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許したのはお前だけ





日本帝鬼軍の中将である柊暮人は、十人は裕に入れる程の広い浴場で、
肩まで湯に浸かりながら、ほぅ、ため息をついた。
浴場には、暮人以外誰もいない。従者も、世話係もだ。水面に映る自分の顔を見つめ、少しだけ顔を歪めて、タオルでばしゃりと顔を洗う。
生まれた時から柊家の長男として、当主候補として扱われてきた暮人の日常に、
侍従や世話係がいない時間は今までの人生でほとんどない。眠る時すら誰かが傍にいた。
だがもちろん、それは母や父と言った、世間で言うならば無償の愛情を注いでくれるような人間たちではない。
柊家に金で飼われた世話係なのだ。作業は事務的、愛情の片鱗も見えない。それでも数人位は、幼い暮人に笑顔を向け、愛情を注いだ世話係もいたかもしれないけれど。だがそんな記憶はほとんど今では忘れてしまった。
けれど、今は。

「・・・・・・」

ばしゃ、と音を立てて風呂を上がった。
10歳の時から、風呂にだけは従者を入れることを、暮人は頑なに拒んでいる。
誰も見ていない故に、特に隠す必要も感じず、バランス良く鍛えてある精悍な肉体から水滴を落としながら、
洗い場の椅子に座り、液体洗剤を手に取って泡立てる。ボディソープも貴重な資源で、ひとつも無駄にはできない。
そもそも有事の時には、こんなにゆっくり入っていられるわけではないのだ。
久しぶりに時間の取れるこの日、暮人は日々の己の汚れを落とそうと、無心にボディタオルで身体を磨く。
決して綺麗好きなつもりではないのだが、普段より強めに隅から隅まで身体を白い泡まみれにしながら擦っていると、
ガラリ、と音がして、暮人は明らかに驚きの表情を隠せないまま、背後を振り返った。
もう、時間も時間で、誰もが寝ているはずだった。
特にここは柊の人間だけの禁制区域のはずで、ましてや馴れ合いなどしない彼らは、
わざわざ他人が入っている場所に来るはずもない。
だから、入ってきた人物が、自分の中で複雑な位置を占めている男だと知ったときに、暮人は思わず顔を顰めてしまった。

「うっわ、さすが柊家様。すんげぇ風呂」
「・・・一瀬グレン。お前がなぜここにいる?」

自分も、全身ボディソープ塗れの情けない恰好をしているが、
相手もまぁ似たようなものだ。いくら男同士で風呂とはいえ、先客のいる浴場に入ってきて、
まともに下半身を隠そうともせず、タオルを肩にかけてこの柊専用の風呂場を眺めているのである。
暮人は少しだけ目を逸らした。なんだかまともに見ることができなくて、
そのままどうでもよさそうな振りをして身体を洗うのを再開する。

「ここは柊家のみ使用許可が出ている浴場だが」
「深夜がさ。柊家には専用の大浴場ってのがあって、贅沢三昧なんだ、って言ってたんだよ。
 ―――興味が湧いたんで、侵入してみた。そしたらたまたまお前がいたもんでね」

けど折角人目を盗んでここまで来たんだ、入らせてもらうぜ、と肩を竦めて、
次の瞬間、ばしゃ、と音がする。
はぁ〜ったく広いなぁ〜ずりぃぜ柊家。そもそもこんなに広い浴槽に湯張るとか、水の無駄遣いだろぉ?
くどくどと文句を言い始めるグレンを無視して、暮人は再び己の作業に集中する。
が、

