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雌伏する獣たち





柊暮人はチカチカと電球の切れかけた照明だけが灯る昏く冷たい石牢の中へと足を踏み入れていた。
渋谷の日本帝鬼軍、軍本部地下。そこには、かつて『帝ノ鬼』時代から残る遺跡のような仕置き部屋、もとい拷問部屋がある。
ひび割れた石畳にへばりつく赤錆や、思わず嘔吐きそうになる程に染みついた腐敗臭は、
ここでありとあらゆる体液を垂れ流し、臓物をぶちまけて来たおびただしい数の人間どもの慣れ果てなのだろうか。
暮人は無表情のまま、軍靴を鳴らして階段を降りてゆく。

本来ここに、自ら足を運ぶ人間などそうはいない。
ここは囚人が通る道で、しかし敵を捕らえて何かを吐かせる時も、裏切り者や捕虜を拷問する時も、大抵は場所を悟られぬよう、気絶させるか目隠しで連れて来るものだ。そして更に言えば、柊暮人はこの帝鬼軍では二番目の地位に在るのだ。常に彼は疑いのある人間を連れてくる側の立場であり、実際、何人もの被疑者に尋問という名の拷問を与えて来た。
だが暮人は今、『連れてこられる』側に居る。

「……ち、」

地下深くに行くに従って空気は重く纏わりつき、足取りまで億劫になる。身体が怯えているのだ。地下の最奥で待つその存在を。だが逆らう事は出来ない。暮人は確かに権力者だったが、上がいないわけではなかった。
唯一絶対の父。帝鬼軍は、かつての『帝ノ鬼』構成員が大半を占めている。彼らは文字通り柊を信望しており、その当主ともなれば神と崇め疑うこともしなかった。
彼らは父が所詮ただの人間であることを知らぬのだ。ウィルスによって蝕まれた身体。腐れ落ちた肉体を人間の醜い知恵で代替しなおもしぶとく生き残る父。
柊天利は全知全能ではない。人間じみた低俗な欲望を幼い自分に向けた醜い穢れた存在。
それが暮人の認識であり、だがしかし同時に、今の暮人には逆らうこともできない相手でもあった。
彼の一声で軍の9割の兵が動くのだ。そして今日も暮人は、彼の命に逆らえずにいる。

「来たか、暮人」
「…は、」

頭を下げる。後ろで重い扉が締まると同時に、錠を掛けられる。逃げ場はない。
次の瞬間、四方から強い照明が放たれた。眩し気に眉を寄せる。逆光で周囲はほとんど見えないが、
恐らくは暗闇には観客がいるのだろう。見せしめにされる自分の身体に注がれる視線の気配を感じた。だが、だからといって抵抗するわけにもいかない。
もう1つライトが付く。眼前に居たのは玉座に座る柊天利だ。
杖なしでは歩くことも困難な身体を引き摺る彼は、椅子に座してなお杖を持っていた。暮人は微かに表情を歪める。
古傷がずきずきと痛んだ。あの杖で何度殴打されてきたかわからない。黙って奥歯を噛み締めた。
待っているのは苦痛と恥辱と絶望。幼い頃から、暮人には光などなかった。父の口から褒誉の言葉を求めては努力を続けてきたが、ついぞそれを得ることはなかった。秀才ではあっても天才に叶うことはなかった。
だが嫉妬の炎を燃やす以前に、暮人の地位は地を這いずっていた。父の慰み物にされた。その事実が、今だ暮人に重く圧し掛かっている。

