開けた。
・・・と、中身がまともに見えるか見えないかまで開けたところで、
ダヴィッドは無言でまたフタを閉じてしまう。
沈黙。
少し間が空いて、次にダヴィッドは額に手を当て深く溜息をついた。

「・・・パグズ・・・」
「はい?」
「冗談を言っている場合ではないんだぞ?」
「勿論、冗談ではございません」

至極大真面目に語るパグズに、
今度はダヴィッドは呆れたように口をあんぐりと開けてしまった。
なぜなら、目の前の箱の中には、
まさかパグズが持ってくるとは思えない物体―――
ローションやゴム、更には男性器の張り型といった、俗に大人の玩具と言うべきモノ。
ついでに言えば、ご丁寧にミトラ用である。

「・・・では、コレを私にどう使えと?」
「決まっております。ラッシュ殿の媚薬の効果が早く抜けるよう、手助けをするのです」 

再度自分に箱を差し出してくるパグズに、
ダヴィッドはますます眉間に皺を寄せた。
先ほど、自分は理性がどうのと考えていた気がするが、
どうやらそういう問題ではないらしい。
パグズはというと、ひとつの動揺もない表情で、(さすが妙齢と言うべきか)
これしか方法がございません、などと言っている。
ダヴィッドはもう一度ラッシュの姿を思い返し、更に顔を顰めた。

確かに、ラッシュのことは出会ってからというもの気にはしていた。
彼が傍にいてもいなくとも、彼のことを考えていたり、
気づけば目が彼を探していることもしばしば。
けれど、きちんと彼を好きだと、愛していると自覚したことはない。
もちろん、相手は同性で、
自分の中で無意識に抑制していた部分もある。
だからこそ、彼の欲情している姿など、見ていられないと思っていたのだが・・・

「・・・・・・私がか?」
「ダヴィッド様しかおらんでしょう。
 ・・・大丈夫ですよ。心配せずとも、ラッシュ殿はダヴィッド様のことを好いておられます」
「・・・それは、嬉しいが・・・」

彼の言う"好き"と、こういうことをしても大丈夫だという"好き"は、
違うのではなかろうか・・・。
一抹の不安を感じながらも、ダヴィッドは箱を抱えたまま、パグズに背を押され、
仕方なく自室に戻ることになった。
果たして、今、ラッシュはどんな状態でいるのだろう?
多少うなされながらでも、
眠っていてくれればいいのだが・・・。
考えれば考えるほど、ドツボに嵌っていくような気がする状況に、
ダヴィッドは内心頭を抱えていた。










・・・ダヴィッドが部屋に戻ると、
ラッシュは媚薬の効果に煽られ1人で己を慰めていた・・・わけではなく、
幸い静かに布団の中で眠ってくれていた。
はぁ、とダヴィッドはひと安心し、とりあえずベッドの下に箱を隠してから
椅子をベッドサイドに引っ張った。
眠ったままの彼は、やはり苦しげに息を吐いていて、
確かに辛そうだ。

「・・・ぁ、つ・・・い・・・」

うなされる様にしきりに熱いと呟く。
額の濡れタオルはとっくに温くなってしまっていて、
ダヴィッドは再度氷水で搾り、彼の額に置いてやった。
こんなことをしても、あまり意味がないことはわかっている。
そもそも、ただの熱ではないのだ。
パグズの言う通り、彼の中で疼いているモノを吐き出さねば埒が開かない。
けれど、そんな理由で彼の同意も得ないまま抱くわけにもいかず、
ダヴィッドは葛藤した。
心配げに、上気した彼の頬を撫でようと、手を伸ばす。

「ラッシュ・・・」
「あっ・・・!」

しかし、ダヴィッドの指先が頬に触れた途端、
ラッシュは突然、大きな声をあげた。
それも、明らかに鼻にかかった声音で!
ダヴィッドは咄嗟に手を引き、口元を抑えた。

―――まずいな・・・。

「ダヴィ・・・ッド・・・?!」

自分の声音で目が覚めたのだろう、うっすらとラッシュが瞳を開ける。
大丈夫か、とダヴィッドは少年を覗き込んだ。
が、またしてもダヴィッドは息を呑む。
彼の瞳は、ひどく潤んでいて、更に縋るような色を乗せていた。
しかも、頬は真っ赤に染まり、
口元は浅い息を吐いているのだ!
どう見たって、最中の姿としか思えない。
助けを求めるように伸ばされた手を取れば、
やはりひどく熱くて。
これでは、理性が続くのも時間の問題だった。

「何か欲しいものはあるか?」
「水・・・」

朦朧とした頭で考えられるのは、渇いた喉を潤すものだけで、
ダヴィッドからカップを受け取ろうと身体を起こす。
けれど、震える手は、なかなか彼の思い通りにはいかずに、
ダヴィッドが手を離すと水面が大きく揺れた。

