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「聖夜。」



12月、24日、夜。
神の子イエスがこの世に降誕した輝かしい時。
こんな時くらい、静かに祈りを捧げて、心を落ち着かせたいと思った。
無心に、かの人の大いなる御心だけを想い、
その優しさを噛み締める。
瞳を閉じれば、今ここで、何気なく吸っている空気にさえも、
神性を感じられる時。
そんな神聖な時間は、けれど案の定、
とある青年の登場でいとも簡単に霧散してしまった。
少しだけ、瞳を逸らした。
神よ、罪深き我らを御許しくださいと。

「賀来。やっぱ、ここにいたのか」
「・・・そういうお前は、確か、約束があると言っていなかったか」

突然の来訪の彼に、本当は少し驚いていた。
自分がクリスマス・ミサの予定を話した時、結城は別に予定がある、と、
なにか女性との約束があると言っていたはずだから、
彼のことだから、当然一晩過ごしてくると思っていたのだ。
今更、そんなことでいちいち嫉妬するつもりはない。
彼を束縛できないのは、自分が一番よくわかっている。

「約束?ああ、あるさ。お前との逢瀬ってヤツがさ」
「・・・っ」

耳を塞ぎたくなる甘い言葉。絡みつく腕。淫蕩な表情。
唇の紅さを思うだけで、先ほどまで静めたはずの心がざわつく。
ひんやりとした空気と、彼の熱の温度差が、
ひどく興奮を覚えた。
抱き締める。
抵抗など、意味がないことぐらいわかっていた。
堕ちたのは、自分だ。
神よりも、愛する男を選んでしまった。彼の為に生きて死ぬことを誓った今では、
こんな場所でこんなことをするのにも慣れてしまった。
こんなにも穢れた、罪深き獣に、
神はなにを思うだろう?
今から始まるであろう背徳的な行為を思い、
賀来は自嘲の表情を浮かべた。

「・・・うわ、神父さま、積極的」
「抱かれに来たんだろう」
「よく、わかっていらっしゃる。―――てーか、クリスマスの夜っつったら、コレしかねぇし?」
「・・・お前も、たまには心安らかに祈ったらどうなんだ」
「なんで」

そんなめんどくさいコト、と結城が告げるのも構わず、
肌に触れた。多分、今日はどこかおかしい。
神父のくせに、そこらの恋人同士のようにこんな聖夜には交わりたいとでも
思ってしまっているのだろうか。呆れ果てる。
結城の背の滑らかな肌を撫でながら、賀来はキリストを見上げた。
人間の、こんなくだらない罪すら背負って、
火に架けられた御方。
なぜ、そんなにも穏やかな表情を浮かべていられるのだろう?
何にも心乱すことなく、静かに生きられるのならば
どれほど幸せだろうと思う。

「フフ・・・賀来、緊張してるな?俺とヤるのが久しぶりだから?それとも・・・カミサマの前だからか」

微かに震える手のひらに気づかれたのだろう、
結城は楽しげに、歌うようにそう告げた。
結城にとって、神様なんてまったくどうでもいい存在で、
きっと信じてもいない神に仕える自分を馬鹿だとすら思っているだろう。
ムッとして、性急に衣服を緩め、下肢を露出させた。
結城は、自ら片足を賀来の腰に絡め、そうして敏感な中心部を男に押し付けた。
はぁっと熱い吐息を零す。
もう半勃ちしているそれは、賀来の手に包まれたいと
必死だ。
片腕を賀来の首に、片方は賀来の掌を辿り、指を絡めて己の中心に誘う。
バランスを崩しそうになって、
賀来は慌てて結城を抱え、膝立ちになった。
ひとしきり互いの唇を味わって、結城は賀来のそれを捕えたまま賀来に背を向ける。
背後に手を回したまま、額を床に押し付けるその様は、
まるで懺悔をしているようだ。
罪深き己を許して下さい、とでも言わんばかりの格好。

「結城、」
「俺も、一緒に謝ってやるよ。」

息を弾ませ、そう告げる結城は、
ひどく淫乱で見ていられないほどだと思う。
自ら己のそこを拡げて、侵入を誘うその姿を目の前に差し出されて、
理性を崩さない男はいないのではないか。
ましてや、結城ほどの美しい顔立ちと肢体を持つイキモノであれば―――。

