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「Sweet Tactics vol.1」


甘党だとは知っていたが、
まさかこれほどひどいとは。

琉河旱樹―――L、に案内されて初めて彼のホテルに足を踏み入れた月は、
部屋中に充満する甘い匂いに顔を顰めた。
今となっては何も言わない捜査本部の面子も、
初めはいぶかしがったに違いない。
ホテルのワンフロアを貸し切り、それなりにスーパーコンピュータやらを揃えてはいるのだが、
ところどころに食べかけの菓子や菓子袋が置いてあるものだから、
傍から見れば、ここがあの大量殺人事件の捜査本部だとは到底思えないだろう。
しかし、絶句する月に構わず、
L―――竜崎は、やはり何食わぬ顔でテーブルの上のチョコレートを手に取り、
口に放る。そうして、例の足を抱える座り方で椅子に座る。
どう見ても無理な体勢に見えるその格好のまま、
腕を伸ばし、テーブルの上の角砂糖の入った瓶を、自分の方へ寄せる。
そうして、ひとつとっては、コーヒーに入れ、ひとつ取っては、己の口へ。
そんな事を何回か繰り返して漸く満足したのか、
竜崎は、テーブルの資料を確認し始めた。
もちろん、手を伸ばして菓子皿の上のチョコレートを取ることは忘れない。

「月くんもどうです」
「・・・いや、僕は遠慮しておくよ」

別に、甘いものが嫌いというわけではないのだが、
ここまでパクパク食べている存在の前では、どうにも気が引ける。
そんな間にも、竜崎は片手でコーヒーを傾けながら、もう片方でチョコレートの山を減らし始めていて、
さすがに月は心配になってしまった。
確かに、脳に糖分がいいとは言うが、これでは返っておかしくなってしまいそうだ。

「そんなことより、大丈夫なのか?竜崎。明らかに過剰摂取だろう」
「・・・そうですねぇ・・・」

小さく、首を傾げて。
考え込むようなその仕草は、まるで幼い子供のよう。
だが、そんな幼稚さを残す彼が、世界の警察を一声で動かせる程の能力の持ち主であるということを、
月は知っている。
本当に変な奴だと、月は内心で嘆息した。

「でも、チョコレートは私の友達ですから。」

そういって、ニッと笑われては、もはや言い返す言葉もない。
そもそも月にとって、竜崎は敵なのだ。
竜崎―――Lは、大量殺人犯である"キラ"を追って、日本まで来た男だ。しかも、自分をキラだと疑っている。
そして、それが事実である以上、月にとって彼の存在はひどく邪魔なものだった。
出来ることなら、今すぐにでも殺してやりたいと思う。
そんな自分が、竜崎を心配する、というのもおかしな話だ。
まぁ、いいだろう。
互いの思惑がどうあれ、今は先日現れた『第二のキラ』探しの為に、
自分はこの本部に呼ばれたのだ。
そうである以上、自分は全力を尽くして捜査に協力する必要がある。
L殺しは、また後だ。
月は、空の菓子袋に埋もれている資料を手にとった。

「・・・5日、経ちましたね」

竜崎の言葉に、月はああ、と頷いた。
第二のキラを欺くために、L側が流した偽キラの返答に対して、
まだ第二のキラの返答はない。
偽者とわかったから返信をやめたのか、それとも"第二のキラ"自体推理が間違っているのか―――、
常に捜査とは不安が付き物。ましてや今回は、どんな能力を持っているのかすらわからない未知の敵が相手なのだ。
真剣なまなざしの竜崎に、月は口を開いた。

「―――まだ、5日だ。ましてや、本物のキラがどう動くかもわからない。もう少し、傍観して他の捜査を続けていていいと思うけど・・・」
「そうですね・・・」

指を唇に当て、深く考え込む竜崎を横目に、月はコーヒーに口をつける。
今、部屋にはたった二人切り。当然のことだが、監視カメラもない。
「第二のキラ」捜査協力のため、と称して連れてこられた捜査本部ではあるが、
竜崎の本心は分かっている。
夜神月を自分の傍に置き、己の目のある場所で監視したいのだろう。
もしくは、キラとしての行動を抑制させる目的か。
何であれ、隠していても彼が自分の一挙一動に注意を払っているのは明白だった。
L―――キラ最大の敵。
名前がわからない以上、デスノートでは殺せない。
今は彼の、自分への疑いを少しでも減らし、また視線を逸らしておく必要がある。
月はもう1杯、テーブルのカップを傾けた。
砂糖は入っていない。糖分もいいが、今はカフェインだけで十分だ。
中枢興奮作用。
すっ、と月の手が伸ばされた。頬に触れてくる手のひらに、
しかし竜崎は気付かずにいる。
影が、落ちた。そうして、次の瞬間、しっとりと重ねられる、濡れた唇。

