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「乱れ桜の舞う下で。」





それはまさに、奇跡のようで。



怜司はただ刻も忘れて、その姿に魅入っていた。

季節は春、そろそろ草木も芽吹く頃か、という早春の時期に、
今が盛りであるかのように満開の様相を見せる桜の木。
それは怜司の家を囲むように植わっているのだが、
あまり世話を焼いている、というほどのことはしていないはずなのに、
何故かこの一帯の中では一番早くに咲く、と言われていた。

そんな生命力豊かな桜の木の裾に、ギンコがいた。

木に凭れて、目を閉じ、静かな寝息を立てている。確か、桜の木の下は蟲も多く棲みついていて、
危険も多いのだと聞いたことがあるのだが、
それにしては無防備なかれの姿が、何故か微笑ましい。
起こす気にもなれず、ただ静かに近づくと、
気配を感じたのか少しだけ身じろぎをした。起こしてしまったのかとはっとする。
しかし、どうやらそれは眠りを妨げるものではなかったらしい。
また静かに寝息を立て始める彼にほっとして、
怜司は彼の隣の特等席に腰を下ろした。
この木は、家の裏手にあるものだ。村人たちが桜を見物にやってきても邪魔される場所ではないから、と
怜司は照れくさい自分に言い訳をするように心の中で呟く。
そうして、ゆっくりと瞳を閉じれば、
隣の男の微かな寝息と、あとは時折聞こえる風の音が耳に届くだけで、
本当に、時が止まったようだった。

もう、何日もしないうちに、また遠くへ旅立ってしまうであろう存在。
半年、いや、下手をすれば1年以上も顔を合わせることがないかれがこうして傍にいるのは、
それ自体が奇跡のよう。
そんなことを考えていると、ふと、彼の顔が見たくなった。
今は閉じられている、人間には有り得ない色の瞳と、
こちらもまた目にすることのない純白の髪。
前髪に隠された左目には、ぽっかりと開いた眼窩が深い深い闇を映し出していて、
そんな彼の不可思議な気配に心を惑わされたのは自分だけではあるまい。
瞳を開ける。そうして、彼のほうを見ようとして―――

「・・・っ」

固まった。
左肩には、重い気配。微かに香る桜のそれと、凭れ掛かる男の宿す熱。
意識した途端、なぜか恥ずかしくなり、抗議しようとするも、よくよく見れば男はいまだ眠りの中。
動けない。息を殺す。少しでも動けば、彼を起こしてしまいそうだったから。
起こしたくなかった。
ずっと、いや、出来るだけ。このままで、いたかった。

だが、しかし。
風が。

「・・・ん・・・」

ザザ、と頭上を巻いた風が、
奇しくも眠っていた男を目覚めさせてしまった。
それは、名前の通り、怜司の心などどこ吹く風で、
怜司は仕方なく、ゆっくりと目を開ける男の顔を見下ろした。
周囲には桜、頭上から散った花びらが絨毯のようで、
きつい花の色香すら漂うよう。
そんな、どこか現実離れした世界の中、
男は漸く身を起こしていた。

「・・・あれ、俺、寝てた?」
「ああ。もう、ぐっすりと」
「んー」

寝ぼけた頭でひとつ唸って、そうして懐からいつもの蟲煙草を取り出す。
知り合ったばかりのころは気になって仕方のなかったそれも、
いつの間にか慣れてしまった。今では、無ければどこか寂しいほど。
だが、火が点され、煙が上がったと思えば、
やはりそれは風に流され、すぐに消え失せてしまった。
ギンコが、苦虫を噛み潰したような顔をするのが、
どうにも、おかしかった。

「・・・なんだよ」
「いや。ほんとうに、よく寝ていたな」
「起こせよ。趣味悪ィな」

ち、と小さく舌打ち。
それすら嬉しく思えてしまう、この心をどう表現すればいいだろう。
きっと自分は、彼が傍にいれば、それでいいのだ。
それだけで―――

「んっ」

当然のそれに、息を詰める。
キスをされたと気づいたのは、背後に押し倒され、縫い止めるように指を絡められた後だった。
温かく、濡れた感触。無論、初めてでもない、むしろ期待すらしていたものだったが、
やはり不意打ちというのは気に食わない。
してやったり、という風に口の端を持ち上げる男を睨み上げると、
怜司は当然のごとく文句を付けた。

