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紅の欲望
鬼は目覚めると、まずは己の肉体を確かめた。
手指の自由に動く感覚や、足裏の床を踏みしめる感覚。両腕を振り上げて、大きく伸びをする。
ああ、身体があるということは最高だな。
鬼は爛々と輝く紅い瞳で衣服を脱ぎ捨て、シャワールームへ向かった。
鏡で己の身体を写す。
陶酔する。暮人の身体。俺の身体だ。がしりと筋肉のついた男らしい肉体と、身体の内部の疼くような感覚。
欲望が溢れてくる。暮人の欲望。彼が普段押し隠している欲は、今は自分の手の中だ。
身体があるということは素晴らしい。
肉体があれば、どんな欲望でも叶えることが出来る。
食欲、性欲、支配欲、破壊欲。
柵のある世界をぶち壊すことだって、力で他者を支配することだって出来る。
「・・・ふむ」
何から満たしてやろう、そう考えるのも悦楽以外の何物でもなかった。
ふと、己の身体に目をやった。
欲望を隠せない肉体は、下肢の疼きを抑えられなかった。
男の逸物。この柊暮人という男は、とても素晴らしい肉体を持っているというのに、女の1つも抱こうとはしなかった。それどころか、己の肉欲というものを嫌悪すらしていた。
まったく、なんと勿体無いことか。
高い地位と、圧倒的な力。人間とは不思議なものだ。
叶える力があっても、己の欲望自体を嫌っているのであればどうしようもない。
だが、今はこの身体は自分のもの。
我慢するという芸当は鬼には出来ない。逸る気持ちを抑えて、
脱ぎ散らかした軍服を身に着けた。
ボトムを履き、Yシャツすら身に着けずに上着を着込む。
女を抱くのも男を殺すのも快楽だが、今はそれ以上の愉悦を知っている。
なにより、暮人自身が一番それを望んでいるのだから。
暮人の姿をした鬼は、足早に新宿軍本部の階下、一瀬グレンの執務室へと向かった。
すれ違う一兵卒たちには目もくれない。己の軍服の長い裾を翻し、暮人は走る。
「っ・・・暮人?」
バン、と音を立てて室内へ入ってきた暮人に、グレンは驚いたように目を見開いた。
扉が壊れる程に乱暴に締められる。強引にこじ開けた封を直すこともしない。グレンは目を細めた。
紅い。真っ赤に染まった瞳。普段の褐色の入り混じった色合いではなく、ギラギラと眼光を放つルビー。
「・・・また、お前か」
「会いたかったろう?」
執務机に手をついて、身を乗り出す。勢いで机の書類がはらはらと床に舞ったが、もちろん暮人は気にしない。
腕を伸ばし、グレンの襟首を掴んだ。唇を寄せる。
普段、暮人はこんな積極的にグレンを誘うことはしない。
いつもいつも己の欲望を必死に押し隠していて、逢う度グレンはそれを透かし見る。
唇が触れる瞬間に、グレンは呆れたようにため息をついた。
右手で引き出しをあける。
並んでいるのは幾つもの注射器の数々だ。
鬼呪抑制剤。
暮人と同じように強大な鬼を宿すグレンは、鬼に侵食された半身を持っている。
彼のそれは、暮人以上に侵食がひどい。呪術自体が未完成だった頃に触れた鬼の魂が、今なお彼を苛んでいる。
けれど、グレンはそれを悲観することはなかった。
ただただ、それを出来る限り制御して人間性を失わぬよう、研究と鍛錬を重ねてきた。
もちろんそれでも、いつかは鬼になる。欲望を抑えられず、ただただ自己の快楽と野心のために手段を選ばない鬼と化すのだ。
圧倒的な力を得る代わりに、半身を犠牲にした者にしかわからぬ不安と恐怖。
グレンと暮人が時折寄り添うのは、唯一その闇隠さずに済む同士だからだ。
「おとなしく眠ってられねぇのかよ」
「そういうなよ。俺はこいつの半身だぞ?こいつの半分の時間を過ごす権利が俺にはある。俺は暮人だ」
「・・・ああ、そう」
間近で裂けるようににやりと口の端をゆがめる暮人に、グレンは容赦なく右手を振り上げた。
紅い唇、開かれた洞から覗く濡れた真っ赤な舌。舐められるようにしてキスが触れ合おうとするが、グレンは逃げることはしない。
