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「誤算〜Gallery〜」
13日ルールの検証のため、
夜神総一郎を始めとする捜査本部メンバー全員がアメリカへと旅立った。
嘘ルールをでっちあげた張本人である月は
もちろん同行を申し出たが許されず、
竜崎と共に、広い本部での留守を任される。
何かが、おかしかった。
総一郎のみならず、メンバー全員がアメリカへ発ったことも、
Lの代理人であるはずのワタリが彼らに同行しないことも、
そして何より、自分と竜崎、たった2人きりでこの本部にいられることも。
「二人だけになりましたね」
「何を・・・たくらんでいる?」
相変わらずの淡々とした口調に、
月は竜崎を睨みつけた。
この男の考えていることは、不本意ながら想像もつかなかった。
ただわかることは、
竜崎は常に、自分を見ていた。自分と、海砂とを。キラと、第二のキラとして。
「・・・今、ワタリに弥を連れて来させています」
「・・・・・・な、に?」
彼の考えが読めず、
月は眉を寄せた。
「私は、今でも彼女を第二のキラだと疑っています。―――そして、あの13日ルールも。もしくは、何らかの理由で、弥海砂には効かなかったと考えています。
今、私は再び、弥に顔を晒します」
「・・・なんだって・・・?」
わけが、わからない。
「彼女が本当に第二のキラならば、必ず私の名を弥の持つデスノートに書く。―――そこを抑えます」
至って冷静に言葉を紡ぐ竜崎に、
しかし月は動揺したように瞳を揺らした。
海砂が捕まるのは構わない。彼女は今後も一切口を割ることはないだろうし、
今度こそ苛酷な監禁で死んでしまっても一向に構わなかった。
だが、問題はレムだ。
今は、竜崎の思惑も知らずにミサが竜崎に会えば、名を書こうとするのは火を見るより明らかだ。
ミサは捕まる。レムならば、黙ってはいないだろう。
きっとその前に、Lを殺す。
だが、それでは駄目なのだ。
この、竜崎と2人切りの時に彼が死ねば、
真っ先に疑われるのは自分だ。
何より、竜崎を殺すには、まだ早計な気がした。
ただの勘だ。だが、今殺せば確実に、自分に火の粉が降りかかる―――そんな気がする。
「・・・駄目だ」
「どうしてですか」
見据えてくる瞳は、明らかに月を挑発していた。
自分が殺されるのなら、それが一番だろう、と。ミサの容疑として、
自分が直接手を下さずに済む―――そうだろう、と。
だが、月はその挑発に乗ることはなかった。
月は腕を伸ばし、ソファに座る男を背後から抱き締めた。
「ラ、月くん・・・?」
「竜崎。僕には、君が必要だよ。―――キラごときのために、命を投げ出すような捜査なんて、許さない」
「・・・なっ・・・」
予想だにしない言葉に、一瞬戸惑った隙をついて、
月は竜崎を押し倒した。柔らかなソファに、竜崎は乱暴に押し付けられる。
これに一番驚き、焦ったのは竜崎だった。
この部屋の状況は今、監視されている。
それも、キラ対策本部の全員に、だ。
そう、これはすべて、竜崎が練り上げた、夜神月と弥海砂の正体を白日の下に晒す罠だった。
全員をわざとアメリカにおいやったと思わせ、二人きりにする。
誰の目もないならば、本音を晒し、自分を殺そうとするだろうと思ったからだった。
だが実際には、今、月ではなく、自分こそが追い詰められていた。
衆人監視の中。
自分は今まさに、夜神月に犯されようとしているではないか。
「・・・やめて下さい、月くん。この部屋にも、いくつも監視カメラがつけられているんですよ」
「父さん達が帰ってくる前に、すべて処分すれば構わないだろう」
「っう・・・、月く・・・!」
今まさにリアルタイムで監視されているなど
つゆとも思わない月は、
「僕は、命を簡単に投げ出そうとする奴が大嫌いなんだ。絶対に、そんなことはさせない」
「・・・っ・・・!」
ビリ、と乱暴に衣服を破かれる音が、広い室内に響いた。
男の手で素肌を晒される己を、天井に設置された数々のカメラが捉えている。
激しい羞恥を覚えた。
月との関係は、捜査本部の誰にも知られていなかったから。