「でもさ。お前、従者の1人も風呂の世話させてないわけ?」

お前くらいの地位のやつなら、背中を流す従者の1人や2人くらいいるだろ、と
広い浴槽に手足を拡げて、グレンは暮人のほうを見やる。暮人は一瞬身体を動きを止めただけで、
再び身体を洗い始めた。
湯を貯めた桶で、身体の泡を洗い流す。男の肌が晒される。
決して色白ではない、ほどよく灼けた、がっしりと筋肉のついた肉体。
その肌には、しかし普段は誰にも見せない深い傷跡がそこここにある。グレンは目を細める。
暮人の身体は、見たことがないわけではなかった。
これでも、グレンと暮人は、それなりに身体の関係がある。もちろん、2人の間に、恋愛感情を挟む余地はない。
始まりは、ただの取引めいた関係。
だがそれでも、代償に、とグレンは暮人の身体を求め、暮人はそれを拒まなかった。
その時点で、恋愛感情とはいかないまでも、彼らの互いに対する感情はある程度は伺い知れるというものだろう。
だがそんなグレンも、暮人の裸体をまじまじと見ることはあまり機会がなかった。
第一、自分たちがセックスをする、となると大抵は激情を孕んだ即物的なものになるため、
衣服を全部脱ぎ捨てて抱き合うことなど、ついぞなかったのである。

「・・・お前、結構身体に傷、あるんだな」

マジマジと見つめているらしいグレンに、しかし暮人は無視した。
身体に残った傷は、無論、最近できたものではない。なにせ、鬼呪を受け入れてからというもの、
大半が1日か数日で治ってしまうため、後に残るものなどほとんどないのだ。
だが当然ではあるが、古くからの傷は治らない。
暮人の身体には、背や胸に沢山の鞭で打ち据えられたような長い傷跡や、肉が盛り上がる程の深い傷もそこここについていた。ただの修行で、つくような跡ではない。拷問の訓練の末だとしても、
それ以上に当時の様子は凄惨じみたであろう引き攣れたような傷跡だってあった。
それを指摘され、暮人の紅褐色の瞳が密かに揺れる。

思い出したくもない記憶が蘇った。
それは10歳の頃からの記憶だ。正確には、もっと前だったかもしれないけれど。
度重なる父親からの呼び出しに、素直に自分は足を運んだ。柊家の当主、柊天利は父であるまえに、当主であり支配者であった。逆らうことなど不可能だ。彼は幼い暮人に、屈辱と、一生消えない傷を与えた。
―――お前は、私の操り人形(マリオネット)だ。
柊の名を持つお前は、この柊の為に、その当主である私のために、お前は尽くす義務がある。
従え。理不尽と思うな、それがお前の存在意義だ。私に従え。
何度も何度も、呪詛のように吐き出されたその穢れた声音は、今だって焼き付いている。
暮人が何歳になろうと、彼の命令は絶対だった。
年齢が上がれば、その求められるモノも変わるだけだった。
褥を共にせよという命令は減り、その代わりに、交渉の道具として身体を扱われる機会が増えた。
暮人が、『帝ノ鬼』が牛耳っていた闇社会を悉く嫌っていたのは、
強引に商品として扱われたこともあったからだ。
柊家の次期当主候補。
だがそれはあくまで表向きで、妹の実力は自分などより圧倒的だった。
力を至上とする柊の重鎮たちは、柊真昼を立て、価値の低い自分を嘲る者のほうが多かった。
肉体破壊の限界まで強要されて、狂いそうになったことすらある。
だから今、己の身体にある傷跡は、
そんな苦痛の人生をまさに証明しているような屈辱的なもので、

「・・・なんだよ、黙り込んでんじゃねぇよ」
「お前には、関係ない」

突き放した。いつの間にか自分の傍に来ていて、彼らしからぬ優しい手つきで背に触れてくる彼を、
暮人は無視して腰を上げる。
もう、既にゆっくりと風呂に浸かっている余裕はない。
このまま上がってしまおうと扉に向かおうとして、
・・・不意に、ぐっ、と二の腕を捕まれた。

