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「共逝
  〜たいせつな、もの。」


前編


雨が、降っていた。
重苦しいような、暗い雨。警備のために外に出ていたムウ・ラ・フラガは微かに眉根を寄せる。
―嫌な、感じがするな。
生まれついて持ち合わせた勘の良さとその実力で部下達を導いてきた彼は、
今回もまた胸の内を過ぎる漠然とした不安を頼りに、警備員たちを配備させていた。
地球軍の所有する、最重要気密である研究所。
関係者以外、その存在を知る者はいない。知った者には、一人残らず"死"が待っている。
一人残らず殺せ―――。それが、今、この場所を警備している己への命令。

(・・・皆殺し、か)

彼の頭の上に広がる空と同じように、フラガはその人好きのする顔を曇らせた。どれほど従いたくない命令でも、
今の自分は、「地球軍」。
一介の軍人でしかないのだ。他に、どんな道が選べるというのだろう?















「ねぇ、あれが?」

窓から見えてくる建物を指差して、少年は明るい声を上げた。
ここに着くまでしばらく森の中を走っていたから、つまらなかったのだろう。ようやく開けてきた視界に子供は目を輝かせる。思わず身を乗り出しそうになるのを、クルーゼは腕を引いて押さえた。

「そうだ。あれが私たちの今回のターゲット―――地球連合軍、大西洋連邦の所有するX-Vだ」
「こんな奥まったトコにあるなんて」
「それだけ、極秘ということだろう。電波も通信も全くきかないようだしな。なかなかのハイテクノロジーだ」

同じように窓の外を見やりながら、クルーゼはそう言う。
隣に座っていた少年は、クルーゼの顔を見上げ、話を聞き、そうしてまた外を見た。そろそろ、森も抜ける。そうすれば、不審者の侵入に気付くことだろう。
キッ、とタイヤの軋む音。予定通りの場所だ。クルーゼは無言で頷いた。
手にした銃を、確認する。少年もまた、同じように手にしたライフルの安全装置を外していた。

「気をつけろ。私たちもできるだけの支援はしたいが、こちらの優先はデータの抽出だ」
「わかっている。それより、範囲外への退避を怠るなよ。巻き込まれて死ぬぞ」
「警備はなかなかのモンだしね。・・・見ろよ、前から後ろまで、ガッチリ、って感じ。さて、どうする?」
「へいきだよ。誰も俺たちには叶わない。心配しないで」
「心配?してねーけどよ!」

メンバー達のやりとりに、軽くクルーゼは口元を歪めた。
今回の作戦は、Blue Eyes―連邦製コーディネイター精鋭部隊―、総力をあげて行われるものだ。
烏合の衆であるナチュラルの中で、Z.A.F.T.軍にとっての最大の脅威。すなわち、コーディネイターと同等、いや、それ以上の力を持ち、我らを脅かす者達。その開発ルートを一掃する、そのための作戦だった。
その中で、一番の砦が、この地球連合軍、大西洋連邦第5研究所―通称、X-V(エックス-ファイブ)―である。強化人間や戦闘用コーディのデータを全て掌握する、文字通りマザーコンピュータのような場所。
どれほど他施設に打撃を与えても、この場所を潰さねば意味がない。
そう結論に達したZAFT軍は、厳重に守られたこの場所を攻める作戦を練り上げたのだった。
もちろん、極秘にである。