「何故呼ばれたかわかるな?」
「…はい、父上」
「ならば準備をしろ。いつまで待たせる気だ」
「っ…」

ぎゅ、と拳を握り締め、唇を噛み締めた。
震える指先で軍服の襟元を緩め、釦をぷちぷちと外していく。上着を脱ぎ足元に落とす。カッターシャツを肌蹴ると、鍛え上げられた肉体が露わになる。周囲の視線が己の素肌に注がれているのを感じた。羞恥に頬を染めようとして、しかし正面に座する父は冷めた視線を向けるだけだ。一気に暮人の心臓も凍る。
そう、これは仕置きなのだ。罰なのだ。
天利に逆らった者の末路はいくつかあるが、自分の場合はこうして性処理の玩具として扱われることが常だった。
慣れたはずの行為とはいえ、それでも行為は暮人の心を常に抉る。見目良い故に可愛がられる為に閨に呼ばれるのであればまだ納得しただろう。だが、暮人は自身の見た目を正確に判断しているつもりだ。弟の深夜のように可愛げのあるような人種ではない。身体つきも筋肉質で精悍な形だ、何処をどう見ても男にしか見えない。
それでも、暮人がこうして素肌を晒すことを強いられるのは、多少の暴力に耐える頑丈な性質だからだ。天利や取り巻きの重鎮幹部たちは事あるごとに仕置きと称して折檻し、また理由がなくても欲求不満の解消の為に撲っては足蹴にする。そして時折身体まで開かされる。成長する毎に回数は減ったものの、無くなる気配はなかった。
唇を噛み締めてボトムスと下着に手を掛ける。一気に自ら引き下ろした。躊躇っていても叱責されるだけだ。逃れようもない。露わになった下肢の中心部に視線が集まり、それを必死に耐えた。靴も脱いで全裸になり立ち尽くす。不意に響く悍ましい程の嗤い声。

「これから起こることを知っていてなお、役にも立たぬ一物を勃たせているとは。笑止」
「ぐぅっ…!」

ひゅん、と音がして杖が振り上げられる。天利との距離は近い。正確に急所を殴打されて激痛になんとか耐える。転げまわってもおかしくない程の痛みに腿を掴んで耐え忍ぶ。だがそんな態度こそ天利の嗜虐心を煽るのだ。

「這え」

膝を折って足元に這い蹲る。そこへ固い軍靴の蹴りが入る。鳩尾を直撃され息が詰まった。こみ上げる吐き気と嗚咽。じわりと涙が溢れるが零すわけにはいかない。泣く女になど興味がないのだ。逃れたいとは思えど、今の暮人は柊の後ろ盾を失い放り出されるわけにはいかない。中将であえばこそ出来ることもある。ならば父の暴力など過ぎ去るのを待つばかりだ。
掌が伸ばされ、噎せる暮人の短い髪を掴みあげた。覗き込まれる。犬は犬らしく尻尾を振って強請れ。揶揄するような男の口調に屈辱感が胸の内に澱のように広がっていく。だがそれでも。暮人は喉を鳴らして言った。

「っご奉仕、させて頂きます」
「ふむ」

唇が歪むだけで待ったはかからない。自ら天利の股の間に顔を埋めた。両手は獣のように床に着いたまま、口だけでジッパーを緩ませる。唇で食むようにして取り出した天利のそれは、どす黒く、醜い。悍ましいほどの男根からは腐臭がするようだ。
だが、躊躇う事は出来ない。暮人はゆっくりと舌を這わせて飴玉を舐めるように亀頭を口に含んだ。舌で転がすようにツルツルしたそれを幾度も舐めては鈴口を推し開く。蜜が溢れて来たところで迎い入れるように喉の奥まで呑み込んだ。血が流れ込んで質量が増す。咥内を圧迫するそれにまともに息もつけない。灼けるように爛れたそれが口腔を犯し始める。天利の生身の左手が暮人の頭を揺さぶる。強引な抽挿に歯を立てぬよう必死に口を開いた。顎が外れるほどの苦しさに目元が潤む。見上げると男は酷薄に目を眇めて蔑む。この雌犬が。自分の子を雌犬に仕立て上げたのは他でもないこの男だというのに、さも汚らわしいとばかりに見下ろす父が辛かった。