「っ待てよ、」

グレンの掌が、己の腕を掴んでくる。その力は存外に強い。
グレンは自分よりは細身だが、それでも、まったく華奢な様子はなかった。
むしろその艶めいた夜の色を感じさせる黒髪と、女好きのするそのミステリアスな雰囲気に、
柔軟にしなるバネのような俊敏さを併せ持つ肉体を備えている。
決して男臭いわけではない、けれど不思議な男としての魅力を感じさせる人間だった。
実際、彼の取り巻きの女どもは、報われないと知っていても彼を追うことをやめないのだから面白いものだと。
そんなことを思っていると、
グレンは自分の無反応に更に苛立ったのか、ぐい、と強く腕を引いてきた。
当然、バランスは崩れる。足元はタイルではなく、樹脂系の柔らかめな素材だったものの、
このまま倒れるのはさすがにまずいだろう。さて、どうするか。
すると、グレンは自分の身体を受け止め、抱き留めてきた。彼より自分のほうが身長が高いのに、
彼の身体はびくともしない。さすがだな、そう思いつつも、
暮人はすかさずグレンの足を払った。無防備な彼は、息を呑んで背から倒れ込む。少しでも衝撃を和らげるために、
無意識に腰から倒れ込んだ。二人して縺れ合ったまま、
腰や膝、背や首をしたたかに打ちつける。
はは、と暮人は笑った。
見上げるグレンと、見下ろす自分。はは、いい様だ。

「・・・ってぇ・・・お前、何すんだよ」
「お前こそなんだ。他人の領域にずかずか入り込んでくるな。お遊びは身を滅ぼすぞ」
「俺の前であんな雌のカオ晒しといて、今更、人の領域ねぇ?」

お前には関係ない。そう言い放つ暮人に、グレンは関係ならあるだろ、と口元を歪ませてにやにやと笑う。
強引に頭を捕まれ、引き寄せられた。首に力を入れて拒もうとするが、
彼の腕の力のほうがよっぽど強い。
グレンの上に覆いかぶさるように倒れ込んだ身体を、グレンの両足が嬉々として固定してきた。
抵抗もむなしく、グレンの赤い唇が己のそれに重なる。
包み込むような、甘いキスだ。いつもの、強引に奪い尽くすようなキスではなく、
慈しむような優しさ。暮人は眉根を寄せた。

丁寧な扱いには弱い、と自覚している。
何せ、愛されたことがないのだ。
犯されたことしかない。男の穢れた欲望を、ただただ受け止めてきた。
散々、狭い己の尻にぶち込まれ、出血しては熱を出した。何度も魘されては回復して、
その度に慰みモノにされた。
愛など知らない。
男女が愛を育んで子を成すことは知識として知ったが、
柊では大半が体外受精による実験的な妊娠・出産ばかり行われていた。
だから、女を宛がわれることすらなかった。
まぁもちろん、自分が欲しがれば、女の1人や2人くらい、抱くことなど容易だったかもしれないが。
そんな暇などない程に、暮人は修行に耽っては、その合間に男に抱かれるよう強いられた。

「・・・くれと、」
「んっ・・・は、んんっ・・・っは、んあっ・・・」

何度も角度を変えられ、深々と長い舌で探られる。怯えて縮こまっている舌を、
グレンは嬉々として引き出し、絡みつかせた。互いの唾液が混ざり合い、ぴちゃぴちゃと卑猥な音色が漏れる。
暮人の声音が、鼻に抜けるような甘さをに滲ませる。
浴室は、広いとはいえ、2人の行為の声音を室内に響かせ、
その反響音は互いの欲望を煽った。
暮人すら例外ではなかった。グレンはキスをしながら腰を揺らす。
重なる男性器、互いの濃い色合いの陰毛がこすれ合ってむず痒い感覚が下肢に走る。
グレンの雄が、既にパンパンに膨れ上がっている事実に、暮人は絶句した。
欲情したのだろうか、自分に?
暮人はその、雄々しい眉根を寄せる。
グレンの動きは快楽をダイレクトに刺激してくる。
自分もまた、そのもどかしい感触に耐えきれなくなり、無意識に腰が揺れる。
再び唇が離れ、何度目のキスが重ねられたかわからない。
視線が絡み合い、一瞬、男の熱情を孕んだ紫の瞳が視界に映った。その色合いが綺麗すぎて、
見惚れる。グレンは嗤う。
無防備になった身体を、グレンは蹴り上げた。
体勢が変わる。グレンは暮人の背を床に押し付け、そうして見下ろしてくる。