「では、後で合流しよう。無事を祈る」
「そちらもな」

クルーゼは、少年を伴って車を飛び降りた。車に乗っていた彼らは、スパイとして正規の研究員に加わっていた。
作戦では、別ルートから攻撃を加えることになっている。

「レイ、おいで」
「はい」

クルーゼは少年を小脇に抱え、地面を蹴った。
森の木々に囲まれたそこは、どれほど周囲に警備兵を配置していても、死角があるのは否めない。
比較的配置の少ない一角に走った彼は、警備兵の背後に手刀を叩き込んだ。戦いの、始まりだ。周囲の兵たちが一斉に銃撃を始めようと身構える。だが、銃声は響かない。
鳴ったのは、消音機のついた銃の、微かにくぐもったような音だけ。
そうして、次の瞬間には、どさり、と重いものが倒れ、周囲の空気を揺らした。
第一撃に気付かなかった者たちは、己が管轄の場で熱心に待機している。まんまと裏口から侵入を果たした二人は、そのまま気付かれる前に、と目標を目指し奥へと進んでいった。
30分後には、外部から本格的な殲滅作戦が開始される。特殊部隊である彼らの仕事は、本隊の攻撃がより有利に運ぶよう、内部支援をすることだ。再び鈍い音がして、人が倒れる。運悪く鉢合わせた、一介の研究員だった。

「研究エリアは構うな。待機中のパイロットを優先に」
「じゃあ、俺は訓練エリアに行くよ。ラウは―――・・・」

だが、少年が言葉を言い終える前に、ぞくり、と背筋に走る違和感。

「―――!!」
「なに・・・?」

そして、その違和感を裏付けるように、一帯に警報が響き渡った。
予想外の展開に、クルーゼは軽く舌打った。これでは、己の描いていた計画がすべて無に帰してしまう。

「ちっ・・・」
「・・・早かったね」
「仕方ない。混乱に乗じてできる限り内部制圧するしかないな。・・・レイ、お前は研究エリアへ向かえ。事情が変わった、クラウド達の援護をしてやれ」
「ラウは?」

少年に瞳を傾けられ、クルーゼは数瞬考え込むように押し黙る。
頭を過ぎる、あの感覚。いまだつづくこれを、果たして無視して構わないものだろうか。

「・・・私は、防衛ラインの司令室を探す。なかなかできた人間がいるようだ。大事になる前に、潰しておくに限るからな」
「わかった。気をつけて」

クルーゼは背を向ける少年を見送ると、己は踵を返し、奥へと走った。
場所を正確に知っていたわけではない、ただの勘だ。だが、それにしてはしっかりとした足取りで、クルーゼは司令室へと向かう。
もう必要のなくなった消音機を無造作に放り、迫る兵士達を容赦なく撃ち抜いていく。
その間にも、クルーゼに訴えてくる重苦しい感覚は、確実に"何か"の存在を捕えていた。"何か"―――"誰か"。ただの人間たちとは違う、何か、大きな―――、"存在"。

―――まさか・・・?

次第に強くなるそれに、クルーゼは眉を顰めた。
覚えのある、感覚。近づくにつれ、それは確信となる。己が向かう先にいる人物―――、それが、誰なのか。
手榴弾のピンを口で抜き、それを投げる。
一瞬ののち、塞いだはずの耳すら劈くような爆発音と共に、所内の人間達の呻き声が響いてきた。
辺り一面、火の海と化したその場所で、しかしなおもあの感覚がなくなっていないことに、
クルーゼは微かに苛立ちを覚えた。
己の攻撃にも倒れない、そのしぶとい生命力に、などではない。
こんな場所にいて、さらに警備などという任に着いているという、その事実にだ。
パキリ、と破片を踏んで、室内を歩く。燃え残った設備の裏側から、なおもしつこい"殺意"。躊躇わず、引き金を引く。苦痛に喘ぐ者、目の前にした恐怖に動けないでいるもの、既に事切れた者達の屍。
警報が鳴ってわずか数分。頭を潰せば残りの手足など取るに足らない。逃げ出す背にすら銃を傾ける。
言葉なく倒れ込むそれに、微かに口元を歪めて。クルーゼは笑みを浮かべた。
恍惚。
人を殺すことに、今更抵抗などない。あるのは、
こんな愚かなはずの施設を、軍命として守り、そして命を落とす、つまらぬ人間達に対する憐みだけ。
不意に、すぐ背後で撃鉄の構える音がした。