「はは。うまいか」
「っんむっ…ぐ、は、はぃ…」

咥えさせられたまま必死に頷く。天利は満足げに口の端を歪める。褒美に呑ませてやろう。ひときわ強く頭を揺さぶられて喉の奥を貫かれる。苦しさに無意識に吐き出そうと喉奥が収斂し、それが天利に快感を与えていく。熱源がぶるりと震えて精が溢れる瞬間を感じた。苦く不味い粘液を呑み込もうと覚悟を決めていた暮人は、
しかし不意にドン、と胸を突かれて思わず天利の雄を吐いた。直後にぶちまけられる白濁。鼻先から目元まで顔面に粘液がべとりと張り付いた。鼻につく饐えた匂い。穢れた体液に塗れて自分もまた醜く穢れていく。こんな男の血が半分でも流れているのかと思うと、
暮人は自らの身体に嫌悪すら覚える。天利が醜い存在ならば、自分もまた醜いのだと思った。
口元にどろりとかかるそれを舐め取る。天利はフン、と鼻を鳴らして暮人を放りだした。惨めに転がされる。裸身で感じる石床の冷たさがひどく痛かった。

「…ああ、ところで」

開かされていた下肢を整えながら、天利は言う。

「一瀬との まぐわいは愉しかったか?」

息を呑む。何を言っているのかと思った。一瀬、と言っても天利は明らかにただ1人のことを指している。
一瀬グレン。柊の古い分家筋に当たる一瀬家の嫡男。だが若くして父を殺され今は当主ということになっている。もちろん世界はとっくに崩壊しており、その地位自体になんの価値もない。ましてや一瀬の存在意義は、柊から蔑まれるためにあるのだ。
そのような古くからの因習は暮人にとってなんの意味もなかったが、それでも天利にとっては当然の事らしい。
暮人は必死に首を振った。
一瀬グレンとは水面下で共謀関係にあるが、それでも表向きは中将と中佐、主と部下、それ以上の関係ではない。
ましてや、身体の関係など。あるはずもなかった。こんな穢れた行為に付き合わせるなど。
暮人は唇を噛み締めた。知られるわけにはいかなかった。身体をさらせば、過去の醜い傷跡すら露わになる。隠し通すことは不可能だ。ましてやこんな抱いて面白くもない身体。求めるつもりもなかった。
例え、彼と話し、時に言い合いぶつかり合う事でどこか安らいでいる自分がいたとしても。

「そのような、事は」
「ならば何故、一瀬ごときを庇い立てをする?」

天利が言っているのは、数時間前に行われた幹部会議での事だ。
池袋の街に吸血鬼の貴族が侵入し、警備兵が何人も殺され、一般人にも死者が出た。その際対応したのが一瀬グレンと彼の仲間たちだった。彼らは見事貴族を倒し、被害の拡大を防いだが、それでも人数にしてみれば多くの被害者が出てしまった。
そして今回の会議だ。警備の詰めの甘さ、結界の脆さ、対応の遅れ。貴族を倒したグレンは一定の評価はされたものの、被害の拡大と対応の遅さを責められ、窮地に立たされていた。いや、本当は彼自身は気にしてもいなかったのかもしれないが。
柊に一瀬が不遇な扱いを受けるのはいつものことだった。だが、暮人は思わず助け船を出してしまったのだ。あの時の天利の鉄面皮に背筋が凍った。それでお前は?この一瀬のクズを認めるというのか?氷のような視線が暮人を貫く。
部下を守るのは美徳ではあるが今回は相手が悪すぎた。

「柊と一瀬は、天の神と地を這うネズミ程に差があって然るべきもの。それを忘れ一瀬の肩を持つなど…フン、絆されやすいお前のしそうな事だ」

だから甘いというのだ、お前は。
再び無機物で模られた右足で腹を蹴られ思わず庇う様に背を折り曲げた。苦しい。屈辱と苦痛に思考が霞む。いっそこのまま気絶できたらとも思うが、それをするには暮人の身体は頑丈すぎる。体液と埃に塗れた身体には、幾つもの傷痕が残っている。今でこそ鬼呪の回復力があるものの、古い傷跡が消えるわけもなく。醜く引き攣れたような肉の盛り上がった痕がそこかしこにある。
ズキズキと身体が痛んだ。それでも。暮人は額を床につけ這い蹲る。

