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「Feel Over〜前編〜」


「はぁっ?!なんでだよ!!」

エドワードは目の前の駅員に食ってかかった。
チビ、などと気に障ることを言われた時のようなその勢いにアルフォンスは慌てたが、
たしかにそれも致し方ないだろう。
今にも殴りかかりそうな兄の剣幕に、アルフォンスはため息をついた。



エドワード達は、東方司令部に向かうべく列車に乗っていた。
だが、イーストシティまであと2駅というところで、原因不明の足止めをくらったのだ。
それがほんの30分ならまだしも、1時間となればさすがに乗客も苛立ち始め、
同じく痺れを切らしたエドワードは駅員を問い詰めたのだった。

「だぁら、なんで止まってんだか説明しやがれってんだよ!!!」
「で、ですから、今確認中で・・・」

怯えるように話す駅員にガンを飛ばす少年は、しかしそれなりの理由もある。
ただ旅をしているだけならば、1日や2日町に足止めさせたとてさして問題はない。
だが、今回は違った。
エドワード達は東方司令部に向かっていた。
国家錬金術師の更新査定を、つい昨日まですっかり忘れていたのだ。
それに、2ヶ月前エドワードは司令部にいつマスタング大佐に査定前には戻ると約束していた。
それを忘れてふいにしてしまったら、あの自分勝手な男のことだ、
きっと仕置きと称してひどいことをされるに決まっている。
自らのそんな危機的な状況は、だが無情にも明日に迫っていた。

「・・・さ、先の駅で脱線事故が起きまして・・・」
「脱線事故ォ?!」
「は、ハイ・・・。それで、線路の点検もありますし、テロ、という可能性も・・・・・・」

びくびくと話す目の前の男に、エドワードは眉根を寄せた。
なんで、よりによって今日この日に、事故なんか起こるのだろう。
もう少し人のことも考えやがれ、と無理なことを毒づいて、エドワードは舌打った。

「・・・で、復旧はいつ頃?」
「・・・・・・先ほどの連絡によりますと、おそらくお客様方には駅周辺で1晩は待っていただくような形になるかと・・・・・・」
「・・・っふざけんなっ!!明日は・・・」
「まぁまぁ兄さん。どうせ2駅だけなんだし、今夜はここでゆっくりしていってもいいんじゃない?締め切りは明日でしょ」
「・・・ううっ・・・」

エドワードはぎりり、と奥歯を噛み締めた。
確かに、アルフォンスの言うとおり、書類は期限までに出せば問題ない。
だが、問題はマスタングだった。
そもそも、こんなギリギリに来てその上事故で足止め、なんて話しただけで嫌味を言われそうだ。
嫌味を言われた後、なにをされるかわかったものじゃない。
内心非常に青褪めるエドワードは、しかしどうしようもない状況にため息をついた。

「歩いて・・・・・・つくかな」
「無理無理。あきらめて今夜はここで宿を取ろうよ、兄さん」

駅員の説得に不満を言いながらも、列車を降り、近い場所の宿を見つけようとする人の波にアルフォンスは紛れていく。
はぁ〜・・・と深いため息をついて、エドワードも仕方なくそれに倣った。












「・・・ったく、明日には直るかなぁ。。。」

はぁ、とため息をついて、エドワードはテーブルの上に頬を乗せた。
エドワードとアルフォンスは食事のために宿の食堂に来ていたのだが、
そこではラジオが流れており、復旧作業状態を放送していた。
1日で復旧する、とは言っているが、さて、どうなることやら。

「あーあ、ついてねぇなぁ」
「しょうがないよ。そもそも忘れてたのが悪いんだし・・・」
「・・・弟よ、それは言わない約束・・・うぅ」

はあぁ、とまたもやため息をつく。
今夜は早寝でもして、明日の朝になっても復旧していなければ図書館で時間を潰すしかない。
仕方ないな、とエドワードは席を立った。
アルフォンスもそれに続く。

「ああ、兄さん、一応大佐に連絡いれといたら?」

約束してたんでしょ、と言外に言われ、う、とエドワードは顔をしかめる。
今ロイに連絡などいれたら、何を言われるかわかったものではない。

「・・・別に、いい。まだ間に合わないと決まったわけじゃないし」

渋った挙句、唇を尖らせてフン、と鼻を鳴らすエドワードに、今度はアルフォンスがため息をついた。

「それじゃあね、兄さん。暴れてないで、早く寝てね。お腹冷やしちゃだめだよ」

アルフォンスの世話焼き女房のような言葉にわーってるよ!と肩を落として、
エドワードは自分に宛がわれた部屋に入った。
結局、あのまま列車にいた者たちが周囲の宿を独占していて、
結局エドワード達は駅から外れた人気のあまりない宿を取ったのだが、
部屋に電話が置いてあるあたり、なかなか高級な宿のようだ。