「・・・はは。やっぱり、こっちのが落ち着く」
「っくそ、退けろ・・・」
「やだね」

何をいまさら言ってんだよ。そう言外に告げて、グレンは改めて暮人の身体を見やった。
先ほどまでは背だったが、今は胸元から下肢まで彼のすべてが見える。
胸元にあるツンと立ち上がったそれが、今は自己主張するように濃い紅色に染まっていて、
グレンはそれを摘み上げた。
暮人は唇を噛み締める。グレンと比べても、自分の乳首が男にしては異様にぷっくりと膨らんでいることを意識して、
必死に首を振る。自覚したくはないが、それでもグレンの指と唇でそれを転がされると、
嫌でも意識してしまう。
何せ、キモチイイのだ。胸元がしびれ、その小さな痺れが下半身に走り抜ける。
グレンの唇は、そこを強く吸い上げる度に、淫猥な水音を響かせる。
舌先で転がされると、もっと強くしてほしいとすら思ってしまう。
身体が震えて、思わずのけ反ってグレンの顔に己の胸を押し付けてしまうところなど、
本当に恥ずかしい身体だ。
屈辱に身を浸す暮人の身体を、グレンはそっと抱き締めてやる。

「も、気はすんだだろう・・・」
「はぁ?俺より、お前のほうがこのままじゃ終われないだろ?暮人?」
「っ・・・ぁ、あ、」

するりと指先で雄を嬲られる。
グレンの左腕が暮人の右足を開かせる。ぐっと内側の柔らかい部分に指が食い込み、暮人は羞恥に顔を染めた。
黒髪の男は、開かされた箇所をマジマジと見つめている。
太ももや下肢につけられた傷だってある。目を細めて、グレンは頭をかがませて、
痛々しい傷跡を舐め続けた。
ねとりとした舌先が何度もそこを這うたびに、暮人の身体は小刻みに震える。天を向いている砲身は、
とろとろと蜜を零して刺激が欲しいと訴えている。身体は、汗か湯のせいかじっとりと濡れているが、
その部分ももちろんそうだった。
先走りのトロリとした液体、先ほどまでじっくりと温められていたせいで柔らかく解れた暮人の秘部は、
既に先を予測して待ち侘びるように開閉を繰り返している。グレンが浅く親指を入れて埋めてやると、アア、とほっとしたような、けれどモノ欲しげな声音が上から降ってきて、グレンは声を上げて笑った。
両足を開かせて、グレンは暮人の雌の部分を両の指で開かせる。
ぱっくりと開いたかと思うと、内部の紅さを晒すことを惜しむように、激しくその場所が窄まる。
先走りである程度は解されていたが、それでもまだ、暮人のそこは狭い。
たびたびローションなしでセックスすると、彼を傷つけてしまうことが、グレンは密かに後悔していた。

「・・・コンディショナーでも使うか」
「っ・・・くそ、最悪だな・・・」
「このままぶち込まれるのと、少しでも解されてから突っ込まれんのと、どっちがいいんだよ」

グレンは酷薄そうな表情で、暮人を見下ろす。
暮人にとって、甘やかされるよりかは、強引に事に及ばれたほうがはるかに精神的に楽だ。
だからこのまま早く終わらせろ、と、そう言いたかった。
口を開き、そうして訴える。
このままぶち込めよ、そう言おうとして、
けれど遅かった。
グレンの指が、どろりとした液体と共に、容赦なく侵入してくる。

「っひ―――…ぃあ、あっ・・・そこ、擦るなぁっ・・・」
「お前の中は本当に狭いなぁ。前立腺も丸みを帯びててわかりやすいし・・・ほら、すぐ濡れてくる」
「っく・・・言うなっ・・・馬鹿・・・ぁ」

グレンの2本の指が、暮人の弱い部分を執拗に刺激すれば、
暮人はもはや快楽に耐える方法もわからずに、簡単に身体を跳ね上げた。
びくびくと震える両足、閉じようとするそれを再度開かせて、グレンは暮人の内部を犯していく。
腸液と先走り、そしてコンディショナーの香りが混ざり合い、くらくらする程。
ぐちゅぐちゅと音がするほど抜き差しを繰り返され、もはや暮人の性器からはどろどろとした白濁が溢れんばかりだった。