「まぁ良い。今回はお前に免じて一瀬グレンの責任は不問にしておいてやろう。・・・来い」
「・・・?!」

天利の言葉の最後の台詞は、暮人に向けられた言葉ではなかった。
天利の背後の闇が揺らぐ。無感動な表情の兵に連れてこられた男の姿に、暮人は目を見張った。

「・・・っグ、レン・・・?!」
「暮人、様・・・」

暮人は唇を噛み締め、顔を背けた。あり得なかった。一瞬だけ見たグレンの瞳が裸に向かれた自分の姿を食い入るように見つめていて、ひどい羞恥心に襲われる。己の醜い姿など見せたくもなかった。彼の主である以上、そして柊である以上、それなりのプライドと威厳を持って接していたはずだ。そしてグレンもまた、そんなものに惑わされるような小さな男ではなく、だからこそ、自分たちの共謀関係は成り立っていたはずだったのに。
暮人を見下ろすグレンもまた、後ろ手に拘束されていた。
外してやれ、とひび割れた昏い声音が響く。ガチャリと手枷を外され、けれどグレンは動かない。
グレンにとってもまた、天利は絶対服従を強いられる存在だ。暮人が密かに様子を伺えば、彼もまた怒りを覚えているのか、天利の見えないところで握られている拳が震えていた。見るな、見ないでくれ。そう心で訴えるが、もはやグレンには届かない。

「一瀬グレン。この度はよく貴族の脅威を抑えたものだ。褒美を取らす」
「っは・・・?」
「抱け。私が許す」

冷徹な、しかしどこか悦の含んだ声音。天利は顎をしゃくる。暮人はカタカタと震えた。天利の前で他者に犯されることはよくある話だったが、その相手が自分が密かに心を許していた存在であることに愕然とする。
これ以上、グレンに心を許しているなどとバレるわけにはいかない。そう思うのに、身体が心を反映して再び欲望を擡げ始めた。父の性器を自らしゃぶり、顔面を精液に塗れさせて肌を晒して、今自分はグレンの前に居る。既にプライドはズタズタで、隠し通せるモノも何もない。
こんな汚らわしい自分を、グレンはどう思って見つめているのだろう、そればかりが頭を過ぎった。嫌われたくない。そう思うのに、今の暮人には何一つ好かれる要素がない。
グレンもまた、この状況に混乱し、戸惑っているようだった。少なくともそう見えた。
だがどちらも不用意なことは言えない。天利の不興を買えば、どちらも命すら落とす可能性だってあるからだ。

「っ・・・いえ、しかし・・・私は、」
「それの部下、だからか?遠慮することはない。部下の誉れに上官が褒美を与えるのは当たり前のことだ」

犯せ。さもなくば、今度はお前が同じような目に合うことになるが…?そう挑発されてグレンの掌に血が滲む。彼の腸が煮えくり返っていることだけが救いだと思った。グレンはきっと、自分のために怒ってくれているのだろうから。そう思うと、腹の内から笑いさえこみ上げてくる。
グレンは甘く、優しい男だった。理不尽な扱いや無理を承知で彼に強いてきた。
だからグレンは、暮人を憎んでいいはずなのだ。それなのに。
天利という後ろ盾を得て、今こそ自分に報復することだって出来るのに。ばちりとグレンの瞳と目が合う。
揺らいでいたのは彼もまた同じだった。唇を噛み締めて、そうして暮人のほうに歩み寄る。俺を犯すのか、グレン。そう思ったが、不意に男は自分と同じように跪く。戸惑った。天利に逆らうその先に待っているのは死でしかないというのに。

「・・・柊天利様、申し訳ございません。私には・・・」
「抱けぬと申すか」
「・・・・・・」
「ならば代わりにお前が身代わりになるか」

天利の手が指示を出すように動く。それを見て青ざめる暮人は痛む身体を必死に起こした。かの男が指示を出した先に待っているのは地獄だ。醜い豚のように媚び諂い欲のままに貪る男共にいいようにされるだけだ。グレンをそのような目に合わせるわけにはいかなかった。守らねばならない、なぜか使命感が湧いた。これ以上、天利の馬鹿げた余興の被害者を作りたくなかった。
暮人は声を上げて笑った。床に這ったまま、汚れた身体を投げ出しながら。

