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「Presents 01」


「・・・なんだ、お前か」
「なんだはないでしょなんだは。折角コイビトが電話かけてやってんのに」

久しぶりにかけた電話番号の相手は相変わらずそっけない声で応じてきて、
フラガははぁ、とため息をついた。
そもそも、自分から彼に電話をかけるなど、そうそうすることではないのだ。
幾度も逡巡して、それからやっと番号を押す決心をするのだから、
こういう時ぐらい優しい声をかけて欲しいとも思ったりするのだが。
けれど、そんなことを考えれば考えるほど、
自分の中の認めたくない彼への感情が深いものだと思えてしまう。
フラガにしてみれば、クルーゼと同じように何もないような態度を取っていたいのだが、
残念ながらそれができた試しはなかった。
受話器からはぁ、とため息が聞こえて、
フラガは今更ながら自分がバカみたいなことをしてしまったという後悔の気持ちが湧き起こってくる。
クルーゼにしてみれば、
いつも恋人呼ばわりされるのが大嫌いなくせに、
こういう時ばかり自ら『コイビト』と表現して突っかかってくる自分がコドモにしか見えないのだろう。
フラガもまた自分のバカさ加減に内心ではぁ、とため息をついた。
もう、半分ヤケクソのようなもので受話器を取ったのである。
このまま引き下がるわけにもいかない。

「・・・何の用だ」
「明日、暇?」

自分で言ってから、あまりの単刀直入さに呆れるほど。
これでは、切実にクルーゼの存在を待っているようではないか。
そもそも自分が上手い具合に今日明日と休みで暇だから聞いてみたまでだ。それだけのはずだったのだが。
ったく、と呟かれた声にそうだよなぁ、と内心で返して。

「あるほうがおかしいと思わないのか、お前は」
「そりゃそうだけど。・・・そうだけどー」

当然予想のついていた言葉ではある。
けれど、そう思いながら口を尖らせてしまう自分に、フラガはやれやれとため息をついた。
来て欲しいなら来て欲しいと素直に言えればいいのだが、
そう言えるほど自分の感情を認めてしまうのも癪だ。
全く、クルーゼを前にした自分はどうしてこうも情けないのか。
沈黙してしまった自分に、クルーゼは呆れているのだろうと想像がついた。

「・・・この私に軍事会議を抜けてこいと?」
「・・・ま、それはそれでいいかも?」
「言ってろ」
「・・・っ。愛のない奴ー」

だからといって、彼から向けられる直線的な感情はとにかく苦手なのだ。
そっけない相手に対して愛がないと冗談めかして言う割りに、
愛と称して注がれる感情は素直に受け止められない。
そのくせ、相手にされないまま無視されるのが嫌で。
我ながらわけのわからない性格だ。
はぁ、とフラガは肩を竦めた。
これ以上、自分のバカさ加減をさらけ出すのも苦痛になってきた。
いつだって冷静なクルーゼ。強請るのはいつも自分。
・・・情けない。

「ったく。いいよ、もう。じゃーな」

ピ、とたった一つボタンを押すだけで。
余韻も残さず沈黙するそれを放り投げて、フラガは腰掛けていたベッドに倒れ込む。
ベッド際にあるカレンダーに目を留めて、ちぇっと舌打ち。
柔らかな枕に顔を埋めて、フラガは深々とため息をついた。

「・・・明日は、オレの誕生日だってのに・・・」

ガラにもないとは思うのだが、自分の生まれた日には好きな人と過ごしたいと思ってしまう。
それは、やはりクルーゼとこんな関係になってしまってからというもの、
なんだかんだいって毎年一緒に過ごしてきたからなのだろう。
いつも隣にあった温もり。
自分が望まなくても気付けばそこにあった頃が、
本当に幸せだったと今になって思う。
あの時は反発して来るなとか居なくていいとか思ったりもしたものだけど。
今でさえ、彼が傍にいないことでせいせいしたと言ったりもするけれど。
こういう時ばかりは彼の存在を欲してしまう自分に、
フラガは呆れたように笑った。
そもそも、今日の休みからして、同僚に声を掛けられたくなかったから無理にとった休暇である。
けれど、クルーゼが来ないとわかっていて、それで部屋でごろごろしているなど、
あまりにバカなことのように思えた。
それに、せめて1人ではなく仲間たちとわいわい騒いで過ごせば、寂しさも薄れるというものだ。
フラガは再度放り投げていた携帯を手に取り、友人達と連絡を取ろうと番号を押した。・・・・・・が。

「・・・っバカじゃねぇ・・・」

電話は通じなかった。けれどそれもそのはず。
本当はフラガが自分で勝手に取った休暇だ、他の皆が休みであるはずがない。
もし彼らを誘うとしても・・・もっと夕方にでもならなければ彼らに暇が空くはずがないのだ。
そして、それはクルーゼにとってもしかり。

「・・・つまんねぇ・・・」

折角の休み・・・なのだが。
1人寂しく部屋にいるなんて情けなく思えてくる。
そうなると、恥を押して誘いをかけた自分へそっけない態度を取るクルーゼに文句が言いたくなった。
いつもいつも、自分の気持ちなんかお構いなしに身体を征服してくるくせに。
こうやって自分が居て欲しい時に限っていてくれないことに、
フラガは不満そうに唇を尖らせた。
起こしていた上半身を不貞腐れたようにシーツの上に投げ出して目を閉じれば、
フラガの幻想の中のクルーゼが唇を降らせてくる。
他人に対する感情がとにかく薄いくせに、あの時だけは自分にストレートに欲をぶつけて来るクルーゼが、
ひどく苦手である反面・・・、ひどく好きだった。
自分の記念日に、傍にいてほしいほどに。

