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星蒼圏 - 保管庫モバイル
誰ガ為。
「8月、いつでもいいけど、休暇取れないか?」
突然の賀来の言葉に、結城美智雄は怪訝そうな顔を向けた。
「・・・は?」
この男がそんな事を言うなど、珍しい事もあるものだ。
ここは自分の部屋でなくて、とある郊外のホテル。
自分の住んでいる家がないからではないが、結城はよくホテルを利用する。
それも、同じ場所ではなく、一泊ごとに名をかえ場所をかえ。
特に懇意である男と会う時には、よほどのことがない限りは必ずホテルを利用した。何故ならば、既に指紋を消している自分と違い、賀来の痕跡は絶対に残るからだ。
それ以前に、何があるかわからないのだ。用心するにこしたことはない。
仕事帰り、夜遅く賀来に手配させたホテルに入り、
そのまま出勤することすらあった。
「なんだよ・・・あんたからのお誘いか?珍しいな」
「別に、誘っているわけじゃないが・・・」
「勿論、俺達だけだろうな?」
からかうように告げると、気まずそうに視線をさ迷わせる賀来に、
一気に頭が冷える。
ばかなことを言った、と幾分思考の緩い自分に舌打ちした。
それもそのはず。この場には、自分とこの男しかいないのだから。
更に言えば、明日はこれまた珍しく休日。
ホテルを出たら、そのまま賀来と教会に顔を出してもいいし、次のターゲットを存分に陥れるべく下準備に興じるのもいい。とにかく、
少し、気が緩んでいたようだ。
この男に甘える自分など、あってはならないというのに。
「・・・子供達を、サマーキャンプに連れていきたいんだ。毎年行かせられるわけではないけど、今年は少し余裕がある。子供達も、代わり映えのない夏休みよりは喜ぶだろう?」
「あー・・・、そう」
「でも、そうなると、俺はお前に何かあったとき、駆け付けられない。だから、お前も一緒に」
「もういいよ」
どうでもいい、そう吐き捨てて、
結城は風呂上がりの、まだ濡れた素足のままでワインセラーへ向かった。
適当に選び、その瓶のままで酒を煽る。
賀来は何か言おうとして、けれど何の言葉も紡げずに俯いた。
部屋の空気が、凍りついたようだ。
沈黙が続く。
「お優しい神父様は、俺なんかよりガキ共のほうが大事、そういうことだろ?」
「どうして、そんな事を言うんだ」
伝わらない想いに、賀来は唇を噛み締めた。
孤児院を預かっている神父の立場として子供たちを思う気持ちと、
愛している者を想う気持ち。計りにかけられるわけがない。
子供たちだって大事だが、結城だって大切だ。だからこそ、いっそ傍に居て欲しいとキャンプに誘った。
だというのに、伝わらない。
彼は常に、自分だけを見ていろと強要する。
神父として子供たちに接している姿を見、あまり良く思っていないばかりか、
ミサで出会う人々や、信徒たちの家庭訪問など、神父として当然の役目を全うしていることすら
彼の怒りを買うこともよくあった。
大切な予定がある日に、わざと仮病を使って賀来を呼び寄せては、
悪魔のように妖艶な表情を浮かべて身体を求めることなどしょっちゅう。
確かに、賀来にとって、結城の存在は、心の大半を占めている。
出来ることなら、ずっと結城の傍にいてやりたい。けれど、残念ながら、賀来の想いに反して、
結城の心は奔放すぎた。
他人は束縛するくせに、束縛されるのが許せない男だった。
だから賀来は、少し離れた場所で彼を見守り、
時に手を差し伸べてやることしかできなかった。
「とにかく、その話は終わり。早くシようぜ」
「結城。まずは話を聞いて・・・」
「・・・あんたがしてくんないなら、他いくけど」
「っ・・・」
絶句する。
言いたいことは沢山あった。
子供たちと彼への想いはまったく違うものだとか、お前が心配だから共に行きたいのだとか、
折角の二人きりの時間、欲に身を任せる前に今後について話をしたいだとか、
とにかく一気には浮かばない程沢山。
けれど、今、彼を捕らえなければ、きっと彼は離れていくだろう。
それも、嬉々として、だ。