「何のつもりだっ」
「んー、やっぱ口寂しいから?」
「・・・のっ・・・」

からかうように笑って見下ろす男のその表情も、
期待しているくせに抵抗してしまう自分も、すべていつも通りで、
懐かしいとさえ思う。だからくだらないやり取りを、何度でも繰り返す。
それを、お互いわかっていたから、
ギンコもまたそれに付き合って、聞き流すようにして怜司の文句を聞いていた。

舞い落ちる、桜の花びら。
時折吹く強い風は、まだ肌寒く、今ここで彼の着物を剥いでしまったら、さぞかし寒いことだろう。
だが、それでも。
無意識のうちに、ギンコは彼の肩口に手を伸ばしていた。
片方の腕は腰回りを彷徨い、そうしてもう片方は胸元を肌蹴させて。
現れた柔肌に、ゆっくりと口付ける。まるで、引き寄せられるように、酔わされたように、
白く薄いそれに色を刻んでゆく。
途端、慌てたように身を引こうとする怜司が可笑しくて、
ギンコは顔を埋めた男の胸元で笑ってしまった。

「ちょっ・・・!寒いっ!!」
「今だけだって」
「馬鹿言うな!!風邪引くわ!!」(・・・すいません、銀魂のノリで・・・)
「あー、俗に言う医者の不養生ってヤツかねぇ」
「・・・・・・はぁ」

自分の考えをそうそう曲げることのない彼のこと、こうなっては彼を止める術などなくて、
仕方なく怜司は出来るだけ肌蹴られた衣服を取り戻そうと努力するのだが、
その代わり、というように他の部分は容赦なく晒されてしまっていた。
風は、止むことはなかった。
男に高められる内部の熱は確かにあったが、それでも外気から受ける寒さが紛れるはずもなく、
怜司は半分涙目になりながら訴えるようにギンコの背を叩く。
怜司と違ってほとんど服を乱していない彼は、何食わぬ顔でキスを続けていて、
下肢のあたりを彷徨っていた身勝手な手のひらは、
今度は抵抗するために立てていた男の膝を割り、半ば強引に怜司の脚の間に己の身体を滑り込ませていた。

「おいギンコ・・・本気・・・か?!」
「本気じゃないほうがいいって?」

さも意外そうに眉を持ち上げて、ギンコは怜司の身体の芯に手を伸ばす。
無遠慮な手に内股を探られ、
いいように己を荒らされている男は怒りと呆れが混じったような複雑な感情を抱いた。
どう考えても、悪いのはこの男のほうだと思うのに。
自分の勝手なペースに人を巻き込んでおきながら、こうなったのはお前のせいだろ、と言わんばかりの態度。
やはり、気に食わない。
ましてや、こんな寒い風が吹く外で、
今回ばかりは流されるのは御免だった。

「いいに決まってる!いい加減離せっ」
「へー。」

しかし、既に己の総てを手にし、余裕の表情を浮かべている彼に、
自分はどうすれば勝てるのだろう。
しかも、今だに自分の雄は彼の手の中に捕われ、己の下肢は男を挟むように膝を立てているのだ。

「素直じゃないな」
「誰が・・・・・・―――っ!!」

途端、下肢を襲う鋭い刺激。
ギンコが自身を強く握り込んできたことは、いちいち確認せずとも容易に想像がついたのだが、
それに怒りを覚える前に、強い快楽が怜司に襲い掛かってきた。

「っあ!・・・く、」
「すごいな。もう濡れてきた」
「・・・っ・・・」

一気に染まる肌。ギンコの言葉に激しい羞恥を覚えた怜司は、
その白磁の色を薄紅に染め上げる。
まるで、桜の様に。
絨毯のように敷き詰められた花びら達に負けず劣らずの姿態を自分に見せ付ける彼に、
ギンコはやばいな、と口の中で呟き、ぽりぽりと頭を掻いた。

本当のところ、本気かと問われればストレートにそうだとは言えないギンコであった。
正直、本気で行為に及ぶとなれば自分も寒い思いをしなければならない。
元々、どちらかといえばからかうほうに重きを置いていただけに、
怜司が降参すればそれで終わり、のつもりだった。
だというのに、気づけばもう既に怜司は半ば以上衣服を乱し、頬を染め、目尻には落ちそうな程の雫。
己の目の前に晒されているその部分は、もう抵抗など忘れたかのように身を引くつかせ、
これではもう、後戻りなど許されそうにないではないか。