そのまま、右の手の中にある注射針を突き刺す。―――いや突き刺そうとして、
がしり、と。
腕を掴まれた。
グレンは目を見開く。暮人の掌が、己の手首を掴み、動きを留める。
「…くそ、」
鬼の力は圧倒的だ。いかなグレンでも、生身のままでは鬼のそれには叶わない。手首を掴まれたまま、唇が重なる。
最中でも暮人はキスなどしたがらない。けれど、鬼の彼はいつだってキスを強請る。まるで甘えるような、求めるような口づけ、舌が相手を求めて彷徨う。
グレンは眉を寄せた。煽られたくないと思うのに、己の身体もまた欲望に忠実だ。
ましてや、彼とて鬼を飼っている身。
引き摺られる。半身が疼いた。暮人の、彼らしからぬ妖艶な表情に欲望が蠢く。
「そんな野暮なもん、使ってくれるなよ」
それ、結構きついんだぜ?強引に抑え込まれる欲と強制的な昏睡状態に陥る感覚は、グレン自身も覚えがある。
だから鬼のいう事はもっともだ。極力こんな薬は使いたくなかった。
身体の負担が多い上に、鬼への耐性自体も低くなる。ましてや、完全に鬼人格に変貌している時に使うなら尚更だ。
「なら、大人しく消えろ」
「まぁ待て。なら、ひとつ取引をしよう。お前が俺の欲望を満たしてくれれば、このまま消えてやってもいい」
最近、あまり娑婆に出てなくてな。飢えてるんだ、と。そう歌うように告げて媚びるような視線を向ける。
お前がしてくれないのなら、他の男か、女でもいいが。ああ、久々に犯すのもいいな。
暮人の愉しげな表情に、グレンは蔑むような顔を向けるばかりだ。
乱れた表情、暮人は言う。男を殺すのも女を犯すのも、欲を満たす方法のひとつでもあるがな、と。
けれど、彼自身が知っている。
殺すより、犯すより、もっと強烈な悦楽を。
何せこの身体は暮人の身体だ。何より暮人が望んでいるのだ、一番の快楽は決まっていた。
「っは、こんな執務真っ只中にサボってお前と付き合えって?」
「公認でサボれるんだ、ラッキーだろ?」
「元に戻ったお前にネチネチ怒られるのはごめんだぜ」
「っぐ、」
次の瞬間、グレンの左手が暮人の首を掴み、締め上げた。
激しい引き絞りに暮人の顔が歪む。これはもはや人間の力ではない。取り繕いようのない暴力に、暮人はぞくりと背筋を震わせる。それは歓喜の予感。
一瞬、伏せられた瞳から、現れたのは澄んだ紅玉。グレンのもう1つの人格だ。
右手で、腹に強烈な一発を浴びせられた。
身体が吹き飛ぶ。部屋の壁に叩きつけられ、暮人は血を吐いた。喉が痞え、何度も咳き込む。
顔を上げようとして、今度は靴先で幾度も腹を蹴られ、踏み付けられる。
ぐぇ、とえずくような声が漏れ、苦痛に喘いだまま、なおも暮人は己を見下ろしてくる男を見やる。
肌を刺すようなビリビリとした気配、暮人は下半身を熱くする。そこをグレンの軍靴が容赦なく踏みつけた。ぐりぐりと潰すようにすらされて強い刺激を与えられる。
「っひぎぃっ…い、ぐあっ…!!」
「気持ちよさそうな顔してんじゃーねか」
急所への容赦ない攻撃に、全身が痺れて苦痛を訴えている。だが暮人にとっては、
それは快楽でしかない。激痛を感じて無意識に溢れる涙と喘ぎ続ける口の端から溢れる血の色の混じる涎。瞳は愉悦に煙る。
それを知っているからこその暴力だった。
だからお前が好きなんだ。掠れた声音で暮人は告げる。
普段のお前は甘すぎるからな。たまには激しく抱かれてみたいんだよ。
「っは、このドM変態中将様が。写真でも撮ってやろうか」
「別にいいぞ。困るのはお高く止まってる暮人様だけだ」
「お前はプライドもねぇもんなぁ」
グレンの掌が伸びてきて、乱暴に衣服を脱がせる。弾け飛ぶボタンにも目もくれない。
現れたのは鍛えぬいた筋肉に覆われた身体。だが、男らしいそれの胸元についているのは、
ぷっくりと腫れ上がった濃紅色の蕾だ。まるで女のそれのように立ち上がって誘うそれは、