「あっ、あ―――・・・、イイっ・・・」

煽るような嬌声に導かれ、賀来もまた結城の腰を掴んだ。
ズプリと音さえする内部は、まるで女のように濡れていて、
そうして絡みつくようなキツイ刺激に唇を噛み締める。
深く押し入る度に、結城の表情は快楽に歪み、更に強く冷たい床に押し付けられた。
ぱたぱたっと興奮し切った結城の前から先走りが零れた。
それを手に掬いあげて、下肢とは違ったリズムで擦り上げてやれば、
快楽に煙る瞳からは一筋の涙。
透明なそれに、罪悪感と背徳感が一気に背筋を走り抜けた。
何を―――、しているのだろう、と。
腰を揺らし、最奥を貫く度に、漏れる甘い声音も、更に激しさを増す。
狂いそうになった。
頭がおかしくなって、何も考えられなくなって、
次に願うのはきっとけがらわしい欲望。
もっと、彼のすべてを自分のものにしたいという欲。
自覚した瞬間、
賀来は背後から男の背を抱き締めた。
結合部がひときわ深く貫かれ、
結城はあまりの充足感に再びアアッと鼻にかかったような声をあげた。
元々ひとつだったものが、分かれ、そうして再び一緒になった様な。
片割れを漸く見つけ悦ぶ身体は、
おそらく賀来にも、結城にだって止められない。
噛み付くように肩口にキスをされて、結城は口元だけ甘く歪ませた。
そう、これだ。
自分が欲しかったもの。
他の誰と交わっても感じられない、満たされた感覚。
賀来と交わって、彼のすべてを胎内に収めて初めて、
快楽”だと感じられる瞬間。
自ら腰を揺らせば、ぐちゅぐちゅと水の弾ける卑猥な音が内部から溢れてくることすら
心地良かった。

「ね・・・賀来、いいだろ?」
「・・・ああ、最高だ」

最高だ、結城、最高だよ・・・としきりに言い聞かせる賀来を見やれば、
こちらもぼろぼろと涙を零していて、苦笑した。
ああ、そうだ。ただただ快楽を追うだけの自分とは違って、
この男は。
この男は、快楽を覚える自分にも、こんな行為に溺れる自分にも嫌悪感を感じてばかりなのだ。
抗えないくせに、後悔だけを心に溜め込んで。

「―――可哀想な、奴」
「結城・・・違う、違うよ、可哀想なのは、」

お前だ、結城。
そう、吐息が呟くと同時に、繋がれた箇所が激しく擦られる。
指先1本、爪の先1本まで震えるような、痺れるようなほどの快感。
脳髄が灼けそうになる程。
ああ、サイコー。
キモチヨくて、何もかにも忘れられて、
そうしてこれほど心が満たされる瞬間など、他にはない。
ふと、視界に入ったカミサマに、
結城は笑った。

主よ、ありがとうございます。
何もかもを失った自分に、こいつを遺してくれてありがとうございます。
そう、そして、願わくば、
これからも、とこしえに彼の傍にいられますように。

馬鹿なオネガイだということくらい、
わかっているけれど。

きっと、こんな日ぐらい、許してくれるだろう。
穢れきった行為に身を浸す自分たちを、
穏やかな瞳で見下ろしてくださる彼ならば。

「・・・っは、やく・・・ナカに、欲しいんだ・・・神父さん」
「っ・・・俺も、お前が・・・」

欲しい、と囁く賀来を、結城は極上の笑みを浮かべて受け入れる。
内部で男の精が弾ける瞬間、
結城もまた身体を震わせ、べっとりと床を白濁に汚した。

ハァハァと息を荒げる中、
それでも下肢を繋げたまま唇を重ね、そうして強く抱きしめて熱を感じる。
互いの間の布地が煩わしいと思った。
裸で抱き合って、融け出すほどに肌を重ねて、
そうしてひとつになる。
そう、まだまだ、こんなものでは足りないのだ。
達した余韻に浸ったまま、
結城は尚も誘うように賀来の首に腕を回したのだった。





end.