女性向二次創作サイト
星蒼圏 - 保管庫モバイル
「飛ンデ火ニ入ル、。」
「でもさ、琉河、」
「はい?」
キャンパスからの帰り道、肩を並べて歩きながら、
夜神月は思わずくすりと笑ってしまった。
隣にいるのは、世界的名探偵、L。本来ならば、自分などが目の当たりにできるはずもない相手。
もちろん、自分がキラとなり追われる立場になった今では、
大して奇跡的なこととも思えないのだが、
それでも、こうして彼が隣にいるのはなんとも奇妙な気がする。
「・・・なんですか」
「琉河はさ、僕のことをキラと疑ってるんだったよな?」
「はい。あくまで1%程度ですが」
1%。
上手い言い方だと思う。どうせ、99%近く疑っているくせに。
でなければ、L自ら自分に接触などしてくるわけがない。
大して情報もないはずの今、
それでも危険を圧してまでここに来たのは、
間合いを少しでも詰め、証拠と共に一気に片をつけたいからに他ならない。
だが、だからといって、まさかここまで張り付いてくるとは、
正直思わなかった。
「けど、だったらL自ら僕に接触してくるのは、危険だとは思わなかったのか?」
あの入学式は、確かに"キラ"にとって大きな打撃だった。
予測もしていなかった。
やはりLは、噂通り侮れない。
だが、だからといって、わざわざ自分と友達のような関係を演じ、
キャンパスライフを送る必要がどこにあるのか。
「危険は危険ですが、現場に出ることも情報を得るには大切ですから」
「だからといって、24時間張り付けられるわけでもないのに」
大学で、L―――琉河早樹が友達顔で夜神月に近づけるのはわかるが、
大学以外での時間は全て監視できるわけもない。
せめて、こうして大学帰りに街に寄る際、付いて来れる程度。
だが、だからといってそれ以外の時間に他の尾行がついているかというとそうでもなく、
家に監視カメラを置いている形跡もない。
これでは、Lが監視できない死角など、いくらでもあるではないか。
「こんなことより、どうせなら徹底的に監視するなりして僕がキラであるのかないのか確かめる、とかのほうがよかったんじゃないのか?」
「・・・そうなんですけどね」
それをやってみても駄目だったから此処まで来たのだとは、
当然、琉河は口に出さない。
そう、夜神月の室内だけで64個。死角などなかった。
夜神月を尾行していたレイ・ペンバーは、問題なしと報告していた。
外でも、家でもなにも不審な点は見られなかった彼。
キラでない―――そう考えるのが、普通だろう。
「でも、直接会ってみないとわからないモノ、って、あるじゃないですか」
「ふうん。で、ここ2週間で、僕についてわかったコトは?」
そう問われ、琉河は今一度、隣の夜神月をちらりと見やった。
正直、大した収穫はなかったといっていいだろう。
自分の監視カメラ網を掻い潜った時点で、そう簡単に尻尾を掴める相手でないことは、
重々承知だったが。
入学式には多少動揺を誘うことに成功したものの、
次の日には相手はポーカーフェイスを貫き通していたし、
当然、不審な動きも見られなかった。
反対に、危険を賭して自分が得られたものといえば、
「・・・月くんは、女遊びが激しい、ということぐらいですかね・・・」
「聞き捨てならないな。僕がいつ遊びで付き合ったって?」
「一度に4人の女性とお付き合いしているそうじゃないですか」
「別に付き合ってるわけじゃない。友達、ってだけだよ」
「・・・まぁ、いいんですけど」
別に、そんなことで問い詰めたいわけでもない。
大して情報もない中、彼の真実を引き出すための話題が少ないだけだ。
丁度、目に入った先にクレープ屋が見えた。
釘付けになっている視線を追った夜神月が、呆れたように肩を竦めながらも、
アイスとバナナとチョコとカスタードをごちゃごちゃにしたような、
少々値の張るそれを買ってやると、
琉河は感謝の言葉もそこそこに手の中のそれに夢中になっていた。
どうも、調子が狂う。
この男といると、疑われているという緊張感が長く続かない。
誰も知らない、正体不明の探偵、というからには、
たった一人で、誰にも頼らず、誰に心を開くこともなく生きてきたのかと思えば、
社会性など皆無に等しい態度。生活力などかけらも見当たらない。