「―――あっ・・・!」
「おっ、と」

うまく力が入らず、ラッシュの手からカップがこぼれおちるのを、
咄嗟にダヴィッドは受け止めたが、
それでも胸元が零れた水によって濡れてしまう。
自分の情けなさに、ラッシュは俯いた。

「ごめん」
「・・・大丈夫だ。」

普段は見られない、ラッシュの弱気な姿に、
ダヴィッドはほほ笑んだ。
安心させるように、片手で頭を撫でてやり、
そうして片方の手ではカップに残った液体を口元に運ぶ。
そのまま、ダヴィッドは体を傾けた。

「え・・・ぁ、ちょ・・・!」

ラッシュは驚くように目を見開いたが、
勿論抵抗するような余裕はなく。
顔の横で腕を支え、そのまま影が重なった。
柔らかな唇の感触と、流れ込む冷たい水の感覚。けれど、
それよりも、間近に迫ったダヴィッドの存在にひどく動揺した。
動揺と、そして興奮。
同性にキスをされて、嫌悪感よりも先に、背筋が震えるような快感を覚えてしまうなど、
普段の自分には考えられないことで、
けれど混乱した頭では逃げようにも逃げられない。
それどころか、自身の熱は、一向に収まる気配も見せず、
苦しくてたまらなくて。
とにかく、何かに縋りたかった。
無意識に、腕が伸びていた。

「・・・ダヴィット・・・俺・・・」
「ラッシュ・・・」

ダヴィッドは、自分の理性が崩れ落ちる音を聞いた気がした。
部屋に戻り、彼の姿を見た時点で、予想はしていた。
おそらく、自分は誘惑に負けてしまうだろう。
本来ならば、彼が正気の時に、きちんと手順を踏んで承諾を得たかったのだが、
この場合仕方がない。
現に、ラッシュは興奮を抑えきれず、
自ら自分を求めてくれているのだから。
この機会を、どうして無視できるだろう?!

「辛いのか?」
「ん・・・」
「大丈夫だ、俺がなんとかしてやる」

ダヴィッドはそういうと、躊躇わず胸元を肌蹴させた。
ラッシュは恥ずかしげに身を捩ったが、
そもそも先ほど濡らしてしまったそれを、いつまでも着ていては風邪をひいてしまう。

「ぁ、や・・・!」
「大人しくしていろ。」

耳元で囁くと、腕の中の少年はぶるりと震え、けれどしがみつく腕を強めた。
初めてのこんな行為に、恐怖すら覚えているかもしれない。
けれど、あの毒の効果で、身体は興奮を抑えきれないでいるのだ。
だからダヴィッドは、できる限り、彼の不安を解すように優しく抱きしめてやった。

「ダヴィッド・・・?」
「俺を信じろ。悪いようにはしないから」

そうして、再度唇を重ねる。
始めは少しだけ抗うそぶりを見せたラッシュだったが、
何度も軽いキスを続けていると、
漸く手足の力を抜き、ダヴィッドに身を預けた。

(ラッシュ)

上半身を脱がせ、白に朱をのせた肌が露わになる。
こうして、改めて彼の身体を意識すると、
自分もまた毒を受けたように身体が熱くなった。
今まで、理性で抑えつけていた欲望が、箍が外れて溢れ出る様。
彼を傷つけたくはなかった。
けれど、今の自分は抑えが利きそうにない。

「んあっ・・・」
「ここをこんなにして・・・。さぞかし辛かったろう」

胸元にキスを落としながら、布地の上から彼の雄を確かめれば、
もう既に、極限まで張りつめていて、
ダヴィッドは痛ましい顔で下肢の衣服を脱がせた。
ラッシュは身を捩ったが、彼が腰を浮かせたことで返って脱がせやすくなってしまい、
苦笑する。直接触れるだけで、ラッシュは悲鳴を上げた。
毒のせいで鋭敏になった皮膚感覚が、
恐怖にも似た痺れを全身に走らせる。
けれど、解放を求め昂っていたラッシュ自身は、
ダヴィッドの掌を悦んで受け入れていた。
先端から、次から次から溢れる蜜を指先で掬い、ダヴィッドは筋に沿って擦り上げていく。
熱い吐息を吐いていたラッシュは、
甘い声音を漏らしては耐えられない、とばかりに首を振った。

「やっ・・・ぁ、もうっ・・・!」
「ラッシュ・・・」

ダヴィッドにしがみ付いている腕の力が一際強くなった瞬間、
彼の雄から溜まっていた熱が吐き出された。
白濁は掌を汚し、溢れたそれは腹まで汚していく。
ぬめった感触に、ラッシュは頬を赤らめたが、
ダヴィッドはひどく満足げな表情で少年を見下ろしている。
そのまま、恥ずかしげに顔を背ける彼の頬に、
軽く口づけを落とした。

「んっ・・・」
「少しは、楽になったか?」
「・・・・・・、・・・わから、ない」

はぁはぁ、と息をつくラッシュは、
脱力感を覚えながらも、まだ確かに内部に燻ぶる熱を感じていた。
それは、先ほどのようにただただ溢れ出そうなものではなく、
自身の内側の欲望を煽るようなもので。
ただ、欲しかった。
でも、何が?