「・・・寒っ・・・」

風が吹き、周囲の花びらが舞い上げられると同時に、
素肌を晒した怜司が身を震わせ、思わずといったように声をあげた。
見れば、折角の滑らかな肌に鳥肌が立っている。ギンコは詫びるようにその肩を抱きしめ、そうして静かに呟いた。

「・・・寒いか・・・?」
「・・・・・・馬鹿」

男の真摯な声音にひとつ文句をつけ、諦めたように肩の力を抜く怜司に、
むしろ自分自身が熱に浮かされそうになる。
彼を寒さから守ろうとぴったりと上身を密着させたまま、
ギンコは再び下肢を探り始めた。
今度は、怜司も抵抗しなかった。ただ瞳を閉じて、与えられる快楽を受け止めようと、
必死に己を襲う羞恥心や恐怖心を押さえつけているようだった。
いつまでも慣れない様なそんな仕草は、
当然のごとく男の欲を煽らせる。意識してやっているわけでもないから、なおさらたちが悪い。
先走りに濡れた手をゆっくりと奥へと滑らせていけば、
怜司はさらに緊張を高められ、切なそうに柳眉を歪ませた。

「・・・ぁ、っ・・・」
「もう、キてんのかよ・・・」

その部分の引き攣れを撫でてやれば、小さく震える男の身体。
それでも、つぷりと第一関節を埋めてやると、すぐに銜え込んでくるそれが可愛らしくて、
キツい内部を丁寧に解し始めた。

「痛・・・っ」
「我慢しろって。すぐよくなる」
「なるか・・・!」

とはいえ、普段は処女のように抵抗の激しいそこを舌で濡らし、
かなり長い時間をかけて解していたのだ。
ただ指で解すだけでは、無理ではないにしろ相手にひどく負担をかけてしまうだろう。
実際、怜司は苦痛に身をちぢ込ませ、必死に耐えているではないか。
だが、かといって、もうほとんど素肌に近い状態の彼から身を離してしまったら、
また寒い思いをさせてしまうことになる。
しがみつくように首に回された彼の腕を離してしまうのも、どこか寂しかった。

「化野、」
「・・・っな、・・・!」

名を呼んで、唇を重ねる。舌を差し入れると、怜司は少しの抵抗を見せた後、
素直に歯列を緩め、熱い舌を受け入れた。互いのそれが絡み、頭の奥がくらくらする程。
だが、もっと感じていたいと思う怜司に反して、ギンコはすぐに唇を離してしまった。
物足りなさに、男の顔を見上げる。

「・・・ギン・・・?・・・―――っ!!」

だが、彼に答えを求めるその前に、怜司の口は予想だにしないモノによって塞がれていた。
怜司は苦しげに眉を寄せた。何故ならそれは、ギンコの指だったからだ。
それも、一気に3本も。強く舌を指で押され、怜司は吐き気さえ覚えた。

「っふ・・・う、んぁ・・・っ!」

乱暴な指は、口内を深く蹂躙していく。彼が苦しげに喘ぐのも構わず、
指の付け根までしっかりと濡らすように水音を立てる。
初めは驚きで何が起こっているのかわからなかった怜司も、さすがにギンコの意図がわかったらしい。
苦しげに寄せていた眉に、今度は咎めるような色を乗せ、
けれど、お前の為だと言わんばかりの男の表情に諦めたように、
仕方なく指に舌を絡ませる。
指と口内に唾液の糸が引く程になって漸く、
ギンコは怜司の唇を解放した。

「っ・・・はぁ、っ・・・のっ・・・」

睨み付ける怜司に、再びキス。汚れた口の端を舐め取り、今度こそ深く舌を絡めて―――

「っん・・・!!!」

ずっ、と最奥に指を押し込まれ、怜司はくぐもった声をあげた。
痛いと、辛いと声にだして訴えたいのに、ギンコの唇に塞がれて、何も紡ぐことができない。
それをいいことに、ギンコは濡らした指先を、一気に根元まで押し入れてきた。
いくら先ほどよりは滑りがいいとはいえ、
それで苦痛が幾分か収まるかといったらそんなはずもなく、
ましてや先ほどよりも強引に内部を押し開いていくのだ。痛いのも当然だ。
だが、根元まで押し入ってきたそれが内部のとある部分を爪先で刺激したその時、