「っ・・・お前、すっげぇエロいぜ」
「っあ、や、めろ・・・」

まるで既に輪姦され、何度か内部でイかされた後のような痴態。
呼吸に合わせて白濁を吐き出しているそこに、グレンは己の男の証を宛がう。
先端部分でぐりぐりと刺激して、暮人の入口の襞を思わせぶりに刺激した。きゅう、と締まるそこを、割り裂くようにしてグレンは侵入した。
グレンは暮人の膝を掴んで、腰を進める。すると暮人は、男を抑えようとして両腕を掴んでくるのだが、
それでも、その力は強く、縋りついているとしか思えなかった。
グレンは嬉々として、己の雄を押し込んでいく。
入口の一番辛い部分を挿入すると、あとは楽だった。ゆるりとピストン運動を始める。
中は白濁と体液塗れで、腰を揺らすたびにぶちゅぶちゅと音がする。

「っく・・・ぅふ、んんっ・・・っああ――・・・!!」
「いいのか?暮人?」
「っ・・・イイわけなっ・・・くそが・・・!」
「はは」

なかなか素直になれない暮人を、グレンは声をあげて笑った。
口では何と言おうとも、身体はこんなに感じていて。
グレンの雄を最奥まで呑み込んで、暮人は息も絶え絶えに喘いでいる。
ゆっくりと腰を動かすと、暮人の内部はぎゅう、と縮まり、まるで離したくない、とでも言うかのように肉襞が絡みついてくる。
それをめくりあげるようにして強引に引き抜いて、更に大胆に奥まで貫く。その一連の動作で、
結合部の隙間からは先ほどの白濁が溢れ続けていた。頭がくらくらするほどの色気に、
グレンもまた、乾いた唇を舌で濡らした。
もっと繋がりたい、と暮人の腰を掴んで引き寄せる。
最奥を突かれる度に、暮人は、あっ、あっ、と押し出されるような甘い声音を漏らした。
垂れ流される涎、涙を讃えた赤く腫れた瞳。浅い呼吸、うつろに見上げる瞳は、濁った赤色。

「・・・はは、も、トんでるな」
「っ・・・あ、も、やめ・・・それ以上、はっ・・・!」
「いいぜ、イけよ。どうでこれで終わるつもりもないしなぁ」
「っく・・・さっさと、離せ・・・!」

暮人の腰を持ち上げて、己の膝上に乗せるように、激しく内部を擦りあげる。
ごん、と骨にぶち当たるような音と共に、ひときわ甲高い嬌声が溢れてきた。と同時に、
己の腹の間で息づく暮人の雄の部分が、快感に耐えきれずに欲望を吐き出した。断続的に吐き出すそれは、
暮人がグレンの手の中でイかされた証。
それが激しく羞恥を覚えた。
グレンの肌の間で、己の雄が精液を吐き出させ、彼や自分の胸元にべっとりと張り付いている。
それが直視できないと思った。なおもグレンは、下肢を犯し続けている。

「もう、やめろ・・・」
「おいおい、1人で愉しんどいて、そりゃないだろーよ」
「っう、待て・・・動かすな・・・っ!!

だが、暮人の言葉など、グレンが聞くはずもなく。
グレンは再び律動を開始した。内部を抉る様に、今度は前立腺というよりも、奥を目指して楔を穿つ。
一度達したそこは、きゅう、と締め付けを強くして、男の侵入を拒もうとしているようだった。
それでも、グレンは止められない。それに絶望した。
グレンの腕に爪を立てて、暮人はひたすら耐える。素肌に立てた爪が、彼の腕に朱線を走らせた。皮膚が捲れ、肉が覗く。グレンは構わず身体を倒して、舌を絡める。溢れる体液を舐め取って、そのまま深く唇を重ねて。
そのまま、腰を打ち付けた。
もう既に、容赦はなかった。ひたすら己の快楽をむさぼるように、
彼の最奥を犯していく。
圧迫感は激しくなる一方で、内臓がぐちゃぐちゃにかき回されるような感覚だった。
下肢から発生した電流が、背筋を通って脳天まで駆け上がり、弾ける。
視界は既に白く染めあがっていて、暮人はもはや何も考えられはしなかった。ぐれん、も、やめ、うわごとのように唇を動かすその唇に、耳を近づける。
ん?なんだって?言葉を待つが、応えはない。ただ忙しない呼吸の音が、口元から漏れているだけだ。
乱れた表情、あれほど普段は理性的で精悍で豪胆な偉丈夫も、
自分の前では淫らな姿を晒す。
それが心地いいと思った。いつもお前に頭下げてやってんだ、たまにはお前が奉仕しろ、とグレンはにやにやと嗤った。
この時ばかりは暮人は従順に、腰を合わせてきた。
二度目の絶頂の予感。暮人の雄は、グレンの腹に擦られ、こちらもまた既に張りつめている。