「まだ・・・熱いな」
「ぁ、んっ・・・・・・!」

吐きだされた精に掌を汚したまま、
ダヴィッドはすぐに張りを取り戻すそれに指先を絡めた。
興奮の収まらないそれは、
ラッシュの甘い嬌声もあってダイレクトにダヴィッドの欲をも刺激する。
困惑する彼を前に、自分もまた、このままでは終わらせたくなかった。

「ダヴィッド・・・!」
「ああ、俺も、お前が欲しい」

ダヴィッドはそう呟くと、手早く自身の衣服をベッドの下に脱ぎ捨てた。
ぼうっと目の前の男を見つめていたラッシュは、
初めて見た気がする、均整のとれたその精悍な胸元に釘付けになる。
熱い肌同士を重ね合えば、ひどく胸が高鳴った。
それと同時に、ダヴィッドの鼓動も感じる。
勇敢で、力強くて、頼らずにはいられない何かを感じるそれを聞いているだけで、
身体に燻ぶる苦しさも薄れる気がした。
きっと、今の自分は頭がどうかしている。
その証拠に、視界は霞がかかったように曇っているくせに、
彼が触れていく場所は敏感になり、
彼の指先が離れていくのがひどく辛いものに感じてしまうのだから。

「ぁ、ダヴィッド・・・、そこは・・・」
「力を抜いて・・・」

下肢をそっと押し開き、ダヴィッドはラッシュの双丘の間に隠された箇所をなぞった。
無論、こんな行為に慣れているはずもないそこは、
きゅっと窄まり、異物の侵入を拒んでいる。

「きつい、な・・・」
「やだ・・・」

恥ずかしさと不安から、逃れようとする少年を白いシーツに縫い止めて、
ダヴィッドはふむ、と考えた。
パグズはきっと、こうなることを予想して予め自分にあの箱を託したのだろう。
そういう意味では、
彼の思惑通りになってしまうのはいささか癪ではあるのだが。
このまま、ラッシュを無理に開かせてしまっては、彼に傷ができてしまうだろうし、
彼を愛している以上、そんな辛い思いはさせたくない。
ダヴィッドは、意を決して先ほどベッドの下に隠していた箱を開け、
ラッシュの見えない所でローションを取りだした。
他の道具は、・・・まぁまたの機会でいいだろう。・・・ラッシュがさせてくれれば、の話だが。

「・・・少し、冷たいぞ」
「ひゃっ・・・な、何・・・!?」

小瓶に入ったとろりとした液体を掌に乗せ、
ダヴィッドはラッシュの下肢に塗りつけた。卑猥な音と感触に、
ラッシュは戸惑ったような表情を見せる。
けれど、ダヴィッドの指先は止まらない。ぬめりに導かれるように、ゆっくりとラッシュの内部に侵入していく。

「ぁっ・・・ちょ、待っ・・・」
「待てない」

くちゃくちゃと音を立てて抜き挿しされるそこに、
むしろ興奮したのはダヴィッドだった。
指の付け根まですぐに呑み込んだそこは、熱く、そして柔軟で、
そしてひどく自分を締め付けてくる。
内壁を何度もひっかくように刺激して、ラッシュの反応を確かめた。
あれほど入口は固いものの、内部はひどく敏感で、やはりこれは毒の効果なのだろうか。
ふと視線を合わせたラッシュの瞳は、
これ以上ないほどに潤み、既に目の端から涙を溢れさせている。
すこしだけ、罪悪感が胸を寄切った。
けれど、ラッシュのこんなあられもない姿が見られたことが、ひどく嬉しくて。

「ラッシュ・・・欲しいだろう?」
「欲しく・・・なんか、・・・ああっ・・・!」

自身の砲身もまたローションで濡らし、
ダヴィッドがラッシュのそこに宛がう。すぐに侵入したい欲望を必死に耐えて、
ぐっと先端を押すように。
男の雄に簡単に入口を明け渡したそこは、
ローションの手助けもあってひくひくと収縮を繰り返していた。
ずるり、と簡単に内部に入り込んでくるそれに、
ラッシュは息を詰めた。
滑りが良過ぎて返って彼を苦しませてしまいそうで、
ダヴィッドもまた慎重に侵入を果たす。
ぱたりと、ラッシュの素肌に男の汗が飛び散る。