だが、だからといって、総一郎を始めとする皆に協力を得て、この環境を作ったというのに、
本当の事を月に告げてすべての作戦を台無しにするわけにはいかない。
「・・・っ・・・月くんっ!弥が、来るんですよ・・・!?」
「お前と弥は会わせないよ。彼女を第二のキラと疑うなら、尚更だ。・・・お前を、危険な目には、合わせない」
「っあ・・・!」
顕わになった白磁の肌に口付けられ、竜崎の全身が総毛立った。
首元の、Tシャツから覗くか覗かないかの位置に歯を立てては、音を立てて強く吸う。
嫌な水音と共に、鮮やかに残る濃紅の痕。やめて下さい、と既に掠れた声で竜崎は訴えるが、
一度欲望を感じてしまった月が、そう簡単に彼を手放すはずがなかった。
月は膝を動かし、思わせぶりに竜崎の雄を刺激した。
慣れた身体は、すぐに反応を示してくる。
「・・・っん・・・!」
「竜崎・・・」
耳元で囁かれる己の名が、辛い。
引き込まれてしまう。何にも邪魔されない、2人だけの夜ではないというのに、
ましてやこんな状況下で、馬鹿げている。
セックスなどしている場合ではない。本来ならば、今は、
捕らえるか、殺されるかの瀬戸際のはずなのに。
だが―――。
「んん――ーっ・・・!」
深く口付けられ、竜崎は眉根を寄せた。
引き剥がそうと、手で胸を突っ張るように。だが、抱きすくめられた腕の力は変わらない。
それどころか、重ねられた唇はますます深くなる。
絡む舌が、更に激しさを増した。
何度も何度も角度を変えては、竜崎の口内を蹂躙する月のそれに、
竜崎は息苦しさを覚えた。竜崎は思わず、彼の肩に縋り、ジャケットを引っ張った。
「・・・っは、はっ・・・ぁ・・・」
「やっと、素直になったな」
「っ・・・」
ゆっくりと糸を引いて、月の唇が離される。
楽しげに見下ろす男を睨み付けたが、しかし、頬を赤らめ、涙目になったこの状態では、
竜崎のその姿は月を煽るものにしかならない。
月は、今度は大胆に、手のひらで衣服の上から竜崎の雄をなぞり上げた。
「愛してるよ、竜崎。君も、そう思ってくれるだろう?」
「っ・・・」
ぞくり、と。
身体の奥が、疼く。
低くて、心地の良い甘い声音。至って真摯なそれが、
自分の中の深い部分を揺さぶってくる。
相手は、キラ。その確証を得るためだけに、自分は己の命を餌にしたのだ。
だというのに、殺されそうになるどころか、命を投げ出すような自分の行為を怒り、
そうして愛しているのだと囁く彼。
彼は自分を、本当はどうしたいのだろう。
こんな、自分を殺す絶好の機会を、みすみす逃すような男ではないはずなのに。
「・・・月、く・・・ぁ、っ・・・」
月の手が、竜崎の履いているジーンズの前に手をかけた。
もっと濃密な行為に移ろうとしているのがわかり、竜崎は恥ずかしげにそれを抑えようとするが、
月の唇に肌をなぞられて、耐え切れずに身を竦める。
四方八方から、沢山の視線を感じた。
彼らに、見られている。
だが、自分が不本意に犯されていると思われて助けに来られるのも嫌だ。
かといって、月とこんな汚らわしい関係を持っていたのだと思われるのも癪だ。
できることならば、もう、これ以上先に進んで欲しくなかったのだが、
けれど、月にはそんな言葉は通じないだろう。
最後の逃げ道は、彼に本当のことを告げること。
果たして、どちらが良いのだろう。
羞恥を感じてでも、このまま彼の様子を探ることと、どちらが。
「っ月くん、やめ・・・!」
「竜崎・・・、愛してる・・・」
「・・・っ・・・!」
ジッパーを下ろされる音が、いやに生々しく耳に響いた。
既に裸体を晒している上半身のみならず、全身を素肌にまで剥かれる。それも、月だけの前ではない。
すべて、知っていた。監視カメラの位置を指定したのは、他ならぬ自分。
まさに竜崎は今、
それに向かって生まれたままの姿を晒そうとしている。
耐え難い差恥だった。
ずっと、隠しておきたかった、月との関係。それは、「L」である自分にとって、恥ずべき事実。
自分ですら本当は、認めたくないのだ。
それか、こんな形で他人に知られてしまうなど、
苦痛でしかなかった。それこそ、今すぐ消えてなくなってしまいたいくらいに。