「手をあげろ」
「・・・」
「貴様の罪状は明らかだ。大人しく捕まってもらおう。さもなくば・・・」
「さもなくば・・・、なんだって?」
「―――っ!!」

含み笑いを浮かべてそう告げられ、背後の警備兵の顔が怒りに歪む。衝動的に引き金を引こうと力を込めて、だがしかし、それがクルーゼの頭を貫くことはなかった。
天井に響く銃声。手首を乱暴に捕えられ、勢いで身体がバランスを崩す。背から倒れ込んだ衝撃に、彼は思わず呻いてしまっていた。
しかし、痛みに顔を顰めているような余裕はない。すぐに襟元に手を伸ばされ、引き上げられる。
片腕だけで支えられ、締め上げられる喉元に、目の前の彼を苦しげに睨んだ。

「―――っう・・・!!」
「何故、貴様がここにいる、ムウ・ラ・フラガ」

男の怒気をはらんだ声音に、ムウ、と呼ばれた彼は眉根を寄せた。
覗き込んでくるのは、敵軍の特殊部隊。あれほどの包囲網をかいくぐり、既に自軍に多大な被害を与えている男。
だが、本当の事情は、もう少し複雑だ。
いい加減苦しさに、思考が歪む。必死に逃れる術を考えようとしたその時、男の背後から、叫び声が聞こえてきた。生き残っていたらしい兵士の一人だ。だが、これでは―――

「逃げ・・・っ!!」
「フラガ少尉!!・・・っぐあああっ!!!」

しかし、フラガの必死の叫びは、届くことはなく。彼が叫んだ時には、無造作に伸ばされるクルーゼの手が、いとも簡単に引き金を引き、彼の兵士の心臓を撃ち抜いてしまっていた。
狙いは外れない。たった一撃で、あっけなく事切れる己の部下たちを目の前にして、フラガは唇を噛み締める。
炎の熱ときつい血の匂いに、頭がぐらついた。意識ももう、途切れそうで。

「っやめ、クルー、・・・っ!!」

馬鹿みたいに、敵側の人間に懇願してしまっていた。己の、地球軍としてのプライドがあるならば、決してできるはずもないこと。相手に屈服し、従うくらいならば、死を選んだほうがマシというものだというのに。
不意に首を離され、フラガはどさり、と再び男の足元に蹲るように倒れこんだ。一気に入り込んでくる空気に、フラガは苦しげに喘いだ。炎の焼かれた空気は熱く、息が詰まるよう。
だが、なおも咳き込むように背を折り曲げ、苦しむ男に、しかしクルーゼは容赦なかった。

「うぐっ・・・」
「もう一度聞く。なぜ、貴様がここにいる?」

地に這うようにして体を支えていた手の甲を、硬い軍靴が踏みつけていた。
ぐっ、と体重をかけられ、痛みに汗が滲むほどだった。フラガは首を振った。理由など、あるわけがないのだから。
ただ、命令が下ったから、赴いただけ。ここがどういう場所なのか、なぜ重要なのか、
それすらも知らされないまま、ただ任務に着かされた。
理由など、あってないようなもの。軍人でしかない自分に、どれほどの意味があるというのだろう?

「・・・っ、俺は、軍人だ・・・!」

必死で痛みに耐えながら、フラガは掠れた声で、たったそれだけを告げた。
軍人であること。それは、全てにおいて答えだった。己の意思などではない、上からの"命令"がすべて。
なぜならば、
そうやって、今までずっと、生きてきたから。
幼い頃両親を失くし、だが引き取られた先の親戚たちとも折り合いがつかず、
結局12歳という若さで軍に身を預け、それから10年以上がとうに過ぎた。そんな自分にとって、軍は一種家族のようなもの。己が納得いかない命令ごときで離反するなど、考えられない。そもそも、それほどの意思が自分自身になかった。
だが、だからこそ、この目の前の男は己をこうして糾弾するのだ。
よく、わかっている。相手は、「Z.A.F.T.」の人間。己自身の手で己の持つ権利を手に入れようと、そうして立ち上がった組織。己のように、生きる術だけのために軍に入ったのと、根本的に違う。
目的を持って戦いに望む者と、日々の糧のために戦う者。もちろん、強いのは前者だ。
軍人だ、などと言い逃れできるはずもなかった。
かれにとっては、ただのつまらない言い訳でしかないだろう。
そうして、フラガの予想通り、クルーゼはただ冷ややかな目を向けるだけだった。