「・・・・・・・・・・・・・電話、ね・・・・・・」

そうそう電話など見かけない今の時代、部屋に電話が備え付けてあるなんて誰かの陰謀だ、とか思いつつ、
エドワードは頭を抱えた。
先ほどのアルフォンスの言葉が頭を過ぎる。
確かに、ロイに連絡を入れるべきだとはエドワードも思っていた。
だが・・・、絶対ねちねちと嫌味を言われる。絶対だ。賭けてもいい。
はぁ・・・・・・と思いつつ、エドワードはいつになく重い気がする受話器を手に取った。
交換手が出たところで、軍の回線に繋げるコードと名を名乗り、マスタング大佐を呼び出してもらう。
なぜか湧き起こる胸の高鳴りがバカらしくて、エドワードはため息をついた。

「やぁ」

嫌味なほどの爽やかな声に、エドワードは視線を泳がせた。

「久しぶりだね、エドワード。君から電話をくれるなんて、いつ以来だったかな」
「あーーーー、大佐。あのさぁ、ちっと問題がありまして・・・」
「ああ、事故のことか。まさか君が引っかかるとはねぇ。足止めされてる乗客たちの名簿を見て驚いたよ」

まったく、明日は査定の期限だぞ、と呆れるような口調をスルーして、エドワードは言う。

「あー、やっぱ、知ってた。んじゃ、そゆことで、俺、遅れるかもだから!!よろしく!!!!」

あわてて切ろうとするエドワードを感じて、ロイは声をあげて笑った。

「まぁ、待ちたまえよ」

焦るでもなく、ロイは受話器の先のエドワードを呼び止めた。
そのまま、何も言わず、先のエドワードを感じる。
電話ごしとはいえ、久しぶりのコンタクトに、ロイは悦びを隠せずにいた。

「・・・なんだよ」

どこか不穏な空気に、エドワードは眉を寄せた。

「君、今は1人部屋なのかい?」
「あー・・・まぁそうだけど・・・って何よこしまなこと考えてんだよ?!あんた執務室だろ!?」
「確かに執務室だが、私のほかには誰もいないよ」
「そういう問題かじゃねぇっ!!!!」

具体的なことなどまだ何も言っていないくせに真っ赤に頬を染めているらしいエドワードに、
ロイはますます笑みを浮かべた。
さて、何をして過ごそうか。

「・・・つか、あんた事故騒ぎで急がしいんじゃないのかよ」
「さぁ。見たところテロでもないようだし、問題ないんじゃないか?」
「んな無責任な!」
「・・・・・・エドワード」

ロイの低く静かな声音に、びくり、とエドワードは身を震わせた。
2ヶ月ほど聞いていなかっただけに、甘やかなその声が必要以上に耳に響く。
落ち着いたはずの鼓動がまたもや早まる様に、エドワードはぶんぶんと首を振った。

「エド?」
「・・・なんでもない!もう、俺切るからなっ!!」
「素直じゃないな」

やれやれ、とため息をつかれ顔を真っ赤に染めた。

「折角電話をくれたのに、もう?・・・寂しいな」
「何、言ってんだよ、あんた・・・・・・」
「逢いたかったよ、エドワード」

ロイの真摯な声音に、エドワードは戸惑った。

「明日の日を待ちわびていたよ。それこそ、指折り数えてね。いつ君が来てくれるかと・・・」
「わ・・・悪かったな」

電話越しだというのに、エドワードはそっぽを向きながら応じる。
エドワードの動揺ぶりが可愛らしい。ロイはくすりと笑った。

「愛してるよ、エドワード」

ちゅっ、と音を立てて受話器に口付けられ、身体中の血液が沸騰した気がした。

「も、もう、切る!!おやすみっ!!!」

恥かしさに耐え切れず、エドワードは相手の返事も待たず受話器を叩きつけるようにして置いた。
チン、と鳴ってロイとの会話が途切れる。
はぁ、はぁと肩で息をしてから、エドワードは盛大にため息をついた。