お前が相手をしなくとも、相手など山ほどいるぜ、そう唇を歪ませて哂う結城に、
賀来は逆らえない。
立場が弱いのは、明らかに彼に執着し続ける自分のほうだった。
「結城、・・・」
唇をかみ締めて、己の愚かさを呪った。
神父としてあるまじき心だ。結城を失いたくない、誰にも渡したくない、など。
もちろん、奔放な彼は、自分の知らないところでは、気まぐれに女を抱いたり男に抱かれたりもしているのだろう。仕方がない。彼を束縛することは、自分にはできない。
けれど、こうして目の前にその事実を突きつけられると、
途端に嫉妬心が渦巻く。
絶対に誰にも渡したくない。こんな触れるほどに傍にいる結城が、
誰かの腕の中にいるなど想像したくもない。
だから、仕方なく手を伸ばす。
結城は妖艶な笑みを浮かべて、賀来を情欲の世界へと引きずり落とす。
せがまれてキスをすると、男の髪を掻き乱すようにして結城は情熱的なキスに溺れるものだから、
賀来もまた止められなくなった。
結城の指先が、賀来のシャツをゆったりと脱がせた。
パサリ、と結城の纏っていたバスローブも足元に落とされた。
「あんたのカラダ・・・好きだぜ」
「・・・・・・」
胸元をぺろりと舐め上げて、結城は賀来の胸に身体を預けた。
素肌の触れ合う感触、ほどよく筋肉のついた弾力性のある賀来の肌が、
結城は好きだった。
高い身長を折り曲げて、顔を埋める。
そこまでで、賀来ももはや限界だった。結城の背をかき抱き、きつく抱きしめる。
嬉々として、結城は引き続き賀来のボトムを脱がしにかかった。
何のためらいもなくボタンを緩め、ジッパーを下げる。
掌で引き出した男の雄は、己と同じく、既に頭を擡げている。
軽くしごいてやるだけで、先走りがくちゅりと音を立てた。
「っ結城、俺は・・・こんなこと、」
「なんだよ・・・今更、野暮なコトを説教する気?」
ひざまづいて、両手で包み込んだ男の雄を己の目の前に掲げる。
見せ付けるように、長い舌で先端をちろりと舐め上げて、上目遣いに賀来を見やれば、
誘惑するような結城の顔を見まい、と必死に顔を背けているのがわかった。
苛々する。
どうせ、最終的には快楽に負け自分を求めてくるくせに、
脆くはかない理性を必死に握り締めている賀来が気に入らない。
神父?そんな肩書きに、意味などない。
どうせ、一枚皮をはがせば、ただの欲深な人間だというのに。
「あんたさぁ、何度俺を抱いてきたかわかってる?」
「・・・それは、」
「今更、だろ?神父のくせに、あんたは俺を抱いたり、殺人に加担したり、子供たちや信徒のやつらに見せている面の皮一枚はがせば最低の人間なんだぜ。もう、つまらない意地なんか捨てちまえよ」
「・・・俺は、神父だから、なんて理由でこんな関係を否定しているわけじゃない!」
「へぇ。じゃ、なんで?」
楽しげに哂い、結城は本格的に賀来の雄に愛撫を加え始めた。
賀来は与えられる快感に唇をかみ締め、結城の髪を握り締める。引き剥がそうとして、
けれど結城が行為をやめることはなかった。
簡単に快楽に屈しそうになる自分が情けなくて仕方なかった。
伝えたい言葉が、彼に伝えたい想いが沢山ある。
だというのに、欲深な行為で結局そのすべてを有耶無耶にしてしまうのが、
賀来にはどうしても嫌だった。
昼には有能な銀行員の顔をし、休日には冷徹な殺人者、夜には妖艶な娼婦と変わる結城の真の心と向かい合い、
できることなら彼の壊れてしまった心を取り戻させてやりたい。
それは、神父として、彼を救いたいという心と、
かつて彼を慕った友として、かつての彼を取り戻したいという心、どちらも混在していたが、
やはり後者が大半を占めているだろう。
そう、結局のところ、自分はかなりの自己中心的な男で、
神父などと名乗るにはおこがましい程に神に尽くさず、公平に人を愛すこともせず、
ただ結城のことばかりを考えている。
どうしようもなく、惹かれる。
この、結城美智雄という、この男に。
唾液をたっぷりと乗せた舌が砲身を何度も舐め上げては、
賀来を見上げ、にやりと笑った。
抑えられるはずがない。
好きなのだ。
彼が望むのなら、すべてを投げ打ってでも、彼のために尽くすだろう。
