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執務室の秘事
―――それは、本当に偶然の出来事だった。
とある極秘の任務を任せようと呼び出した一瀬グレンは、けれど今回もいつもと同じように、
予定の時間に自分の執務室に現れることはなかった。
命令に悉く反発する、というよりは、柊の使う専用フロアに近づくのが嫌いなのだろう。
こんな彼でも、自分の直下の部下の中でも一番頼れる人間なのだから笑える話だ。
暮人は仕方がないな、と苦笑して席を立った。
自分が自ら指令を与えに彼の執務室に向かおうというのだ、こんな相手、後にも先にも存在しないだろう。
暮人は自分でも気づかない位、軽い足取りで彼の元へ向かった。
時折すれ違う、自分の顔を知る部下が敬礼をしているのも特に意に介することもなく、
数分後には彼の執務室に到着する。
扉は音もなく開いた。
彼にしては不用心だと思った。後ろ手で扉を締め、鍵を掛ける。
自分としても、今からする話は誰にも知られたくない極秘事項だった。
部屋からは極力漏らしたくない。
そう思ったが。
「…グレン?いないのか?」
暮人は眉根を寄せて、周囲を見渡した。
広い執務室には、けれど彼の姿はない。外に出ているのか、と考えて、
すぐにその考えを否定する。機密の多い彼が、部屋を開け放しにしたまま部屋を出るはずもない。
まさか、仮眠しているのか?
確かに夜だった。日付もそろそろ変わるのではないか、という遅い時間。
だが、元々は自分が命令で呼び付けたはずの時間なのだ、
それをすっぽかして惰眠を貪っているなど、さすがに暮人のこめかみがひくりと震える。
執務室ときっちり分かれている仮眠室の扉を開こうとして、
けれど、不意に取っ手を引こうとした暮人の掌が動きを止めた。
「っな…なんだ?」
声が聞こえてきた。
それも、悲鳴のような、泣き声のようなそれに、暮人は眉を潜める。
聞こえてくるのは、扉の先。つまり、仮眠室からの音だ。
息を顰めて、聞き耳を立てる。規則的に漏れていた声音が、不意に甲高い嬌声に変わった。
『ああああ―――んっ…!』
「―――っ…」
今のは、ひときわはっきり聞こえてしまい、顔を歪めてしまう。
中で何が行われているのかは、はっきりしていた。
誰かがいる。それも、2人だ。
はっきりとは聞こえないが、時折響いてくる男の低めの声音と、ひっきりなしに漏れている吐息と声音。
ごくりと喉を鳴らした。
聞き覚えのあるその声音の持ち主は、既に明らかだった。
柊深夜。
柊の養子。自分の弟。同じく当主候補であった妹の婚約者。
それなりに身近にあるはずの相手だが、けれど今までは大して意識したこともなかった。
単純に、修羅場をくぐりぬけ、勝ち進んだ故に柊家の養子の地位を勝ち取ったのだから
能力が高いのだろうという認識くらいだった。
なのに、今では。
どこか、深夜には構えてしまう所があった。
自分と同じように柊にとらわれながらも、自分よりもはるかに自由に羽ばたいている印象の彼。
実際、養子として蔑まれている彼は、柊の重要ポストとして扱われることもなく、
それゆえにある程度自分勝手に行動することが出来た。
深夜は、かっちりとした柊の枠に収まらざるを得ない自分よりもよほど自由で、
それが時に羨ましいと感じる時がある。
自分が他人に嫉妬するなど、いままで思いもしなかった。
けれど、この胸にわだかまる感情は、きっと彼に対する醜い感情で。
唇を噛み締めた。
そんな深夜が今、一瀬グレンとまぐわい合っている。
『あっ…ダメ、グレン…そんなっ、激しく…』
『深夜、』
「っ・・・」
暗い感情が、ぐるぐると胸の内を渦巻く。
今の時間は、本来ならばグレンと会っているのは自分のはずで。
だというのに、何故、あの男がここにいるのだろう?