「・・・っやめ、お願いです、月く・・・っ!」
必死に紡かれる、声音。いつになく激しい抵抗に、
けれど月が、竜崎の一番恐れている事に気づくはずもなく、
一瞬怪訝そうな顔をするものの、少しだけ押さえつける腕の力を緩めてやるだけ。
普段のように、竜崎を甘やかそうと伸ばされる手のひら。
泣きそうな程にまで脅え、身を縮こませる竜崎を、
月の大きな手が彼の頭を宥めるように撫でる。
普段なら、不本意ながらも受け入れてしまう優しさも、
けれど今回ばかりは苦痛にしかならなかった。
この状況から抜け出す方法を、竜崎の頭はぐるぐると考えていた。
だが、おそらくは絶対に抜け出せないであろう事を、竜崎の心の底では気づいている。
彼―――夜神月を強く振り払うことのできない自分をこそ、
竜崎は嫌悪した。
「・・・月く・・・!せめてっ、部屋に・・・!」
「待てないよ、竜崎。それに、ミサが来るというのなら尚更だ。―――大丈夫だ、僕を信じろ。終わったらちゃんと、消してやるから・・・」
「・・・っそういうことじゃ、な・・・!」
バサリ、と乱暴に床に落とされる衣服。具体的なことを何も言わない竜崎の言葉が、
今の月に届くはずもない。再び胸元に顔を埋めた月に、
竜崎は唇を噛んだ。瞳をぎゅっと閉じ、目を背ける。いくつもの視線を、極力意識したくなかった。
出来ることならせめて、忘れたかった。だから竜崎は、
己を抱く男の背に腕を回し、しがみつく。
肩口に顔を埋めると、
耳元で男はくすりと笑った。竜崎の頬が染まったが、先の羞恥ほどではない。
竜崎の、甘えるような仕草に気を良くした月は、
頬に唇を落とすと、そのまま滑らかな肌を辿り、唇を重ねた。
何の躊躇いもなく舌を辛め、深く口内を味わう月に、竜崎もまた、意識が遠のくような感覚を覚えてしまう。
「竜崎・・・」
「っ・・・」
目の前の、不敵に笑う男を意識して、
竜崎は背に回した腕に少しだけ力を篭めた。
命を投げ出すような行為を彼は怒ったが、
本当はもう、今更なのだ。もう既に、竜崎は自らの手で己の名をデスノートに記述している。
高田清美の不審死、死神の出現、13日ルールによる夜神月と弥海砂の潔白の証明。
まるですべてが計画されたもののように、
己の推理は音を立てて崩れた。
すべてふりだしに戻ってしまったのだ。竜崎にとって、これほどの痛手はない。
だが、それと同時に―――。
恐怖を感じた。漸く自由になったというのに、
まるで自分を監視するかのように、ますます傍から離れなくなった夜神月に。
弥海砂がノートを掘り出していたことで、その不安は確信に変わった。
自分は、必ず殺される。
月は、変わらず自分を愛してくれていたけれど。
自分の中の正義のためならば犠牲も厭わない、
夜神月はそういう男だ。
だから、竜崎は。
自分の名を、書いた。殺される前に、死の予定を定める―――それしか逃れる方法は思いつかなかった。
あと、20日―――。刻々と迫る期日を前に、
竜崎は急に弱気になった。もちろん、そんな姿を微塵も見せる気はなかったけれど。
遅かれ早かれ、必ず別れの日は、来る。
すべては、自分が望んだ事。自分を命を犠牲にしてでも、
キラという大量殺人犯を白日の下に晒すために。
―――だからこそ。
今の竜崎は、月から与えられる愛情に、弱かった。
本気なのか演技なのか、わからなかった。だが、キラならば、自分を殺したいはずだ。
けれど、それがもし、ただの疑心暗鬼だったら―――?
ましてや本当に、夜神月がキラでなかったとしたら―――?
自分はただの犬死にだ。
それに―――、
「っあ、ああっ・・・ぃ・・・!」
「愛してるよ、竜崎。―――僕の前から勝手にいなくなるなんて、許さない」
「っ・・・」
なんて。
なんて甘く、優しい言葉を吐くのだろう。
どんなに長くとも、あと20日しか触れられない身体。彼の腕の中で、何度幸せだと思ったことだろう。
キラの、くせに。
心の奥底では、一番に自分の死を望んでいるくせに。
―――苦しい。
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