「っは・・・暮人、いい恰好だな」
「っ・・・五月蠅い・・・はやくしろ・・・っ」
「はいはい、暮人様。・・・仰せのままに」

芝居がかった演技も、板についてきた。グレンは何度も何度も己の腰を暮人の内部に擦りつける。
感じる快感が強すぎて、暮人はもはや唇を震わせるだけだ。
声が漏れても、それは掠れた甘い声音だけ。
心地いいと思う。自分の目の前で、これほど堕ちた姿を晒している暮人は、
普段の彼の支配者面からは誰も想像できないだろう。

「っ・・・そろそろ、いくぞ、暮人」
「っ・・・やめ、ナカには出すなっ・・・」
「何言ってんだよ、お前、中のほうがすげぇ好きだろーが・・・っ」

そう揶揄って、グレンは更に責める度合いを強めた。もはや無心に腰を揺らすと、
グレンもまた、押し込んだ先端から、暮人の内部へとびゅくびゅくと容赦なく吐き出していった。
暮人は、その熱さに茫然としてしまう。
中に出されることすら、快感を覚えた。
びくびくと全身に痙攣を起こして快楽を訴える暮人に、
グレンはべっとりと白濁のついた腹を撫でて、そうして己の鉄串を押し込んだまま、
暮人のカオを覗き込む。

「・・・トんじまったか?」
「っくそ、次の任務はこき使ってやるから覚悟しろよ・・・」
「は?待て待て。それは勘弁しろよ」

これでも、通常任務とお前の私事命令で多忙な身なんだよ、とグレンは言えば、
暮人は、ならこんなとこまでお遊びにくるな、と睨みつける。
目元はとろんと潤んでいて、
それを見ていると、またしても引きずられそうだ。
グレンは苦笑して、結合部からようやく腰を引いた。
そのままどろりと溢れてくる体液。ぱっくりと開かされた孔が、名残を惜しむように閉じていく瞬間が、
ひどく卑猥で。思わず見入ってしまう。

「・・・汚れちまったな。今度はわたくしが洗って差し上げましょうか?暮人様」
「いらん。俺は風呂は1人で・・・っん、」

言い募ろうとする暮人に、再びグレンは口づける。
唇だけの、甘いついばむようなキス。けれど、抵抗する気力も湧かない暮人は、
そのまま気だるげに眉を寄せながらも、
グレンのキスに合わせてくる。

「・・・はは。素直でいいぜ、暮人。ついでに、髪も洗ってやるよ。どうせ、さっきの様子じゃ体洗い始めたばっかだろうしな」
「・・・・・・はぁ」

折角の1人の時間が全て無駄になってしまった、と暮人は大きくため息をついた。
だがそれは、ただの照れ隠し。
揺れる赤褐色の色合いは、グレンでなくとも、美しいと思うだろう。

「ったく・・・馬鹿な奴だ」
「お前もな?」

何だかんだいいつつも、唯一、自分にだけ、自らの懐を晒してくれた暮人に、にやけた顔で笑い返してやる。
お前だって筋金入りの馬鹿な奴だよ、暮人。そう心の中でひとりごちて、
グレンは暮人の身体を洗うべく、シャワーの湯を調整し始めたのだった。





end.









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