「あの野郎・・・・・・」

だから嫌だったのだ。
今は1人の部屋だったからよかったものの、公共の電話でなんかかけていたらどうなっていたことやら。
間違いなく、同じように口説かれ、そして頬を染めていただろう。
相手のことなどお構いなしのロイの性格は、嫌というほどわかっていたから。

「・・・っ」

ベッドに仰向けに身を預けたエドワードは、脳裏にロイの姿を思い描いていた。
先ほどの甘やかなロイの声音を思い出し、唇を噛む。
久しぶりのそれが、少年の身体に疼くような痺れをもたらして、エドワードは吐息を洩らした。

「っ、あ・・・」

眉を寄せ、欲望のままに手を伸ばすと、微かに熱を帯びたそれが手のひらに触れた。
たったあれだけの会話で、下肢がもたげてしまったのか。
バカらしくて仕方なくて、それでも身体に燻る欲には逆らえない。
エドワードは下肢を纏う衣服を性急に取り去ると、直接欲望を握り締めた。

「・・・ち、くしょ」

エドワードが直に触ると、それはみるみる形を変え、硬く張り詰めた。
熱い吐息を吐いて瞳を閉じる。
たったあれだけで忘れかけていた熱を思い出させられて、エドワードは小さく毒づいた。
そうだ、本来ならば。
あの列車さえ事故らなければ、今頃は司令部についていて、
相変わらず嫌味なロイに目一杯反発して、結局なんだかんだで家にお持ち帰りされていたかもしれないのだ。
もちろん、決して期待しているわけではなかったが、
旅を続けている手前、彼を思い出して身体の飢えを自覚することもしばしばある。
ふとした時に見る卑猥な夢を思い出して、エドワードはあぁ、と息を吐いた。
まったく、あれもこれもみんな。
列車が事故ったせいだ。

「あっ・・・ん・・・っ・・・」

上半身に纏っていたシャツを捲り上げて、エドワードは機械鎧の右手で胸元を探った。
冷たい金属が肌に触れ、ぞくりと肌が粟立つ。
触れた突起を摘んできつめに刺激を与えると、勝手に口元から声が洩れた。
隣の部屋には弟がいる。聞こえていないことを祈りつつ、エドワードの手は止まらない。
ロイに抱かれている時のことを思い出して、彼がしてくれていたように肌を辿ると、
痺れるような刺激が下肢に走った。

「あ・・・はんっ・・・んっ・・・・」

手のひらに包まれたそれは、既に蜜を零し、エドワードの手を汚していた。
ぬめりに助けられ、砲身を激しく擦る。
声を漏らすまいと唇を噛んだが、上手く声を抑えきれない。
ひっきりなしに荒い息を吐いて、エドワードは性急に快楽を追った。

「あっ・・・やだ・・・ロイっ・・・・・・!」

脳裏に描く男の名を呼ぶ。
宙に伸ばされる手を取る存在は誰もいなかったが、それでも何かにすがるようにエドワードは手を伸ばした。
ぐちゅぐちゅと卑猥な音が部屋に響く。
限界に眉を寄せるエドワードは、さらに激しく手を動かした。

「あんっ・・・あっ・・・ふ・・・」

エドワードの手の中で、彼自身はこれ以上ないほど張り詰め、そして震えていた。
少年の身体を幾度となく快楽の波が襲う。だが、あと一歩のところで上り詰めることができず、
エドワードは唇を噛んだ。
1人では足りない。
自分を快楽の極みへ押し上げてくれるのは、彼の他にいないのだ。
彼―――会いたくて、でも会えなかった人。きっと、彼だって待ってくれていたはずなのに。

「・・・っ、あ・・・」

身体に燻る熱に、エドワードは顔を顰めた。
もっと、奥が疼いている。
前だけでは足りない。もっと、もっと―――奥への刺激が欲しくて。
エドワードは羞恥に震えながら、彼の指を背に這わせた。
背骨あたりを辿り、下へ下ろしていく。
双丘の奥にあるその部分が指先に触れ、エドワードは息を呑んだ。

「あっ・・・」

濡れた感触に、思わず声を漏らした。
つぷり、と爪を立てて、内部に侵入する。ひくつく内壁の熱さに少年は唇を噛む。
ぎゅっ、とシーツを掴んで襞が強く擦れる感覚にエドワードは必死に耐えた。
内部が熱い。溶けてしまいそうなほどに。