「よりによって、こんな所の任に着いているとはな。愚かすぎて、反吐が出るよ。・・・お前はここがどういう施設が知っているのか?」

人体改造、薬物強化、精神操作。
地球軍の背後にいるブルーコスモスが、敵であるコーディネイターに対抗するべく行っている、人体実験の場。それがこのエックスナンバーの研究所だった。
もちろん、不幸な生まれのクルーゼにとって、本来の「人間」を下らない欲望のために壊すなど、忌み嫌うものだ。
だが、ここは、クルーゼにはそれだけではない、最も憎むべき理由があった。
この研究所に出資していた者―――名を、アル・ダ・フラガといった。大西洋連邦の大統領の椅子すら揺らがすほどの、巨大財閥、それを統括していた者。彼らについていきさえすれば大丈夫、とまで言われたフラガ家。
ロゴスメンバーでもあったフラガ家は、やはりコーディネイターを嫌う傾向にあった。だから、こんな馬鹿げた研究所になどに出資していたのだろう。
クルーゼは今でも、そんなあの男の影を憎んでいる。
だからこそ―――。
クルーゼには、許せなかったのだ。
あの男の、息子。3歳足らずで既に見限られ、まともな扱いもされてこなかった、可哀想な子供だけれど。
それが、無意識にでも、彼を支持するような行動を取る。
それが、耐えられなかった。
あれほど、愚かで、馬鹿で、欲望の塊でしかなかった男の影の部分になど、
従って欲しくなかった。
もちろん、身勝手な感情だとはわかっているけれど―――

「・・・っ、知るか・・・よっ!!」
「そうだろうな・・・。知ってなお、この地を守るというのなら、私はお前を殺さねばならん」
「っ・・・」

ぐい、と今度こそ引き上げられ、引き摺られる。背後の焼け痕の残る壁に押し付けられ、フラガは眉を顰めた。
周囲は、白煙に包まれ、炎に包まれ、血の匂いが充満している。
辛うじて爆発の際に開いた穴が、か細い空気を供給しているだけ。こんな場所で、
なにを・・・と紡ぐ唇が、
不意に塞がされた。
噛み切るつもりではないのかと思うほど乱暴に押し付けられたそれに、フラガは嫌だ、と首を振る。
だが、片手でその顎を掴まれれば、もはやすべての抵抗を封じられたも同然、
押し付けられた身体のせいで身動きのとれない体制の苦しさと、ただでさえ息苦しい場所で唇を塞がれたことへの嫌悪感に、
フラガはただ耐え続けるしかなかった。
周囲には、苦痛に呻く人間の声音、今すぐ誰が来てもおかしくない、そんな状況。
だというのに、クルーゼはフラガの唇を塞いだまま、何度も角度を変えながらも彼のそれを離さない。
そのまま、深く舌を絡ませ、激しく内部を蹂躙する。
思考すらおかしくなるような快楽がぞくりと背筋を駆け抜けてくる自分自身が恨めしくて、フラガはクルーゼの身体を引き離そうと突っ張っていた手で、彼の肩にきつく爪を立てた。
引き攣れるような痛みに、けれどクルーゼはむしろ笑い声をあげた。
クルーゼにとって、フラガが己に向ける感情は、どんなものであれ心地のいいものなのだ。強引に身体を開かせ、その怒りを買うのも、快楽を煽り、耐え切れない熱に溺れさせて懇願の言葉を吐かせるのも、すべてに置いて自分を悦ばせてくれる。
だからクルーゼは、今、この状況下にあってなお、
彼の身体を貪ろうと衣服を弄り始めた。
時間は、少年と自分がこの施設に突入して10分足らず。だが、そろそろ研究エリアの制圧が終わった頃だろうか?
ぼんやりと考えながらも、意識の大半はフラガの身体に向け、クルーゼは彼のボトムのベルトに手をかける。
前は既に剥かれていた。部屋に残る炎の光が、フラガのその肌を照らす。
薄闇にぼんやりと浮かんだ様な彼の身体は、それだけでクルーゼを喜ばせた。