(・・・・・・クルーゼ・・・)





まだ昇った日が傾いたばかりの明るい日差しの下。
自分の全てが暴かれるそんな明るい日の元で行為に嫌がるフラガを押さえつけ、
クルーゼはひどく満足そうな笑みを浮かべて見下ろしていた。
いつも仮面をつけていて窺い知れない美しい顔立ちに、フラガは少し戸惑う。
それはいつもの彼の冷徹さとはまた違った、強い意志ともとれる抗えない何かを纏っていて、
フラガは自分に向けられるそれにふいと横を向いてしまった。
クルーゼの顔を見れば見るほどに、上気していく肌や顔を知られたくないのだ。
けれど、フラガのすべてを手にし、彼の一挙一動に目を細めるクルーゼには、どうせ気付かれていることで。
悪あがきのような抵抗を続ける彼にくすりと笑って、クルーゼは愛撫を続けた。
そもそも、クルーゼが心底嫌ならばこういう状況に陥っているはずがない。
自分だとて職業軍人である。
ほとんど同じといってよい体格の彼相手だ、いかにクルーゼであろうと本気で抵抗すれば勝てるであろうことを、
フラガ自身よくわかっていた。
けれど、現実に少々強引に迫られれば簡単にこうして組み伏せられてしまうあたり、
自分のクルーゼに対する甘さというか弱さというかが伺える。
どうしても、クルーゼの自分に対する感情が強すぎて、抗うことができないままこうなってしまうのだ。
そしてそのままずるずると彼の愛撫に溺れてしまう自分に、
フラガははぁ・・・と呆れたように肩を落とした。
自分より少し体温の低い指先。
それが胸元につけられた朱の印をなぞり、唇はもう既に立ち上がった突起を嬲る。
キツく吸われて思わず背を仰け反らせれば、シーツと背に出来た隙間にすかさずクルーゼの腕が差し入れられてきて、背筋を辿る指先にフラガは身体を竦ませた。

「っ・・・、や、め・・・」

思わずついてしまう悪態は、淫らな動きを見せるクルーゼの手へのものだ。
胸を這う手のひらは、躊躇なくフラガの下肢を暴く動きを見せ、
背を抱くクルーゼのそれは彼の腰からするりと衣服の下へと侵入してくる。
唇で胸元を愛撫されたままひどく焦らすようなそんな動きをさせられて、フラガは自分でも驚くほど鼓動が早まっていた。
まるで、身体中が早くしてくれと訴えているような。
けれど、そんな欲を素直にクルーゼに訴えられないフラガは、
ぎゅっと目を瞑ったまま唇を引き結び、快感に耐えるように眉を寄せる。
そうするとますますクルーゼが満足そうな吐息を洩らし、より愛撫の手が強まるのに、
フラガは辛そうに顔を歪めた。

「そんなに耐えようとするからだ・・・」

耳元で囁くクルーゼの声音。そんなことはわかっているのだ。
だがわかっているからといってそんな簡単にクルーゼに全てを預けていられないのだと、フラガの心は反論する。
生まれたときから一緒に居たわけではないのだ。
母親でもなければ、父親でもない。
だから、確かにこうして身体を預け、心までほとんど彼の支配下に置かれているのがわかっているだけに、
フラガは最後の理性で彼の手から逃れようとしないわけにはいかなかった。
けれど、もう限界だ。
クルーゼはそんなフラガの心をわかっていて、なおかつ自分を追い詰める。
自分から折れなければ、決して次に進まない。
次を切望したくなるぎりぎりのところで、愛撫を止め、自分の反応を伺う。
そのときはもう、フラガはフラガでなくなっていて、
クルーゼの意地の悪さに悪態をつきながらも、愛撫の続きを待ち望む声を上げる羽目になっていた。
散々焦らされたお陰で勝手に暴走しだした下肢が、フラガの前を覆う布地を濡らしていく。
そんな場所をクルーゼは爪先で引っかくように辿り、次のフラガの言葉を待った。
クルーゼにとっては最高の瞬間。
だがフラガにとっては最低の瞬間である。
自らの淫らさ。貪欲さ。強欲さ。耐え性のなさ。羞恥の全てがクルーゼに晒され、そして暴かれる瞬間。
―――耐えられない。
手が自然と下肢に伸びる。イかされたいとむせび啼く下肢を自ら宥めようとして、クルーゼの手がその上に触れてくる。
クルーゼの目の前で自慰行為をするなど理性の時に考えれば想像したくもない行為だが、
全身が欲望に支配されたそのときだけは、自ら頂点に向かうべく先走りに手を濡らしていた。
クルーゼの両手にするりと下肢を覆う衣服を脱がされれば、
やっとクルーゼに許されたような気がして安堵の息を洩らす。
そうして、これ以上の抵抗をする気力が、フラガの中で全て失われるのだ。
前はフラガに任せて、クルーゼの両手がフラガの双丘をなぞり、その奥の秘孔に触れた。
その感触に、理性をほとんど失ったフラガの心が反応する。
クルーゼが欲しいと。
痛い思いも苦しい思いも全て忘れて。
ただ求めたくなる感情に、フラガのすべてが呑まれていく。
剥き出しになった下肢を大胆にクルーゼの前で拡げると、
フラガは陶酔したような表情を浮かべ、クルーゼを促すように瞳を閉じた。

―――クルーゼが、欲しい。




「っ・・・、は、ああっ・・・」






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