無論、人の法や倫理に触れないものであれば、だが。
「もう、いい・・・」
「いい?その気になった、ってこと?」
「・・・お前が、俺の話を聞く気がないということはわかった」
「ん、よく気づいたね。俺はあんたが欲しい。それだけだ。はやく、あんたを感じさせてよ」
あんたとのセックスが、一番具合がいいんだ、と囁かれて、
賀来は諦めたように結城の身体を抱きしめ、
そうして背後のベッドに傾れ込んだ。
根負けしたのだ。結局のところ、自分も結城が欲しい。
彼の気まぐれではなく、彼の心を自分だけのものに出来るなら、
きっともう少し積極的になっていただろう。
魅惑的な結城の身体に溺れること自体に、抵抗はなかった。
ただ、身体をつなげれば繋げるほどに、彼の心がわからなくなるような気がして、
それが怖かった。
「結城、・・・俺は、お前が好きだ」
「ん・・・知ってるぜ」
だから、お前に抱かれてやってるんだ、と勝ち誇った顔をされて、
正直呆れた。どこからくるのだろう、この自信は。
少々強めに、手にした彼自身の握りこんでやった。ぁ、と声を上げ、
けれどにやりと笑い、唇を湿らせる。
「俺だって、あんたが好きだぜ?とりあえず、まだ手放す気はないな」
「まだ、ね」
嫌な言葉だと思った。
好きだとか愛してるとか軽く口にするくせに、どうせ結城にとって自分は、
役に立つ道具のようなものでしかないのだと悟る。
身体の相性がいいから、
絶対に裏切らない協力者だから、
神父という立場で時にカモフラージュにも利用できるから、
ただそれだけ。
彼の邪魔になるなら、おそらく彼は未練など何もなく、自分を切り捨てるだろう。
「ということは、いつかは手放すということか」
「ん?そうだな、あんたが俺の敵に回るようなことになれば、仕方がない。」
つぷりと、喉元に爪を立てて、結城はにやりと笑ってみせた。
それは、いつでも殺せるという合図。
賀来は息を呑んだ。渇いた喉を潤そうと、何度も唾を呑み込む。
結城の足が、抵抗なく開かれた。
誘うように腰が揺れ、ほっそりとした腕が賀来自身を捕らえ、そうして己のそれと擦り合わせる。
不覚にも、ひどく甘い、ぞくりとした感覚が背筋を振るわせた。
上気した頬に口付けると、結城の熱い吐息が耳を打つ。
結城の足が腰に絡みついて、離すまいときつく挟み込む。
「ま、あの島の被害者で生き残ったのは俺たちだけだ。仲良くやろうぜ、相棒」
「っ・・・」
甘いキスを絡められて、賀来は顔をしかめた。
蛇のように長い舌が、絡みつく。
甘く背徳的な体液を共有し合い、二人は頭の芯が痺れるような快感に溺れた。
そっと腕を伸ばし、指先を結城の下肢の奥に触れた。
熱く収縮するそこは、早く欲しいと指を呑み込んでさえみせる。
男に慣れ切った身体。
初めては自分だった。けれど、ここまで彼が色狂いになるとは思わなかった。
これも、己の罪になるのだろうか?
「・・・早く、くれよ」
「・・・・・・わかった」
じわりと絶望が胸に広がるのを感じて、
賀来は考えることをやめた。
まただ。結局、己の心に答えも見出せず、ただ快楽に溺れる夜が過ぎる。
腰を抱え上げて、既にやわらかく解れ、濡れそぼったそこに己の雄を宛がった。
心はここまで冷えているはずなのに、身体は欲望に忠実だ。
怒張しきった赤黒い己のそれが、
萎えることはなかった。ぐっと押し付ければ、簡単に結城の内部に呑み込まれていく。
「ぁ・・ああ、いいぜ・・・賀来」
ますます腰に絡まる足に力が篭もり、
更に結城の掌が、シーツに手をつき体制を支える賀来の腕を強く握り締めた。
自ら腰を揺らし、結城は内部に深々と呑み込んでは、身体を引き戻すことを繰り返す。
そうされては、賀来も溜まらない。
もどかしいその動きにどうしようもなく煽られ、
結城の腰を両手で掴み、己の快楽をより貪ろうと激しさを増していく。
男の楔の先端が、結城の中の一番気持ちいい部分に当たる度、
結城は悲鳴のような嬌声を上げた。
気持ちがよくてたまらない、といった感極まった表情。
同性に抱かれるなどという背徳的な状況で、なんて快楽に満ちた表情をするのだろうと思う。
抵抗など、ないのだろうか?