「あ・・・、やめろっ・・・こんな、・・・っ」
「煩いな・・・」
「んう―――っ・・・」

解放されたはずの唇を再び塞がれ、もはやフラガにはどうすることもできない。
誰かに見られるかもしれないという羞恥と、こんな、戦場にあってなお己を貪ろうとする存在への怒り。
様々な感情がフラガの胸に去来する。周囲には部下達の屍が折り重なっていたからこそ、なおさら。
この男が殺したのだ、すべて。
そう思い返せば、ぎゅ、と力を込められた瞳の端から零れる透明な雫。
過去、たった1年という歳月共にあっただけで、そのすべてに心惹かれてしまったフラガの大切な相手は、
しかし、今はもう、己と肩を並べることはなく、それどころか、
己のすべてを奪っていく。
何故―――、と、何度問いかけたかわからない問いを、フラガは再び脳裏に描いた。
こんな、どうしてこんなことに、なってしまったのだろう!?

「もうっ・・・、やめろ、クルーゼ・・・」
「何故?」

前を寛げた後、手を滑り込ませるようにして背を撫でていく。両手で両の尻を揉みしだかれて、フラガはガクガクと膝を揺らした。
既に快楽に蕩けている青年の身体は、己を支え切れずにクルーゼの身体に支えられるような形になっていた。
きつく爪を立てていたはずの肩に額を預けて、フラガは必死に迫りくる衝動に耐えている。
いっそ、その衝動に身を委ねてしまえばいいのに、とクルーゼは思うが、最後の理性が残るフラガにとって、それはできるはずもないことだ。なぜなら、今は、

「ここはっ・・・、戦場だ・・・っっ!!」
「だから?」
「だ、だから・・・って、お前っ・・・」

いたって冷静に言葉を紡ぐ、クルーゼの声音。
耳元でそれを吹き込まれるフラガは、どうしようもなく感じる自分自身を止められなかった。
こんな場所で、こんな状況で、しかし制御できない己の身体は、
そう自覚すればするほどに、クルーゼの与えてくる感覚に溺れてしまう。
まるで、たった2人きりの部屋で、
静かに睦言を紡ぐように耳に響く彼の"音"に、
フラガは必死に首を振る。
しかし、すぐにパサリ、と地に衣服が落とされる音が飛び込んできた。
そして同時に、己の素肌を包む、ひんやりとした空気。

「あっ・・・、・・・っや・・・!」

その瞬間、襲い来る快感という衝撃と共に、フラガの頭を激しい羞恥が襲った。
視界の隅に、自軍の兵士の姿が映ったからである。
目撃された―――。それはフラガにとって、死んでしまいたいほど耐えられない事実だ。
敵軍の手に捕らえられ、あまつさえ身体を開かれ、そして喘いでいるのだ。どれほど嫌がっていようが、それは言い訳でしかない。己の身体が、一番素直な心を表していると、フラガ自身、よく自覚していたから。
それを、クルーゼのみではなく、他人に知られること。
それだけは、耐えられない。それだけは。
紅潮する頬を、一気に青褪めさせたフラガは、
だがその瞬間、耳が麻痺するような強烈な破裂音を聞いた気がした。
鼻につく、薬莢のニオイ。そして、煙。
フ、と吹く音は、確かにクルーゼから発されるもの。

「お、お前・・・」

震える唇は、もはやそれだけしか紡ぐことはできなかった。
クルーゼは口元を歪めた。

「恥ずかしいというのなら、心配することはない。すべて、私がこの手で消してやるからな・・・」
「―――クルー、ゼ・・・」

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