怒りとも悲しみともつかぬなんともいえない感情がこみ上げてくる。
誰の目も気にせず、自由に彼の傍にいる深夜。
ましてや彼は今、グレンに抱かれているのだ。あの、鉄串のような熱をもったそれで下肢を貫かれ、
その快楽に彼もまた溺れているのだと思うと、ごくりと息を呑んでしまった。
(…まずい…勃ってきた…)
暮人は、仮眠室の扉に背を預けて、己の下肢の衣服をぎゅ、と握り締めて耐えた。
なまじ経験がないわけではないだけに、自分もグレン抱かれている時のことを思い出してしまう。
あの熱い雄の感触。暮人は唇を噛み締めて首を振った。
こんなつもりで来たわけではなかった。純粋に任務の話を進めるつもりで来たのに、
尚も耳には甘い声音が響いている。
彼らはもはや、絶頂間際のようだ。ひっきりなしに熱い吐息が聞こえ、その合間に悲鳴が漏れている。
おそらく、結合部は充血し、もうとっくにぐちゅぐちゅと濡れているのだろう。
あの、澄ましたポーカーフェイスを装ってばかりいる深夜が、
グレンの前でだけ、緩んだ表情を見せるのを知っている。だからきっと、
ベッドの中でも彼は甘く歪んだ表情でグレンに懇願しているのだろうと思う。
それを想像して、思わず背筋に甘い痺れが走りぞくりと震えてしまった。
部屋の中からは、ドア越しにやはり甘い声音が聞こえてくる。
『もっ…欲しいよ、グレン…奥までっ、来て…っ!』
「…っ…くそ、」
くだらない、汚らわしい。暮人によって一時の肉欲に溺れる行為は、
侮蔑の対象だ。今だとて、執務の最中、穢れた行為に仮眠室を利用しているのなど
罰則を科しても良いくらいだ。今すぐに乱入し、2人して蹴り飛ばしてやりたい位だったが、
同じように浅ましい己の身体がそれを許さない。
それもこれも、全てグレンのせいだった。
こうして自分との約束よりも、恋人との逢瀬を愉しんでいるくせに、
自分にまで手を出した浮気者。もちろん、自分との関係のきっかけはただの取引に過ぎない。
間違っても愛情とはほど遠くて、
それを意識すると胸の奥がじくじくと疼いてしまった。
情けない話だった。
自分は彼に、何を求めているのだろう?
恋人のような甘い関係?深夜のように会いたいと思えばその心のままに彼の元に飛んでいけるような、
そういう自由な関係を本当は切望しているとでも言うのだろうか?
―――あり得ない。
グレンは同志だった。同じ目的で、同じように大それた野心を抱く者。
互いにそれを認識しているだけで充分のはずだった。抗うために自らの欲望を犠牲にしたのは彼も自分も同じで、
ならばそれ以上に求めるものはあってはならないはずで。
「…後で、たっぷり仕置きしてやる…」
なおも耳を貫く深夜の声音に、暮人は顔を顰めながら、下肢のジッパーを緩めた。
壁に背を預けて、そうして立ったまま内部を探れば、
そこは窮屈そうに腫れ上がっていて、暮人が解放すると悦んでその身を上向かせた。既に芯が篭っていて、
そろりと指を絡める。己の雄をこうして自ら慰めるのは、決して初めてのことではない。
けれど、最近はかつてのそれとは意味合いが変わってしまってきている。
もっと昔は、男としてどうしても溜まってしまい、日常生活に支障をきたす場合にのみ自慰で抜く、といった
機械的な作業の一環でしていた行為だったのに。
今は違う。欲望を知らぬ身体が、グレンによって初めてそれを知らされてしまった。
そのせいで、身体が事あるごとに欲を訴えるようになった。
グレンは気まぐれで、暮人が欲しいときにこそ、彼は抜けられない用事が入っていて来てはくれなかった。
まるで、嫌がらせのように。けれど、強引に権力を使って呼びつけて、こんな行為を求めるなど
暮人のプライドが許さなかった。
彼に弱みを握られたくない。元々地位の低い分家として蔑まれてきた彼を縛る鎖は幾つもあったが、
それは暮人個人が振りかざせるものでなかった。そしてグレン自身を縛るものでもなかった。
だというのに、自分はといえば、大切なものも守るものもないようでいて、