「あ、ああっ」

思わずあげてしまった声に、怜司は再び頬を真っ赤に染めた。
当然、ギンコは楽しそうに口の端を持ち上げた。男の内部に押し込んだ3本の指を、
さらに大きく動かしてやる。怜司の内壁は熱く、そして激しく収縮していて、
もう十分な程に柔らかく解されていた。

「そろそろ、入るだろ」
「んっ・・・やめ、っ・・・」

組み敷いた下で最後の抵抗を見せる彼をほとんど無視して、
ギンコは始めて己の衣服を緩めた。カチャリと音を立ててベルトを外せば、
後はもう、後戻りなど出来ない領域。

「あ・・・待っ・・・!」

軽く一、二度扱いて、すぐに天を向いた己の雄を、
指先で解した入り口に押し当てる。
挿入を助けるように両手で蕾の口を押し開くようにすると、
無理な体勢と身が裂かれるような羞恥に、怜司は衣服に顔を埋めてしまった。
しかし、下肢は相変わらず男の目の前に晒したままなのだから、
なかなか面白い光景だ。
焦らすように、収縮を繰り返すそこを亀頭で刺激しながら、
ギンコは衣服を取り上げ、彼の顔を覗き込んだ。

「っ・・・も、・・・」
「化野。」

耳元で囁いて、そうして耳朶を甘噛みする。
訪れる苦痛と快楽に耐えるべく、ぎゅっと閉じていた瞳を開けさせ、
そのまま口付ける。
その時、二人の頭上で、風が凪いだ。
宙に舞う、桜の花びら。そうして、やがてそれは頭上から降り注ぎ・・・―――

「あっ・・・あああっ―――!!」

ぎゅ、と力が込められる、怜司の指先。
ギンコの素肌に爪を立てる変わりに、怜司は彼のシャツに強く皺を刻んだ。
下肢を襲う痛み―――否、快感のために。

「・・・っだ、めだっ・・・、そこ、」
「ああ、ここがイイんだったか」
「っああ・・・!!」

興奮で乾いた唇を湿らせながら、怜司の中に深く身を浸すと、
ギンコは過ぎた快楽に動けずにいる彼をゆっくりと抱き直した。
すると、離したくない、といった風に強く絡みついてくる腕と内部の熱。
頭が、真っ白に染まる。何も考えられないまま、ただ目の前の男の総てを奪ってしまいたくて。

「っ・・・ギン、・・・!」

だから、ギンコは怜司が落ち着くのも待たずに、
己が欲望のままに下肢を動かし始めた。
ぐちゃり、と卑猥な音が耳に届き、怜司はこれ以上ないほど熱を高めた。

「んっ・・・あ、あっ・・・!」

男の大きな手が、強く双丘を包み込む。そうして、ほとんど勢いのままに貫かれる内部。
始めは小刻みに与えられていた刺激が、快楽を増すほどに強く、大きくなっていく。
最初、眉を顰めながらも相手の動きに合わせようと意識を向けていた怜司は、
しかし高められる強烈な刺激についていくことが出来ずに、
いつの間にか流されるようにして男が与える快楽に飲み込まれていった。
しだいに荒くなる吐息と喘ぎ声は、
しかしこちらも止むことのない風にかき消され、
薄く目を開けていた怜司の瞳には、視界を埋め尽くす鮮やかな花の色。
むせ返る様な香りに、意識すら奪われていく。

「いっ・・・、ん、くっ・・・!」
「もっと、声出せって・・・」

ほとんど快感の渦に巻き込まれているくせに、
最後の理性を手放せないでいる怜司に、
ギンコは耳元で囁き、そうして強く唇を噛むそこを解くようにキスを落とした。
絡む舌、貪るようにキスが深くなるにつれて、
繋がる箇所が熱を持つ。溶けそうな程に熱い内部に取り込まれて、
その酩酊感に囚われる。
怜司はというと、内部で圧迫を続ける男の雄に惑わされ、最早まともに言葉すら紡ぐことすらできない。