「っ暮人、」
「さすが、一瀬はどこまでもクズだな、グレン。
 おれを抱けないとは、さては童貞か?お前のぶら下げてるモノはただの飾りだったということか」
「・・・お前、」
「貴様、五月蠅いぞ」

再び振り下ろされる杖に呻いた。背と腹と尻を中心にぶたれた皮膚は蚯蚓腫れになっている。皮膚が裂け、血の滲む箇所すらある。
傷ついた顔で振り向いたグレンに、暮人は苦く笑った。
いいから抱け。俺のことは気にするな。そう、唇だけで告げる。だが、とそう顔を歪ませるグレンの優しさが刺さった。
自分にはそれだけで十分だと思った。
父に犯され、醜く穢れた身体を暴かれて同じように蔑まれると思ったのに。
一瞬でも、彼は自分を傷つけるよりも自らを犠牲にすることを選んでくれたのだ。その心だけで十分だった。

「それで、犯すのか、犯さぬのか」
「っは・・・柊天利様よりの褒賞、謹んでお受けいたします」
「よし。私を愉しませろ」

多少乱暴に扱ったほうがそれも悦ぶぞ?今はお前のモノだ、好きに扱うと良い。グレンは唇を引き結んで暮人と向き合う。
すまない、暮人。少し我慢してくれ。そう囁くグレンに、平気だと呟いた。こんなことはいつものことだ。グレンが暮人の腕を引き身体を起こさせる。それだけでも今まで自分を犯してきた男たちの乱暴な扱いとははるかに優しい。膝をついて四つん這いにしゃがめよ。グレンの言葉に大人しく従った。顔を上げれば、目の前には男の熱源が存在している。息を呑んだ。グレンの下肢もまた、
軍服越しでもわかるぐらいに興奮し、布地を押し上げている。思わず唇を近づけた。頬を上気させて夢中で食んでいると、

「俺にも天利様にしたように奉仕してくれよ、暮人様?」

頭を撫でられて、耳裏を指先で愛撫される。くすぐったさに身を捩ると同時に、グレンに抱かれていることにゾクゾクする。
明確に望んではいなかったものの、こうして抱かれると思うと興奮した。グレンが自らベルトを緩ませ、そうして彼自身をゆっくりと取り出す。息を呑んだ。既に怒張しているそれは血管が浮き上がり、見事に天を向くように反り返っている。思わず裏筋から舌を這わせてキスをしてしまった。ちゅう、と水音すら立てて吸い上げる。
同じように鼻につく匂いであっても、グレンのだと思えば興奮を呼ぶ。自ら望んで咥内に受け入れた。鈴口から溢れだす蜜さえも甘い。根元に指を絡ませ刺激を与えながら喉奥で愛撫する。天利よりも強引さがない分、より奉仕している気分になった。グレンはなんだかんだ文句を言いつつも、いつも自分の為によくやってくれている。
こんなもので彼の慰みになるというのなら、身体を投げ出すくらいどうということはなかった。
見上げるとグレンは熱っぽい瞳で自分を見下ろしている。嫌悪よりも欲望に塗れている表情に安堵した。もっと欲しがれよ。挑発的に視線を絡め、じゅるじゅると体液を呑み込む。それを見てグレンの雄がより膨張し、圧迫する。灼けるような熱さは天利以上だった。夢中になって自ら頭を揺する。髪を梳くように触れてくるグレンの掌は優しかった。