いつも彼の視線を恐れていた。
知らない自分を覗き込まれる感覚。意図的に記憶から消してきた己自身の欲望を
引きずり出される行為は、それだけで築いてきた己の立ち位置がガラガラと音を立てて壊れていきそうで。
怖かった。それでいて、彼に作り替えられていく己の身体に、時折感慨を覚えたりもした。
「…グレン…」
結局、自分だって人間なのだった。
その証拠に、機械にはないくだらない感情が、こうして抑制できずに頭を擡げてくる。
今までずっと、柊の世界の歯車として生きてきた。
柊に必要だったのは感情で揺れ動くような欠陥品ではなく、命じたことを忠実にやり遂げる機械であって、
自分もまた、それを求められた。人間でありながら、機械のごとく効率を求めることを、
疑問に思ったこともなかったのに。
それでも、今の己の身体は、己が人間であることを強く訴えてくる。
浅はかな快楽を求めようとしてしまう甘さ。目の前で自分の本当に求めていたモノを見せつけられて、
身体がどうしようもなく疼いてしまう。
「っあ…、…っ、ん…」
熱をもった下肢を、掌で包み込んで扱いた。
根元から砲身を擦りあげ、そうして先端の亀頭をくびれの部分を中心に指で刺激しながら、時折傘の部分を撫でてやる。
簡単に、熱が下肢に集まり、そこは更に膨張していった。内部の芯が太く硬くなり、
開閉を繰り返す先端からはとろりと蜜を零し始める。
いつもより反応が早いのは、今なお耳に響いてくる室内の濃厚な空気を感じるからだ。
暮人もまた、瞳を閉じて思い出していた。
グレンが己を追い詰める時はいつも、抵抗を押さえつけて、下肢を探っていた。
溢れた蜜を、指先で掬っては、砲身を濡らすように。無心に快楽を貪るように指を動かしていくと、
まるで自分の指が、彼にされているような錯覚に陥る。
耳元で、グレンが揶揄かうように笑った気がした。
なんだよ、もうこんなにしてんのか?グレンは嬉しそうにそう言って、暮人の砲身を激しく追い詰める。
もうすっかり天を向いているそれに、暮人は蔑むように嗤った。
「っは…あ、っ…はは…ンっ…」
はやく、早く終わらせたい。
熱の篭るそれを、一番感じる亀頭を中心にぐりぐりと刺激を与えた。
蜜を零す部分に、親指を何度も這わせば、痺れるような強い快楽が脳髄を灼くような気さえする。
息が上がる。熱い吐息を抑えられずに、また時折びくりと身体が無意識に震え、
その瞬間ばかりは鼻にかかったような喘ぎ声が漏れてしまう。
場所が場所であるから、暮人は必死に唇を噛み締めて、早く抜いてしまいたいと指の締め付けを更に強めた。
砲身はすでにべとべとで、このまま射精してしまったら、拭うものもなにもない。
仕方なく、おろしていた下着で己の先端を包み込んで、ラストスパートをかけた。布地ごしの分、
強めに刺激を与えて擦りあげる。先走りのせいで布地が染みを作ったが、もはや今更。
「ん…は、んっ…ぁ、…くそ、…っ!」
ぎゅ、と爪先で壁をひっかく様にして力を込める。立ったままでの行為に、膝がガクガクと震えた。
頭ではどう思っていても、身体は忠実で、
扉の内側でひときわ高い嬌声を上げている深夜の声音に導かれるようにして、自分もまた下肢の欲望を溢れさせた。
はぁはぁと浅い息を零すのに合わせて、白濁が掌の中に吐き出される。
唇を噛み締めて漏れそうな声音を抑え、そうしてべっとりと汚れたそれを拭った。
腰が崩れそうになるのをなんとか耐える。けれど、余韻に浸っている場合ではなかった。
こみ上げる嫌悪感。
自分は、また、何をやっているのか。
欲望に塗れて落ちぶれるつもりなど、まだ暮人にはなかった。
汚れた手を拭って、忘れるように緩めたベルトを締め直し、部屋を立ち去ろうと足を動かした。
もう、これ以上この部屋には居たくなかった。
改めて出直そうと、そう決意して部屋を出ようとすると、
「よぉ、出歯亀。」
「っ、」
ぐっと手首を掴まれて、暮人は顔を真っ赤に染めて振り返った。
気付かなかった。情けないことに。