「あ、つい・・・熱いよ、ダヴィッド・・・!」
「お前のナカも、熱いな・・・こんなに、俺を締め付けて・・・待っていたのか?」
「違・・・!」

震える唇に、こちらも熱い唇を重ねて。
深々と自身を少年の内部に押し込んだ男は、満足げな吐息を漏らす。
そうして、またもや絶頂の寸前の少年自身に触れる。
ラッシュはもう、あまりに強い快楽に困惑するしかできない。

「あ、あっ・・・駄目、だっ、そこ・・・は!」
「感じるか?安心しろ、何度でも達かせてやるから」
「んっ、ナニ、言ってんだよ・・・!」

どこが安心しろなのか全くわからない。
わからないが、とにかく毒によって煽られながらも、吐き出す術を知らずくすぶっていた熱が
ダヴィッドによってどんどん引き出されていくのは感じていた。
ただ、別の意味で、強い快楽に眩暈がする。
足を開いて、ダヴィッドと下肢を繋げて、そこから留まることなく溢れる快楽に、
全身が悦を覚えていた。
黒髪が揺れるたびに、シーツが汗に汚れる。
けれど、既に今更。
汗やら精やらローションやら、2人の交わった証は誰が見ても明白だ。

「あ、あ、んっ・・・!」
「耐えるだけ、辛いぞ?・・・ほら、達きたいだろう?」
「っん・・・!」

下肢は繋がれたまま、ダヴィッドに抱き締められ、そのまま掌でイかされてしまったラッシュは、
恥ずかしさのあまりダヴィッドの肩に顔を埋めてしまった。
そんな少年が可愛くて仕方なくて、
ダヴィッドは繋がれた部分を中心に腰を揺らす。
すぐに少年の身体は熱くなる。
この分では、おそらく、彼の熱が収まる頃には、ラッシュはひどく体力を消耗しているだろう。
けれど、仕方がない。
確かに、自分を庇ってくれたために、ラッシュはこうなってしまったのだけれど。
あれほど魅惑的で、自分を誘惑する表情を見せる彼も同罪だ。
自分もまた、
止まることのない欲望を認識して、
ダヴィッドは苦笑した。









「・・・なんか、腰、痛ぇ・・・」

次の朝、ラッシュの熱はすっきりと回復していて、
内心ダヴィッドは安堵した。
結局、あれから何度達ったかわからないくらいの時間、ラッシュと身体を繋げていて、
さすがの自分も、部屋から出てパグズと顔を合わせるのは辛いものがあった。
勿論、パグズは何も言わないし、
ただラッシュの容態を聞いてきただけだったのだが。
どうも、パグズにハメられたような気がしてならない。

「さすがに、1日毒でダウンしていればな。まぁ、すぐ治るさ」

当のラッシュはというと、昨日のことは綺麗さっぱり忘れていたらしく、
あれほど身体を繋げた痛みに首を傾げていた。
いや、時折自分を見ては、頬を赤くして下を向いているから、
本当はわかっているのかもしれない。
ただ、恥ずかしくて向き合うことができないだけで。

「・・・あの・・・その、ごめんな。昨日は。オレのせいで、いろいろ、迷惑かけた」
「気にするな。それに、元はといえば、俺の不注意だ。すまない」
「そんなっ!あれは、オレが、馬鹿だからさ・・・」

しきりに自分を責めるラッシュに、ダヴィッドは苦笑した。
頭を撫でて、大丈夫だ、と繰り返し告げる。
本当は政務もあるだろうに、自分の傍にいてくれるのが、ラッシュには嬉しかった。

昨晩のことは、あまりはっきり覚えていない。
ただ、熱でうなされている自分を、ダヴィッドはずっと傍についていてくれた。
それに、何か・・・とてつもなく恥かしいことをされたような気もするが、
とりあえずラッシュはそれについては目を瞑ることにした。
ダヴィッドが、好きだ。
好きだから、傍にいたくて、
傍にいてくれたことを嬉しいと思う。
今はまだ、それだけでいい。

「・・・ラッシュ?」
「・・・・・・ううん。別に、なんでも。・・・ありがとうな、ダヴィッド」
「こちらこそ。・・・美味しい思いをさせてくれて、有難う」
「―――っ!!!」

珍しく素直に礼を言うラッシュは、
ダヴィッドの無頓着なのかわざとなのかわからない発言に、
一気に顔を赤らめたのだった。





end.






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