「・・・っ・・・」

視界が遮られ、漸く竜崎はキスをされたのだと気付く。
はらり、と手から落ちる書類。ぐっと顎を上げさせられると、竜崎は顔を顰めて月から逃れた。
少しだけ、目元が赤い。そのまま、上目遣いに月を睨んでくる。

「・・・なに、するんですか」
「何って、キス」
「そういう問題ではなくてですね・・・」

呆れたような声音を紡ぐその唇は、それでも濡れたように赤く熟れていて、
また、触れたいと思う。今度こそ、深く味わうように。
有無を言わせぬまま、再び唇を重ねようとする月に、
竜崎は顔を背けた。

「・・・月くんのキスは、苦いので嫌いです」
「・・・・・・じゃあ、これは?」

元々、相手の破壊的な口内の甘さに耐えるべく、わざわざブラックのコーヒーを口にした月だったが、
ここまでストレートに"嫌い"と言われては、仕方ない。
ここは、彼のわがままに付き合ってやるか、と月はテーブルに手を伸ばした。
そうして、再び重ねられるキス。

「っん・・・っ・・・」
「竜崎、・・・口、開いて」

ザリ、と何かが削られるような音。2人の間に在るのは、角砂糖だった。角度を変える度に、互いの口内に広がる、どちらのものとも知れない甘い蜜。
角砂糖をそのまま、なんて初めて食べた。なんて甘さだろう。ここまでヒドいとは、
本当に脳まで腐ってしまいそうだ。
けれど、竜崎はうっとりと頬を染め、
ゆっくりとその大きな瞳を閉じている。それは、この甘美な誘惑に身を委ねた証。
もっと距離を縮めようと、月の膝が竜崎の座っていた椅子へと乗り上げる。
邪魔な足を下ろさせようと手を伸ばせば、
途端、ビクリと震える男のカラダ。
なれない格好は落ち着かないだろうが、まさか足を抱えたままで愛撫を続けるわけにもいかない。
抵抗の口を塞いだまま、ゆっくりと膝を割らせ、己の身を滑り込ませる。
月の身体を退けようと、突っ張るように胸に手が伸ばされる。
力があるんだかないんだか、ひどく細いその手首を掴んで頭上で縫いとめてやれば、
後はもう、ずるずると流されていく竜崎の身体。
口の端から含み切れない蜜が銀糸となって溢れる頃、
竜崎はすっかり力の抜けてしまった身体をぐったりと椅子の背もたれに預け、
呆けたように己の上に乗り上げる男を見上げていた。

そう、身体だけならば、簡単なのだ。身体だけならば。
この竜崎という男は、おそらく誰にも気を許すことはないだろう。
今も、これから先も、ずっと。
彼の本心がどこにあるのか、月にはわからない。自分が今目にしているこの存在すら、すべて作り物の演技でしかないのかもしれない。
全く、面倒な存在だ。
ましてや、コイツは自分をキラだと疑っているのだ。
だが、だからこそ、こうして深い関係を持っておくのも悪くはない。
付き合ってやるさ。お前が仕掛けた、このゲームにね。

「・・・そうやってまた、誤魔化すわけですか、貴方は」
「誤魔化す?心外だな。僕は付き合ってるだけだよ、竜崎。君の悪趣味な遊びにね」
「っ・・・」

ぐっと、男の下肢を握り込む。捕らえ所のない瞳が、一瞬、責めるような鋭いものに変わる。
こんな事、男相手にやるのはコイツが初めてで、
そしてきっと、最初で最後の相手だろう。全く、世話が焼ける。
服越しからその部分へ緩い刺激を与えてやれば、竜崎は焦らすようなその動きに、
もどかしげに身を捩じらせた。

「だってそうだろ?今日だって、わざわざ話し合い、と称して僕と二人切りになろうとしたのは誰だ?誘っていると思われて当然だろう」
「私は、君と腹を割って話がしたかっただけですよ?」
「だったら尚更だ。僕も、竜崎の"本当"を知りたいからね・・・」

どこまでが本当で、どこまでが嘘なのか。
騙し合いのようなSEXが、今、まさに始まろうとしていた。

「まったく・・・。夜神くんとのお付き合いは、大変ですね」
「その言葉、そっくりそのまま君に返すよ」

はは、と笑ってキス。そうして、手のひらはTシャツの裾の中へ。
ひくりと震えるのも無視して、捲り上げるようにして上へと這わせていく。
普段あれほどくたびれたような服ばかり着ているだけに、
何日も風呂に入らないような、私生活に関しては無頓着な性質かと思っていたが、
肌の思いのほか柔らかだった。そして、微かな石鹸の香り。
洗い立てのような瑞々しい肌に、口付ける。吸い付くようなそれは、男とは思えない程。
意外にも朱を刻みがいのある竜崎の素肌に、
月は丁寧に唇を落し始めた。

「月、くん・・・っ・・・、こんなことをして、楽しいですか・・・っ?」

ああ、楽しいよ。
常に演技ばかり見せられているなんて、僕は御免だからね。
取り繕うことすら出来ないほどに、快楽に溺れさせてやりたいと思う。もちろん、この僕の手で、だ。