「っは・・・上手いぜ、暮人・・・呑んでくれるのか?」

優し気な声音にコクコクと頷いた。グレンの腰にしがみ付いて身体を支え、深くまで呑み込む。
舌を絡ませて男の一番感じる部分を刺激してやれば、頭の上でグレンが小さく呻いた。ぎゅう、と握りこまれる指先、欲望のままにグレンが腰を打ちつける。眉根を寄せて耐える。どくりと脈打った昂りが、熱い奔流を喉奥に叩きつけた。
思わず噎せそうになるのを必死で呑み込む。粘液は大量に喉に絡み、呑み込むのも一苦労で。それでも最後まで吸い上げて漸く顔を上げる。頬を紅色に染めたグレンと目があった。明らかに情欲に塗れた瞳に、こちらもまた欲情する。グレンに犯されたかった。
尻奥が疼いて仕方がなかった。かつて乱暴に扱われ、何度も裂傷を負ったそこは、
既に男を受け入れることを予測して自ら濡れている。グレンは暮人を抱き締めると、そのまま床へ仰向けに寝そべった。労わるように軽い口づけを施して、そのまま背を抱き締める。しがみ付く暮人の背筋を撫で、そうして両掌で尻たぶを揉みしだく。筋肉質な引き締まった尻は、それでもモノ欲しそうに揺れている。グレンが暮人の秘された窄みを指で押し開けば、天利の眼前に赤く熟れた色合いの媚肉が晒される。
天利はにやりと口の端を持ち上げた。素晴らしい身体だろう。男を欲して濡れる身体。雌犬として尻尾を振る様しつけられてきた。グレンが指をつぷりと押し込めば、既に濡れそぼっているそこに驚いたようだった。

「・・・暮人、お前本当に」
「言うな・・・っ」
「・・・天利が憎いか?」

じゅぷじゅぷと指を出し入れしては、根元まで突き入れて中をかき回す。びくびくと震える反応を確かめながら、
暮人の弱い部分を何度も触れた。ぐりぐりと刺激すれば、暮人の下肢もまた膨張して解放を訴える。グレンは時折指を絡ませ、慰めながら快楽を与えていった。ぎゅう、と、肩口にしがみ付いて爪を立ててくる彼が愛おしいと思う。

「必ず、この手で殺してやる」
「ああ、必ずな」

敵である絶対君主、柊天利は尚も蠢く自分たちを見つめていた。
今すぐ殺してやることなど簡単だった。力で負けることはありえない。だが彼の兵は巨万といた。今逆らうことはできない。
例え、これほど屈辱的な行為を目の前でさせられていても。ああ、と暮人が快楽に呻く。グレンの指が前立腺を執拗に撫でている。
もっと欲しい。たまらない、とばかりに尻が揺れる。ぐれん、もう。暮人が訴えれば、グレンはにやりと笑った。
俺のが欲しいのかよ。うるさい。顔を歪めて涙目で訴える男の身を起こさせて、グレンは自身の雄を手早く扱く。ぬるぬると先走りを零す先端を割れ目に宛がわれて、暮人は戦慄いた。
グレンが見つめている。快楽に乱されている自分を見ていると思うと、それだけで尻奥が切なく締まってしまう。

「っぐ、グレン・・・っ」
「腰を落とせよ。暮人様。早く犯されたいんだろう?」

グレンの言葉に、暮人は唇を噛み締めて腰をあげた。グレンの指が絡む雄に自らの指を絡ませ、支える。切なく窄まる秘所に宛がうだけで、背筋を快楽が走り抜けた。早く貫かれたい。男に慣れた身体は、穿たれた空隙を埋め尽くされたいと訴える。

「っほら、早く」
「っ―――ぁ、あ、ああっ・・・!」

暮人は甲高い嬌声を上げていた。グレンの質量は想像以上に大きく、狭い肉壁が更に抉られ、拡げられていくようだ。求めていたものが得られた充足感に満たされる。離すまいと絡みつくうねる柔肉。グレンもまた額から汗を零した。荒い吐息と嬌声だけが響く。
すげぇな暮人。お前のナカ、纏わりついてくるぜ。奥深くまで呑み込んでしまって、暮人は漸く息をつく。と、そこでグレンが腰を揺らした。最奥が強く貫かれて悲鳴が漏れる。弱い部分ばかりを狙ってグレンが腰を揺らせば、暮人は涎すら垂らして喘ぐ。
ほら、もっと欲しいだろう?グレンの言葉に促されるように、腰を揺らし始める。
浮かせて抜けるぎりぎりまで腰を上げたかと思えば、重力に負けたように深々と受け入れる。グレンは嗤った。暮人。こっちも愉しませてやるよ。輪姦されていた時は触れられもしなかった暮人の雄を、グレンは扱く。決して乱暴ではないが、それでも容赦なく追い詰めていく手管に、暮人は顔を歪めた。―――もう、イキそうなのか?唇を噛み締めて恥ずかし気に頷いたが、
グレンはもっと欲しいと言う。ぎゅう、と根元を絞られて苦痛と快楽のないまぜになった刺激が脳天まで走り抜ける。