これでは、誰かが世話をせねば
生きていくことすらできないのではないか。
案の定、たった一人で自分に張り付いているこの青年は、
度々非常識な行動をとっては、
それに耐え兼ねた夜神月にたしなめられていた。
こんな、世間知らずの子供のような男と歩いていれば、
緊張感などなくなって当然だ。
ましてや、相手は口では疑っているといいながら、そんなそぶりは一切見せないのだから。
こうして、たまに確認しなければ、
それすら忘れてしまいそうになってしまう。
月はちらりと、いまだに何も言わず食べ続ける琉河早樹の横顔を見やった。
心なしか、不満そうな顔をしている。
月は首を傾げた。先ほどのつまらない話題にせよ、
いつもの彼らしくない。
「なんだ、琉河。妬いてたのか?」
「なんで私が貴方に妬く必要があるんですか」
普段、何か夢中になって食べている時には
声を掛けても反応が曖昧なだけに、
打てば響くように返ってきた琉河の声音が面白かった。
「昨日、先約があって琉河の誘いを断ったからね。図星だろ?」
「残念ながら、ただの自意識過剰ですよ」
「ふうん?」
こういう時、素直でないのは本当に彼らしい。
琉河のきつい一言も、全く意に介すことのない月は、
方眉を軽く上げただけで、
琉河のほうを見やった。
「じゃあ、"友達"らしく、うちに寄って行けよ。」
「は?」
意味がわからない、という表情をする琉河に、
今日は夜まで家に誰もいないんだ、と意味深に笑う夜神月。
背後では、先ほどまで久しぶりの家族の留守中にゲームができる、と喜んでいた死神が
不満を訴えたが、
当然月は気にしない。
「何がじゃあ、なんですか・・・」
「僕をキラかどうか見極めたいんだろ?プライベートに踏み込んだほうがよりわかりやすいんじゃないかと思ってね」
夜神月の部屋など、もう見飽きている。
何せ、24時間、5日にわたって監視を続けたのだから。
ましてや、敵が自ら門戸を開いている場所に足を踏み入れるなど、
わざわざ罠に嵌りにいくようなものだ。
まったく、馬鹿げている。
「・・・自分から踏み込ませること自体、怪しいでしょう」
「僕は疑いを晴らしたい一心なんだ。そのためなら、僕の全てを見せたって構わないよ」
はは、と笑い声を上げる、いかにも演技のようなその態度。
琉河は顔を顰めた。
何やら雲行きが怪しくなってきた会話と共に、
近づくのは夜神月の住む家。
初めてではない。
初めてではないが、果たして彼の部屋に足を踏み入れることで
自分に何の益があるのか。
彼の何がわかるわけでもない。
だが、かといって極力彼の監視をしていたいはずの琉河がここで夜神月と別れるのは、
逃げのようにも思えた。容易に予想できる先の行為に、
脅えているとでも言わんばかりの態度。
夜神月は、ただ笑うばかり。
どうする?とからかうような瞳で自分を覗き込んでくる男に、
琉河は意地のように睨み返した。
心の奥底では、愛されたいと願っている。
いや、愛されたいという表現はおかしい。他人を見ているのが嫌だ、といえば正確だろうか。
己がキラと疑った男。彼の本心が読めるほどに、
真正面から向き合っていたい。
そうして、彼にもまた、自分を見ていて欲しいのだ。
何故かなんてわからない。
自分の本心がここまで理解のできないものだと知ったのは
つい最近だ。
夜神月。敵であるはずのこの男といると、
調子が狂う自分がいる。
そうして、それを何故か不快に思わない自分もまた。
「さ、入れよ。」
目の前には、夜神月のテリトリー。
逃げたいと思った。
心の底に足を踏み入れたいと思う自分がいたから、尚更。
前にも、後ろにも、足が動かなかった。こんな自分を、琉河は知らない。
ここから去る理由を、必死に探した。
嫌だと一言言えればいいものを。なぜ、それができない。
「琉河、」
「・・・・・・っっ」
一瞬の躊躇が命取りになることぐらい、
わからない琉河ではない。
ぐい、と手首を引かれ、月の家の玄関に引き入れられた時点で、
もはや琉河の負けは確実なものになっていた。
背後のドアが、音を立てて閉められた。
バランスを崩した彼の身体を、
月は腕に抱き締める。すぐに腰に絡みついてくるそれは、
離す気などないのだという強い意志を伝えてくる。
この男こそ、なぜ自分などに興味を示すのだろう?