こちらはこれほど困惑し、どうしていいかわからないでいるというのに、
悔しいと思った。
結城はいつだって、こうして、自分から勝手に快楽を引き出し、
そうして勝手に楽しんで、勝手に果てるのだ。
自分の気持ちなんか、まったく考えてなどくれない。
それが、どうしても気に入らなかった。
「あ、あ、がら、い、そこ・・・もっと、突いてっ・・・」
素直に彼の望みを聞いてやるのは癪だったが、
自分もまた、かなり彼の内部の収縮に追い詰められている。
だから、腹いせに、彼の両足を抱え、彼の身体を折り曲げるようにして体重をかけ、
そうして乱暴に最奥を貫いてやった。
それすら苦しさよりも快楽を覚えるのか、
結城は甘い声音をひっきりなしに零し、そうして必死に賀来の首にしがみ付く。
「あ、ああっ、んっ・・・!」
「っく・・・」
ぎゅ、と結城の内部がきつく収縮したと感じた瞬間、
彼は聞くに堪えない程に切ない声音を漏らし、そうして果てた。
どくどくと勢いよく二人の間に放たれる白濁に、
賀来もまた限界を感じる。
だらりと力の抜けた男の身体を再び抱え上げ、己のためだけにラストスパートをかけた。
無論、一度精を放ち落ち着きたい結城は、抗議の視線を向けた。
それを意識的に無視して、無意識に逃げをうつ身体を無理矢理引き寄せた。
「・・・何やってん・・・だ」
「お前だって、勝手に気持ちよくなって、勝手にイったくせに」
「あんただってどうせ気乗りしてなかっただろーが」
「ああ!するわけないさ!どうせお前は俺を玩具にしてオナニーしてるだけだからな!」
「・・・何キレてんだよ」
はぁはぁ、と肩で息をしながら、腰を押し付け叫ぶ賀来に、
うんざりと結城は首を振った。
賀来は唇を噛み締める。衝動的に、己の中の激情を吐露してしまった。
情けない。ただ取り合えず、下肢の疼きだけはそのままにはしておけず、
結局賀来は結城の中で絶頂に達し、彼の内部に白濁を溢れさせた。
最低の気分だ。
相変わらず、結城との間に、心も身体も満たされるようなセックスは存在しないのだと悟る。
吐き出せない想いを、結局なにも吐き出せないまま、
ただただ心の澱に蓄積されていくだけだ。
彼と身体を繋げるたびに、おそらくそれはこれからも続くだろう。
「・・・・・・賀来」
「なんだ」
すぐにベッドを降り、ローブを羽織り始める賀来に、
結城は声を投げかけた。
「あんたはさ、真面目すぎなんだ。もう少し、人生楽しんだほうがいいぜ?」
「一番大切な人間が殺人鬼だなんて、そんな最低の人生楽しめるものか」
吐き捨てて、賀来はシャワー室へ向かった。
ザァザァと鳴る水音を聞くともなしに聞きながら、
結城は気だるい体を柔らかなシーツに預けたまま、サイドテーブルにおいていた煙草に火をつける。
「チッ・・・面倒臭い奴。」
どうせ、他人より短い人生なのだ、楽しまなきゃ損だと考える自分に比べ、
なんと面倒な奴だと思う。
これでは、折角MWを吸って無事生き延びたくせに、かえって不幸ではないか。
自分の好きなように生きて、好きなように死ぬ。
自分は、自分たちの人生をめちゃくちゃにしたMWを手に入れ、
世界をめちゃくちゃにしてやりたいと思って生きている。
きっと、それが生きがいなのだろう。
それでは、賀来は何が生きがいなのだろう?
神父となって引き継いだ、あの孤児院?子供たちに慕われ、やさしい神父様と敬われることか?
ぎり、と結城は唇を噛み締めた。
あんなガキ共が賀来の生きがいだというのか?
許せない。賀来は、死ぬまで俺のものだ。
あいつは俺といて、俺のために生きて、そして死ぬのが生きがいでなければならない。
「賀来」
未だザァザァと音の聞こえるシャワー室に向かって、叫んだ。
反応はなかった。当然だとは頭の片隅で思ったが、それで諦めることはできなかった。
身を起こし、そのままの格好でシャワー室に歩んだ。
賀来のシルエットが見えたところで立ち止まる。
思わず手にしたのは、テーブルに無造作に置いていた撃鉄。
衝動的に、結城は曇りガラス越しの賀来にそれを向けた。
「賀来・・・お前は俺のものだ。他の奴のために生きるなんて許さない・・・殺してやる」
殺してやる。もう一度つぶやいたところで、
コックをひねる音が聞こえ、そうして水音がやんだ。
カチャリ、と扉が開く音が聞こえたが、結城にはそれがスローモーションのように思えた。
動けない。
銃を構えたまま、シャワー室から出てくる男を迎える。
案の定、男は驚いたように自分を見た。
ああ、気分がいい。
彼が自分を見つめていてくれることが、とてつもない快楽を沸き立たせる。
「・・・結城、・・・」
「俺の為に生きろ、賀来」
銃を掌に握り締めたまま、
結城は再び腕を賀来の首に絡みつかせたのだった。
end.
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