過去、暮人がどれほど乱れた関係を続けてきたのかを物語っている。
嗜虐心が煽られた。どんな暴力的な行為を与えても、彼はそうやって悦ぶだけだ。
鬼の欲望は果てしない。
無遠慮に身体を求める姿に、グレンは目を細めた。
「ったく、こんなエロい身体しやがって」
「っ、う、っ痛、ひ、」
「シャツも下着も着てねぇのかよ。とんだ変態だなぁ、暮人様?」
膝で中心部を蹴り入れられる。乳首に爪を立てられ、もう片方は歯で噛み千切られそうになり、暮人は思わず悲鳴を上げてしまった。
血すら滲む。傷になったそこを、グレンの滑る舌が癒すように舐め上げる。
その状態で、グレンの掌は下肢を探る。ボトム越しに下肢を探った。下着に覆われていないそこは、薄布1枚だけでは刺激に耐えられない。
激しく揉みしだかれて、暮人は下肢をびくびくと痙攣させ、両膝を立てた。グレンはその間に身を滑らせる。
軍服は黒く、傍目にはわからなかったが、暮人のボトムの前は既に先走りに濡れ、染みを作っている。
掌すら汚すそれに、グレンは嗤った。激しい扱きあげに、暮人の雄は欲望を隠せない。硬く芯を持ったそれが、窮屈そうにボトムの生地を押し上げる。
「・・・ぐ、グレン・・・っ」
「っは、もうおねだりかよ?」
「っ・・・いいから、早く犯せっ・・・」
まだ、まともに愛撫もしていないというのに。暮人の身体は既に男に満たされた時の悦楽を思い出して
下肢が疼いて溜まらない。グレンは暮人の身体をひっくり返すと、腰を高く上げさせた。
ずるり、とボトムを引き摺り下ろす。尻たぶを開かせ、ひくひくと痙攣するソコを、グレンは舐めまわすように視線を注ぐ。
「はは、すげぇ、ナカが真っ赤」
「はやく、しろっ・・・」
「うるせぇな。なんならこのまま放置してやってもいいんだぜ?」
「っあ、やめ・・・!」
暮人の肩を押し、乱暴に床へと押し付ける。それから両腕を捻りあげて手首を拘束する。
暮人の上着から飾紐をぶちりと剥ぎ取り、両手首をぐるぐる巻きに縛り上げた。鬼の力で縛られたそれは、解こうとすればするほど皮膚に食い込む。
頬をフローリングの床に押し付けたまま、暮人は息を呑んだ。
グレンが開かせた尻の合間、己の欲に疼く部分に宛がわれる硬い感覚。だが、想像とは違い、それはひどく無機質な冷たい感触を覚える。唇を震わせて必死に己の尻に顔を向けると、
宛がわれたのは黒く硬い、長い棒のようなものだった。それが何なのか漸く合点がいく頃には、下肢を引き裂く様にそれが奥まで貫いてきた。
「っぐぅ・・・あああああ!!」
「どうだ、暮人・・・」
「っひぅ・・・や、やめっ・・・くううぅっ・・・!!!!」
ずぶずぶと奥まで容赦なく押し込まれるのは、グレンの刀だった。鞘の部分とはいえ、そのサイズは男の雄に匹敵する充分なサイズで、ましてや長さは当たり前だが際限がない。
いくら行為に慣れた暮人とはいえ、なんの前戯も与えられぬまま犯されるのにな激痛が伴った。
目を剥いて、激しい衝撃と揺さぶられる感覚に悲鳴をあげてしまう。
ましてや、相手は鬼。鬼は人を殺すことにさして躊躇いはない。となれば、今彼の機嫌を損ねれば、このまま本気で串刺しにされる可能性すらあった。
恐怖心からか、無意識に溢れる雫が頬を汚し、フローリングの床を濡らす。
声を抑えることも忘れ、閉じることもできない唇から溢れる体液。意識が朦朧としていて、理性を保てない。
グレンは嬉々として、己の刀を浅く持って最奥を抉ろうと抽挿を繰り返している。行為の激しさに、暮人の粘膜ははれ上がり、真っ赤に充血し今にも出血寸前だ。
けれど、それでも、挿入された異物を離すまいと絡みついてしまう。
浅ましい身体だと暮人は笑った。
グレンに与えられる感覚の全てに興奮する。それが愛情だろうが憎しみだろうが、欲望だろうが嘲りだろうが構わなかった。
「感じるだろう?」
「っぐ・・・か、感じる・・・、でも、足りないっ・・・」
「暮人」
ぼたぼたと暮人の雄からは蜜が溢れ、もはや執務室の床はドロドロだ。