「や・・・、ああっ・・・」

指の付け根まで深く内部に押し込むと、エドワードの身体が揺れた。
たった1本入れただけで、背筋にぞくりとしたものが走る。
エドワードは息をつくと、ゆっくりと内部の指を動かし始めた。

「んっ・・・あ、」

内壁を押し広げるようにして指を曲げると、押し出されるように声が洩れた。
そのまま、周囲を辿る。指先がとある1点にあたり、エドワードの身体がひくつく。
仰け反った体勢のままでぐちゅぐちゅと中をかき回せば、
先ほどの鋭い快感とは違う、深く重く身体の奥底に沁み込むような快感を覚えた。

「あっ・・・ロ、イっ・・・」

もはや、エドワードはここがどこかすら理解していなかった。
ただ、自分が愛する男が与えてくれるような―――、彼が与える快感に溺れていた。
指を増やし、激しく掻き回す。
奥の疼きに合わせて、前を握る手の動きもまた激しくなる。
エドワードは潤んだ瞳を揺らした。
限界に顔が歪む。

「っ・・・、ふ、うんっ・・・、ああっ・・・ロイ・・・!」

目を閉じれば、浮かぶ男の顔。
全身がぶるりと震える。
エドワードのからだを苛む熱は、彼自身の手によってついに解放された。
本能的に目尻から流れる涙がシーツを濡らす。
解放の余韻に浸りながら、エドワードは放心したようにそのまましばらく動こうとはしなかった。























・・・部屋で本を読んでいたアルフォンスは、珍しい車の音に顔を上げた。
この町は、駅があるだけで特に大きな町ではない。
いわばイーストシティと別の大きな町を繋ぐ宿場町である。
ただでさえ車など、私有しているものは少なく、主に軍が所有する軍用車が主である。
珍しいなと思いつつ聞いていると、
偶然か必然か自分の泊まる宿の前で止まったらしく、音は聞こえなくなった。
どこかのお偉方が泊まりに来たのかそれとも軍の者か。
興味をそそられたアルフォンスは、部屋を出ると階下へ足を運んだ。
まだ皆が休む程の遅い時間ではなかったから、人はまばらに見かけたが、
階下に進むにつれてどこかざわついた空気に、アルフォンスは首を傾げた。
フロントに、見覚えのある青い軍服。
やはり軍人だ。
しかし、こんな宿に何の用だろう。
だが近づくにつれて、アルフォンスはその人影が自分のよく知る人物であることを悟った。

「あ・・・大佐!!」

アルフォンスが叫ぶと、肩書きを呼ばれた男はアルフォンスのほうを振り向いた。
漆黒の髪と同じく黒い瞳は、自分達が10かそこらだった頃からの付き合いのある東方司令部司令官のものである。

「ああ、アルフォンス君。よかった、今君たちを呼んでもらおうかと思っていたんだよ」

にこりと笑みを浮かべるロイに、アルフォンスは頭を下げた。
ロイは兄弟にとって恩人であり、今では後見をしてもらっている立場である。
それなのに、自分の兄のあの反抗的な態度といったら。
エドワードが大佐の来訪を知ったときのことを考えて、アルフォンスは内心ため息をついた。

「あの、大佐、どうしてここへ?」

あの列車事故のせいで、軍部は忙しいのでは、と言うアルフォンスに、ああ、とロイは応じた。

「そう、その件でね。
 先ほど、現場を確認してきたのだが、どうやら今現在ラジオで放送しているような程度では収まらないようなんだ。
 今までテロの見方は少なかったんだが、一つ決定的なものを見つけてね。
 明日には奴らの犯行声明があるかもしれない。
 ・・・ということは、君達もまたここでしばらく足止めされることになる。
 だがそれでは、君の兄君が暴れるだろう?
 足を伸ばしついでに、君達を送ってあげようかと思ってね」

ロイの優しい気遣いに、アルフォンスは頭を下げた。

「ありがとうございます。兄さん、今日足止めされただけでもそれはもうひどい焦り様で」

エドワードの駅で見せた剣幕を思い出す。
このままロイの言うようにテロリストのせいでまた2、3日も足止めされたら、
多分自分には手に負えなくなる。
アルフォンスはそんな状況を見越して車を寄越してくれたロイに感謝をしながら、
エドワードを呼びに彼の部屋へ足を運んだ。
兄のことだ、まだ素直に寝てなどいないだろう。
部屋の前にくると、アルフォンスは扉を叩いた。

「・・・兄さん、起きてる?兄さん!」



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