もし本当にキラでないのなら、己を疑う自分に憤慨しこそすれ、
そんな男を傍に置こうなど思わないはずだ。
自分を傍に置きたいと思うのは、彼自身がキラだからに他ならない。
ならば、自分は?
こうして、彼の思う壺に嵌ることが、
この先キラを追い詰めることに繋がるとでもいうのか。
「―――んんっ・・・う・・・」
眉を寄せる。片腕で腰を引き寄せられ、
もう片方の手は己の顎を掴む。すぐに影が落ち、唇が触れ合った。
ジーンズの上から、指が食い込むような強さでそこを掴まれ、
そうして、口内はすぐに舌に蹂躙されるのだからどうしようもない。
琉河は形だけ、抗った。
月の胸に、腕を突っ張って。もちろん、月は動じない。
本来の琉河ならば、蹴り飛ばしてでも逃げ出すことができると、自分も相手もわかっているだけに、
そんな弱々しい抵抗は、
ただ男の欲を煽るだけだった。
「琉河、・・・」
唇が一旦離され、興奮を隠し切れない声音が目の前の男の名を呼んだ。
いつまでも抱えたままの格好ではいられない。
抵抗を抑え込むように、
月は琉河の身体を背後の壁に押し付ける。
隙があればすぐにでも逃げられそうな相手だ、
月にも余裕はなかった。
己の熱を煽ろうと性急に事を進めようとする男の淫らな手に、
琉河は顔を歪ませた。
靴を履いたまま、石畳の玄関で衣服を乱されている状態。
月は夜まで誰もいない、と言い切ったが、
万一誰が帰ってこないとも限らない。
こんな場所でこれ以上素肌を晒すのは、と、さすがに琉河の理性が邪魔をした。
その間にも、シャツの裾からは男の手。
息が上がるのを、抑えられない。
「っ・・・ぁ、ラ、月く、っ・・・ここでは・・・!」
こんな関係を容認しているような自分の発言は気に入らないが、
今はそんなことを考えている暇はない。
前を緩めようとと蠢く手を、必死に押さえつける。
その間にも、深まるキスは口の端を汚していた。
含み切れない体液が、溢れる。
筋を作るそれを、月の舌が舐め上げる。
「っや、め・・・、待っ・・・」
「待てない」
けれど、月の手は止まらない。
ジーンズのジッパーが下ろされ、内部に入り込むそれに、
ますます琉河の眉が寄る。
それと同時に、己の身体もまた同じように興奮していることに気付かされ、
琉河は必死になって月を引き剥がそうとした。
二の腕を掴み、彼の動きを牽制する。
自分のプライドにかけて、このまま彼のいいように犯されるのだけは避けたかった。
「・・・っ、せめて、部屋に・・・!」
「部屋?」
耳元で、くすりと笑われる。
琉河の顔が、一気に朱に染まった。なんという失言をしてしまったのだろう。
[NEXT]