グレンがいつの間にか仮眠室から出てきていて、にやにやと嫌らしい顔をして自分を見ている。
こちらも、ボトムスの前は緩められていて、誰が見ても今まで行為に耽っていたとしか思えないような
シャツの乱れ方をしている。暮人は目を細めた。
「…執務中にお楽しみとは、いい身分だ」
「っは、お前こそ他人の情事を覗き見して欲情するなよ、変態」
皮肉げに笑うも、暮人の言葉は精彩を欠いている。それどころか、まだ先ほどの余韻のせいか息は上がっていて、
グレンは、ははっ、と声を上げて笑う。
ぐい、と掴んだ腕を引き、暮人の身体を再び押し付けた。
立ち去ろうとた彼の手から、バサリと書類は足下に散る。グレンは気にせずべろりと舌を出して暮人の頬を舐め取る。
「っや、め…!」
「なんだよ、1人で抜いちまったのか?ぐちゃぐちゃじゃねーか」
「―――」
グレンの掌が暮人の前を探った。嫌がって顔を背ける暮人を追いかけるようにしてキスを浴びせ、
悪戯な指先は暮人の緩めた隙間から内部に入り込む。
べとべとになって力を失ったそれを、グレンに気付かれてしまい、暮人は血が出るほどきつく唇を噛み締める。
今の今まで、別の人間を抱いていたくせに。
そんな身体のままで、自分を抱こうとすらしてくる彼が許せずに、暮人は渾身の力で彼を引きはがそうとするが、
やはり果たせない。
グレンは愉し気に笑うばかりだ。
「お前も、俺に抱かれたかったんだろ?だからわざわざここまで来たんだもんなぁ?」
「っ違、」
図星を刺されたわけではなかったのに、羞恥がこみ上げてくる。
グレンは暮人の前を、下半身だけでなく胸元まで緩ませてきた。素肌に噛みつくようにして強く吸われれば、
いよいよ暮人の身体は熱を持ち始める。
男に抱かれる記憶を思い出して、身体が彼に合わせて震えてしまう。
「っ…深夜、は…」
「アイツなら疲れ切って寝てるぜ?なんだかんだで結構長い時間ヤってたからなぁ」
「…頭が野獣以下だな」
「そんな俺たちに欲情して、ここをこんなにしてんのは誰だよ?」
グレンの愛撫は、決して優しいものではなかった。
ぶつけられるのは、常に愛情ではなく欲望。だから今も耳元で囁くテノールに「犯させろ」と懇願されて、
己の欲望も刺激される。下半身に直接快楽としてそれが伝えわった。
ぞくりと震える。グレンの掌の中の暮人自身が、
再び情欲を覚えて先走りを溢れさせている。
「っは…もう、前は充分濡れてるな。じゃ、お前の一番恥ずかしい部分はどうかな?―――尻を俺に向けろよ」
「だ、誰がそんな馬鹿な事…」
「壁に手つけて、尻を突き出せって言ってんだよ。それとも、慣らさずにぶち込まれたいのか?」
俺は別にそれでもいいぜ?と酷薄そうに言われて、背筋に恐怖すら走った。
のろのろと、暮人は彼の言葉通り壁に向かい合って、両腕をついて腰を屈ませた。
グレンの命令に大人しく従う必要など、まったくないというのに。
それでも、疼く下肢を誤魔化すことはできない。
今の暮人は、下肢が疼いてたまらなかった。
前を自ら抜いて、確かに快楽はあったものの、本当のところはまったく欲望が収まっていなかった。
本当は、双丘の間に隠された、己の隠された部分が疼いて疼いてたまらなくて。
それでも、手早くぬかればならなかった手前、己の指で解することもできず、そこはひくひくと震えながら泣いていたのだ。
グレンはぐっと力を込めて、下半身に纏っていた下着とボトムをずり下げた。
「っは、もう、口、開いてる」
「ひ、や、やめっ、」
隠された部分を親指の爪先がぐっと食い込むようにして拡げさせられ、暮人は羞恥に身体を震わせた。
壁に額を押し付け、必死に耐える。内部を覗き込むようにしてじっと見つめられて、膝がガクガクと揺れる。グレンは暮人の下着をべとべとに汚している精液を指先で拭うと、ひやりとしたそれを暮人の蕾の部分に宛がった。
指が、内部に入り込んでくる。異物感に、暮人の身体が戦慄く。
「っひ―――…」
「ああ、そういや久しぶりだからなぁ。すっげぇ狭いな?」