「っ・・・ぐれ、も、許・・・」
「もっと気持ちよくさせてくれよ、暮人様」

結合したまま、ぐい、と脚を持ち上げられて体勢が変わった。グレンが圧し掛かってくる。角度が変わりぐちゅぐちゅと音がした。中を抉られて漏れる声音を抑えきれない。ぐい、と腰を折られてグレンが上から犯している姿が見えた。
どうだ、お前の結合部は。真っ赤に腫れ上がって引くついてる。暮人は顔を背けた。グレンの緩く巻いた艶めく黒髪が、揺れる度に汗を振り乱す。彼もまた同じように興奮しているのだと思うと、心がひどく高揚した。
ただ一つの足枷、天利の存在さえなければ。
彼さえいなければ、グレンに与えられる快楽に素直に酔い痴れ、かれを求めることが出来たかもしれないのに。
尚も突き刺す視線は苦痛を伴った。グレン。巻き込んですまない。お互い様だろ?グレンは身体を折り曲げて額にキスを落とす。
きつい体勢だったが、それでもグレンは労わる様な手つきで内股を撫ぜる。暮人、一緒にイこうぜ。

「はは、すげぇ・・・さすが暮人様。ナカの味も上等だ・・・」
「っくそ、やめ・・・っあああ、」

グレンの腰が激しさを増して暮人を貫く。ぎちぎちとこれ以上ないほどに拡がった結合部は腰を引くたびに捲れあがり、
あまりの快楽に眩暈がするほど。グレンは乾いた唇を獣のように舐め濡らした。はは、最高だ。腰を抱え直して打ちつける。暮人は掠れた声を断続的に漏らすだけだ。視界がチカチカと点滅したかと思うと、一瞬のうちに白く埋め尽くされる。全身を襲う津波のような射精感に押し流されるように暮人は自らの精で更に己の顔面から胸元までを汚していく。
そうして同時に、己の中で熱い欲の証が叩きつけられているのを、ぼんやりと感じていた。
もはや感覚の曖昧な尻の奥が、じわりと熱い。力の抜けた身体をだらりと投げ出した。熱く火照った身体に、石畳の冷たさが心地よい。

「・・・っは、はーっ・・・ぁ、」
「どうだ、満足できたか?」
「は・・・」
「よし。ではお開きにしてやろう。今後も柊の繁栄のために尽くせ」

其れの片づけもお前の仕事だ。そう告げられてグレンは頭を下げた。再び怒りが擡げたが、拳を握り締め耐え忍ぶ。
兵を2人呼びつけ、杖をつき立ち上がる。外套を翻して天利は消えた。周囲の気配も同時に消え失せる。
沈黙。
完全に気配が去ってしまってから、グレンは漸く頭を上げた。
溜息をついた。天利から与えられる屈辱への怒りは募るばかりで、殺意を抑えるのに一苦労だとぼやく。
グレンは背後を振り向いた。地べたに崩れ落ちたまま意識を失う暮人の頭を撫でてやり、そうして顔面にへばりついた精を舐め取っていく。
男の欲望に塗れてなお、暮人は気高い男だと思った。綺麗だった。
必ず自分が殺してやると、そう言っていたあの紅褐色の瞳に魅入られた。もうすぐだ。自分たちの雪辱を晴らせるのももう少し。

「・・・あとでもっかい、ちゃんと抱いてやるから」

暮人の身体に無数についた傷痕を指先でなぞり、素裸のままの彼を抱き締めた。
権力の頂点にいると思われた彼ですら、これほどの蔑みを受けてなお立ち上がっているのだ。
意識を失ったままの彼の表情に愛しさすら覚えながら、
グレンは彼を抱えて地下室を後にしたのだった。





end.








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