「・・・あ、つっ・・、い・・・」

つい先ほどまであれほど寒い寒いと言っていた男の、
熱に浮かされたような台詞。
しがみ付かれる腕の力もそろそろ限界のようで、ギンコはずり落ちた手に己の指先を絡める。
ぐっと握り締めれば、怜司もまた上の空ながらも弱弱しく握り返してきて、
二人、高まる熱に身を浸した。

「化野・・・」
「・・・っ、も、無理・・・だっ・・・!」
「ああ、」

眉を寄せ、必死に射精感に堪える彼の震える雄に、指を絡ませる。
悲鳴を上げて逃げようとする怜司に、大丈夫だと耳元で囁いてやれば、
嫌そうに首を振りながらも、それでも指先まで浸透する、痺れるような快感に、
怜司は身を戦慄かせる。
下肢を強く男の節ばった大きな手で擦られ、
もう限界だと訴える瞳はひどく潤んで、曇りひとつない黒曜が快楽に煙る。
目尻に溢れる水滴を唇で吸い上げるようにして口付けると、
一度大きく身体を震わせ、後は押し寄せる津波のような絶頂の感覚に呑まれるのみ。

「ん、あ、っ・・・あああっ・・・!!」

達する直前、ひくひくと口を開閉させるそこを爪先で刺激され、
怜司は脳天を貫くような強烈な感覚と、下肢の最奥を貫かれる重く深い快楽を味わった。
浅い息を繰り返す彼に、ギンコもまた眉を寄せて。
達した衝撃で激しく収縮するそこの感覚に誘われるように、
ひとつ呻き声をあげ、彼の内部に精を吐き出した。
脱力したように、二人して地面に倒れ込む。下にも上にも、視界の先には桜の花。
ピンク色に染まる世界は、まるでこの世のものではないようで、

まるで、・・・奇跡のようで、

「・・・綺麗だなぁ」
「・・・、・・・」

満足げに身体を仰向けて。
ギンコは再び、懐の蟲煙草に火を点した。










「・・・・・・馬鹿者」
「あ?」

ほとんど時が止まったような世界の中、
ぼそりと呟く男の声に、ギンコは首を傾けた。

降り積もる花をそのままにしておいたから、彼の上はほとんど花びらに埋まっていて、
重い身体を無理やり起こそうとする彼からは、はらはらと沢山の桜が零れていく。
白い素肌にそれは思いのほか似合っていて、
ギンコとしてはまだそのままでいて欲しかったのだが、
まぁ、仕方がない。
付き合って自分も身を起こすと、途端、うっ、と顔を顰めて倒れこんでくる男の身体。

「痛ぅ・・・」
「大丈夫か?まだ休んでろよ」

気遣うように声をかけてやるのだが、男はきっと睨みあげて、
すぐにギンコの腕を離れていった。やれやれ、素直じゃないとぼやくと、恥ずかしげに

「お前のせいだろうが・・・」
「何がだよ?」

まったく理解していないらしいギンコに、怜司は脱力するように深くため息をついた。
が、しかし。

「っ・・・」
「化野?」
「なんでもないっ!!来るなっ!!」

近くに投げ捨ててあった羽織と着物をかき集め、逃げるようにして部屋に戻ってしまう。
明らかに態度のおかしい男に首を傾げて、
それから数秒後、ギンコは漸く合点かいったようにあ−、と声を上げた。
すっかり忘れていたのだが、中出しはやめろと言われていたのを思い出して、

「・・・ま、いいだろ」

どうせ、イイ思いしたんだし。
そんな身勝手なことを呟いて、再びギンコは煙草に火を点す。
いつの間にか弱まっていた風のおかげで、今度こそかき消されることなく煙を上げるそれに、
満足げな表情を浮かべる。先ほどと同じように、
桜の幹に背を預けて。
ひらひらと舞い落ちる花びらを見つめながら、よっこらせ、とギンコは腰をあげた。

「さてと。」

ぽんぽんと、ズボンについた砂埃を払って。

「後始末に手闇取ってるセンセイのトコに行ってみるかねぇ」

そんなことを考えなから、
ギンコは急ぐでもなく、怜司の後を追ったのだった。





end.
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