「っや、あ、…やめ、そこ…っ」
ぐりぐりと、奥をなぞられる。内部を襞を押し返すように周囲をぐるりと拡げたかと思うと、暮人の内側の、前立腺の裏を的確に刺激してくる。先ほど吐き出した暮人のペニスが、再び頭を擡げて涙を零した。
今度は誰にも触れられていないから、パタパタと床を汚すだけだ。
それを目にして、暮人は悔し気に顔を歪めた。
「っも、もう、馬鹿、やめ…」
「はぁ?続けて欲しいのはお前だろ?…ほら、こんなに中、熱くなってる…」
「や、やめろ…!!」
グレンはうっとりとつぶやいて、暮人の尻を掴んだまま膝立ちになった。
かと思うと、暮人は己の秘孔にねとりと濡れた感触を宛がわれて、悲鳴をあげてしまう。
壁に爪を立てて必死に耐えた。グレンの熱い舌が、暮人の奥をかき回していく。
指で尻を拡げ、奥へ奥へと侵入していくそれに、
暮人はがくがくと身体を揺らす。強い快楽と、激しい羞恥。グレンに己の全てを強制的に晒されていることが
ひどく屈辱で、だというのに心のどこかでこれを求めていたのだと悦ぶ自分がいた。
グレンに愛されている。
心がなくとも、せめて身体だけでも。
こうして抱かれることで、一瞬でもグレンが自分を見ている錯覚に陥ることができた。
たとえ、彼の心が深夜や、別のところにあったとしても。
今だけは、自分を見ていて欲しいと。
「っは・・・すっげぇ充血してる。たまんねぇ、もう入れていいか?」
「…くそ、勝手にしろ…」
「欲しいくせに。素直になれよ、暮人」
耳の裏をべろりと舐められ、身体が震えた。
重ねられる背、宛がわれる熱塊。息を呑む。指で解していたというのに、それでも内部は狭かった。
グレンの、未だに衰えを知らない楔が暮人の身体をも支配した。
指先、舌先一つ自由に動かせず、震えが走る。言葉を紡ぎたくて、結局快楽に震わせることしかできなかった。
「っぐ…、グレ、くそ…っ、やめ…!」
「なんだよ…気持ちいいクセに。前だって、すげぇ啼いてるぜ」
「っや・・・あああ触るなっ…!」
完全に勃起し、とろとろと蜜を零しているそれに、グレンの指先が絡みつく。
それは、自分で扱いていた時よりもはるかに強い感覚だった。
自分の感じる部分を、敢えて避けて欲しがらせる絶妙のタイミングと、的確に奥を貫いてくる腰つき。
漸く欲していたものが与えられ、暮人は思わず漏れる声音を抑えられなかった。
鼻にかかった声音、今、自分もグレンに愛され、そうして喘がされている。
「っ…はは、すっげぇ絡みついてくる。
そんなに欲しかったのか?襞が捲れて、すんげぇエロい色してるぜ?」
「っあ…や、やめろ、いうなっ…」
グレンの卑猥な言葉すら、己の耳を侵してくる。
意図的に言っているのはわかっていても、耳がそれを捉える度に、全身が羞恥に真っ赤に染まるのがわかった。
誰にも見せられない姿だった。グレンに、自分のすべてを捕らわれている感覚。
屈辱的で、だのにひどい快感が全身を支配した。
体内を流れる血流は沸騰し、思考回路がまとまらない。ただ、つながる箇所から覚える惑乱されるような快楽と、
密着する箇所からグレンの熱を感じる。布越しでもその感覚は変わらなかった。
グレンの腕の中で、ただ嬌声をあげるだけの存在になってしまう自分を、頭の片隅では呆れたように見つめている自分もいた。欲望に塗れて、本来の目的よりも一時の快楽に溺れて、一体何をやっているのかと。
けれど、すぐにグレンに与えられる感覚に押し流されていく。
この時ばかりは、何もかも忘れて、愛されている感覚だけを貪る獣と化していた。
それがひどく屈辱で、なのにどうしようもないほど気持ちいい。
「っあ…グレ、も、イかせ…っ!」
「お前も大概、淫乱だな?」
「っ誰の、」
誰のせいだと訴えたくとも、舌がもはや回らず。
ただ、甘い声音ばかり漏らして、下肢がどうしようもなく震えた。
グレンの腰つきが乱暴なくらい激しくなり、最奥まで抉る様に何度も貫かれた。
肌と肌がぶつかり、乾いた音が部屋中に響き渡る。足元は暮人の先走りでどろどろ。グレンもまた、