「君の協力がないと、楽しくないな」
「・・・っ・・・」


唇に触れていたそれが、顎を通り、首筋へと降りる。浮き出る筋を舌で舐め上げ、喉笛に歯を立てる。
小さな震えと共に、喉がクッと鳴った。竜崎の弱い部分、ひとつ見つけた。
鎖骨を舌と歯で嬲りながら、シャツの下の手のひらは、胸の上の小さな突起へ。
本当に、可愛いくらいに小さい。
下着を捲り上げて見てやると、既に真っ赤に染まり、ツンと上を向いている。
爪先で潰すように刺激してやれば、漸く洩れてくる甘い声音。

そうだ、竜崎。そうやって、身も世もなく啼いているといい。
常に冷静で感情の起伏の少ないお前だって、所詮は人間。一皮剥けば同じだということを、
己の身体で評言してみせろ。僕は、それが見たいんだ。

竜崎は、快楽に耐えるように目を細め、そうして月を睨み付けた。

「・・・協力・・・、ですか」
「そう、協力、だよ。・・・例えば・・・」
「っ」

月の左手が、竜崎の身体と椅子の隙間に差し入れられる。するりと素肌の腰を撫でられ、
理性の瞳が一瞬揺らぐ。
けれど、それぞれの思惑を持つ2人にとって、理性を手放すことはすなわち"負け"を意味するのだ。
見上げてくる、強気な瞳。引く気などない、といった挑むような竜崎の視線に、
月は望むところだ、と口の端を持ち上げた。

僕がお前に溺れるのが先か、それともお前が僕に溺れるのが先か―――。

月は腰に回した腕に力を込めた。二人の距離が、ぐっと縮まる。

「腰、上げて」
「・・・どうして、私が・・・」

呆れたような声音の中に、微かな戸惑い。隠していても無駄だ。僕にはわかる。

「相互扶助だよ、竜崎。君の欲しいモノを、僕が与える。君は僕に、僕の望むものを与える。当然のことだ」
「私は、こんなこと望んでいません。勝手に与えておいて見返りを求められるなんて、御免ですよ」

竜崎の唇が紡ぐものは、常に正論だ。
けれど、この状況を変えられる力を、それは持ち合わせていなかった。月の唇が、彼の胸元を滑る。
浮き出た肋骨を這い、竜崎の弱い、小さな蕾へ。木苺のようなそれに、歯を立てる。
こういう時、言葉は無力だ。
どんな言葉よりも素直な互いの身体が、己の望むものを示してしまうのだから。
その証拠に―――・・・

「・・・っ・・・」
「直接、触れて欲しそうだな?」

胸を愛撫してやりながら、月は笑った。空いたほうの手で捕らえたのは、竜崎の雄。
布越しでもはっきりと分かる。この男は、確かに己の愛撫に感じていて、
もっと強い刺激を今か今かと待ち続けていることを。
張り詰めたそれの、心地よい硬さを楽しみながら、吸い付くようにキス。
場所を変えて何度もそうしてやると、さすがの竜崎を余裕を失ってきているのか、洩れる甘い声。甘い吐息。
月はベルトもしていないジーンズに手をかけ、ボタンを外させた。
そこに意識を向けさせるように、わざとゆっくり刺激しながら下ろされるジッパー。
蜂蜜の様な甘美な時間が、すぐすぐそこまで迫ってきている。
熱を帯びたそれを、月の手が直に捕らえたその時、
竜崎は思わず片足を椅子に持ち上げた。

「・・・あっ・・・」
「ははっ。子供みたいだな、竜崎」

普段の癖ということはわかっているのだが、それが脅える子供のように見えて、
月は声を上げて笑う。気分を害したのか、少しだけ竜崎の眉が寄った。
だが、既に彼自身は己を抱く男の手の中。それどころか、月は同意も求めずに、強い刺激を与えてくるのだ。
嫌でも襲い来る快楽から、竜崎が逃れる術はどこにもなかった。
もちろん、そんな事は竜崎自身、よくわかっている。逃げようとするほうが愚かだ。
だが、相手はこの男、夜神月。真面目な優等生で通っている、だがその本性は、大量殺人犯、キラなのだ。証拠などない。だが、これは確信。
そんな憎むべき敵に、自分は今、抱かれている。これほど危険な事は、そうないだろう。
だから、竜崎は、
己のありったけの神経を集中させて、月を見据える。
試しているのは自分なのだと。
少しでもキラであるかのような言動を見せれば、必ず見逃さない、と。
熱に浮かされ始めている瞳の中に、普段と変わらぬ観察眼を感じ取り、
月は喉の奥で笑った。
そうだ。そうでなくては、面白くない。
傍から見れば、ただ愛を確かめ合うようなSEX。だが実際は、互いを堕とし合う命懸けのゲームだ。

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