暮人は身体を震わせて、訴える。こんな無機物ではなく、グレン自身の雄が欲しいのだと。
あの熱く硬く、それでいてじわりと中に馴染む感覚を、暮人はよく知っている。
足りない。こんな棒では、どんなに激しく貫かれても、感じる場所を貫かれていても、あの満ち足りた感覚は得られない。
「お前にっ、犯されたいんだっ・・・!」
「っは、淫乱」
「っ―――!!」
どろりと体液の糸を垂らす塗れた鞘を引き抜いて、床に投げ捨てた。
グレンが、今度こそ己の刀身を宛がう。人工的ではない、熱を持ったそれは、暮人の媚肉を味わいたいと欲望を露わにしている。
暮人は息を呑んだ。自ら腰を押し付けて、男の雄を呑み込んでいく。
男の雄。グレンのそれだ。全身の細胞が染み渡る快楽に咽び泣く様。嬌声が止められず、広い部屋にすら響いている。
「っく・・・ったく、搾り取るつもりかよ、この欲深が」
「るさ・・・もっと、寄越せっ・・・」
「言われなくてもそうしてやるって。焦るなよ」
グレンの掌が暮人の短い髪を掴み、顔を上げさせる。きつい体勢だが、それでもキスが絡み、下肢の奥深くまで貫かれる感覚は激しい快楽を暮人に齎した。
肉体があるということは、本当に素晴らしいことだ。
こうして愛しい男に触れ、求めることが出来るのだ。だのに、プライドやら地位やらの為に頑なに自身を律している人のままの暮人は、本当に勿体ないことだと思った。いっそ、自分が。すべてを支配してしまえば、
暮人だって苦しむ必要などなくなるのではないか。
「っは・・・最高だ、グレン・・・いっそこのまま、俺が暮人の全てを支配してやればどうだ?そしたらこの身体はお前のものだぞ?」
「生憎、俺が好きなのはお前でも暮人の身体でもないんでね」
「俺はお前が好きだぞ?」
「俺の身体が、だろう。このビッチ野郎」
「はは」
否定しない。快楽に酔わされているのは事実だった。体勢が変わり、仰向けになる。
腰を高くあげさせられ、そのまま上から犯された。
グレンの腰遣いが激しくなり、尻が打ち付けられる。肌のぶつかり合う渇いた音と、ぐちゅぐちゅと粘液が絡み合う卑猥な音。そうして男の荒い息遣いが部屋の空気を濃厚にさせた。
誰が来るともしれない執務室。
だが彼らは欲望の丈をぶつけ合う。噛みつく様なキスと目いっぱいに開かせた膝を抱えて最奥を求める。
涙の止まらない暮人の雄に指を絡め、きつく締めあげれば、歓喜の悲鳴をあげて暮人が溜まっていた濃厚な精液を吐き出した。
勢いよく飛び出した白濁が、自らの顔を汚したが、それすら快楽を呼んだ。
射精したせいで内部もまた収縮し、それに煽られるようにしてグレンもまた己の欲を解き放つ。
結合部から溢れだす、含みきれないそれがひどく卑猥だった。
腰を引こうとして、けれど暮人の身体は、グレンに追いすがって離そうとしない。
「・・・足りない。もっとだ」
「気が済んだんじゃねぇのかよ」
「お前だって足りないんだろう?もっと好きなように犯すといい」
「っは・・・上等だぜ」
そこまで言うんじゃ、期待通り犯してやらねぇとな。
来い。
快楽の余韻で震える暮人の身体を抱え、グレンは隣の仮眠室へと押し込む。
ベッドに押し倒され、グレンもまた暮人の身体に乗り上げる。ギシギシと仮眠用のベッドが軋んだ音を立てた。
膝立ちになったグレンが上半身を脱ぎ捨てる姿に、暮人はひどく興奮を覚えた。
しゃぶりたいと思った。
グレン自身の、その欲望。身を起こして彼の下肢に顔を埋めた。
己の中の欲のままに行動することは、最高に気持ちがいい。
「・・・グレン、今度は俺がお前を満足させてやるから、覚悟しろよ?」
「はは、楽しませてもらうぜ。せいぜい頑張って奉仕しろよな」
鬼と鬼の、紅い瞳に欲望を滲ませ互いの身体を貪る行為は、
それからも長く長く続いたのだった。
end.
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