何度目かの性衝動に眉根を寄せる。
「…いくぜ暮人…全部受け止めろよっ、」
「っあ…中、に…?!くそ、最悪だ…っく、あ、ああっ…熱っ―――!!!」
「ほら、たっぷり味わえ・・・っ!」
腰を両腕で掴み、そうしてグレンは呻くように内部に己の精を吐き出した。
内部で、飛沫が弾ける感覚。叩きつけられる体液、じわりと奥が熱くわだかまるような感触だ。
けれどグレンは眉根を寄せてひたすら耐えた。奥の奥まで注がれて、暮人は放心したように壁に体重を押し付ける。
尚も吐き出される精液を受け止めながら、暮人も2度目の精を吐き出した。
ぼたぼたと壁と床が汚れた。
ここはグレンの執務室だと、今更ながら理解する。
「っは…よかったぜ、暮人」
「っくそ…」
「そう言うなよ?お前だって欲しかったんだろうが。誘ったお前だって同罪だよ」
グレンは腰を引いた。ぐぽ、と音を立てて雄が引き抜かれ、内部から白濁が溢れてきた。
とろりと太い股に垂れるのを、グレンは見つめる。
指先でぬぐい、そうしてもう一度暮人の衣服を身につけさせてやった。
相変わらず、衣服は傍目にはわからないものの、内部がぐちゃぐちゃだった。
「…で、お前本当に何しに来たんだよ?まさか抱かれに来たわけじゃないだろ」
未だ自分で動く気力の湧かない暮人に、グレンはゆっくりと乱れた上着のボタンをハメていく。
きっちり軍服を身に着ければ、後は情事の名残は、暮人の頬が上気し赤いことだけだ。
覗き込めば、少しだけ咎める視線が、グレンを射抜いた。
グレンは首を傾げる。俺、なにかしたか?もちろん、深夜を抱いてたって話はなしな。
当然だった。グレンが自分を抱いてくれているのは、自分たちの間に一切の恋愛感情を挟まないからだった。
もし、彼が本当に好きでいるはずの深夜に嫉妬している、などとばれたら、
グレンはきっと、自分との関係を続けてはくれないだろう。
だから、これで充分だった。これ以上、彼に求めるものは何もなかった。
後は、自分たちのき共有する目的のために、協力してくれるのならそれで十分だ。そう、思った。
暮人は、先ほどまでの行為でかすれた喉で、なんとか言葉を紡いだ。
「…とっくに過ぎてる」
「ああ?」
「俺が呼び出したのは12時ちょうどだ。…命令を反故にしたツケは払ってもらうぞ、一瀬グレン」
「…っはぁ…?まった、今日何日だ?」
「8日」
「…まさかお前、12時って昼じゃなくて夜かよ」
「…昼だと思ってたのか?」
「まじかよ…」
頭を抱えて途方にくれているグレンに、けれどは暮人は内心、少しだけ安堵していた。
彼は、決して自分との約束を踏み倒し、他の男との逢瀬を愉しんでいたわけではなかった。
単純に、勘違いだった。
そう思うだけで、多少は荒れた感情が収まってくる。
「っは…なんだ、勘違いか…馬鹿だな、グレン」
「わかりにくい時間に呼び出すんじゃねーよ馬鹿が。ったく、気を揉んで損したぜ」
肩を竦める男にふ、と笑って、暮人は実を起こした。
まだ、全然本調子ではなかった。内部を強引に貫かれた尻はずきずきと痛んだまま、膝もまともに立てないレベル。
それでも気力だけで立ち上がった。
さすがに、長居するわけにもいかない。
第一、深夜だってあのまま朝まで目覚めないとも限らない。
万一目覚めて、くだらない修羅場になるのはごめんだった。
「…もう、行くことにする」
「ああ。…大丈夫か?」
「余計な心配はするなよ、グレン。とにかく今夜、もう一度俺の部屋に来い。今度こそ任務の話をする」
「へいへい。お手柔らかに頼むぜ」
肩を竦めて、グレンはもう一度暮人を引き寄せ、口づけた。
触れ合うだけのキス。動揺する暮人に、グレンはにやりと悪戯っ子のような顔を見せる。
「続きはまた今夜な」
そう言って意味深に笑う彼に、再び頬に熱が上るのを必死に耐えながら、
暮人はグレンの部屋を後にしたのだった。
end.
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